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次の日

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次の日。

・・・バーニャの姿のバリンデル君と、私の距離が開いた。物理的に。

「ねぇ、ヴィックス・・・?」

「聖女ちゃんに近づかないように俺が守るからね!本当に何もない?気を失っちゃったのはだって言ってたけど、本当かどうかわかんないし」

不安そうに聞きながら、それでも近い、というより側で放たれる声に苦笑する。

今、私は朝食を食べながらも片腕で肩を抱いているヴィックス(同じく食事中)に強制的に離されている。

うぅ、ドキドキしちゃう!

恋人にするみたいにこう抱きしめられるのなんて両親以外だとほぼないに等しいんだから!

「それにしても、器用ねヴィックス?」

「ん?あぁ、利き手が使えないときのために特訓いろいろしてるからね。左手でご飯も戦いもできるよ? あ、聖女ちゃん俺に気が向いてきた?」

笑顔でそんなことを言ってくるけれど、それを断る。

名前を呼ぶたびに嬉しそうな顔するんだから。もう。

そして、離されたバーニャは私たち勇者パーティの座っている最高10人掛けられる(4人用テーブルをわざわざくっつけてくれたみたい)テーブルの隣の他よりも隙間が空いているテーブルで一人、ご飯を食べていた。

その表情は、少し寂しそうでありながらもその位置が当然だと思っているかのような感じだった。

「で、これからどうするの??」

勇者はそれに答えるように顔を上げるけれど、結局口を開くのはファルゴットさんだった。

「本来ならば本日も連携の特訓をしたいところではあるのですが、次の街へ行ってそこでまたダンジョンさがしですかな」

「へー。ま、歩いてる最中にモンスターに出くわさないとも限らないし?ヘンなことも起きないと限らないし?どんなことがあっても今度はちゃんと俺が守るからねー、聖女ちゃん!」

「あの、ヴィックス、近い。見えないでしょ、ご飯が」

もう食べ終わっているからって、顔を私の前に持ってきて強調しなくていいのに。

「うーん、聖女ちゃんつめたーい。でもそういうところもいいんだけどね?」

はいはい、いつもの軽口ね。もう慣れてきたわよ。

ナンパな人に声かけられるのも前世含めて初めてなんだから、最初はドキドキしてたけどね?

「あ、じゃあ俺があーんしてあげようか?」

「却下です。そういうのは恋人にするものです」

「じゃあ恋人になろうよ?」

「漫才している場合じゃないの。ご飯の時間は大事なんだから、それ以外にして」

「それ以外ならいいんだね?」

あーもう、ご飯が食べられなくなっちゃうじゃない。心配はいいけど、ご飯が最優先です!
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