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1 召喚 3
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『なんとか生き延びたけど、これからどうするの?』
ナイナイから通信が入る。ジンとしては疲労困憊の極み、とにかく休みたい所だが……
その時、軽い振動と大きな歩行音がして、森の中――敵が出て来た反対側から、巨大な獣が姿を現した。ロボットより遥かに大きなサイズのセンザンコウに見える。だが全身の各所が人工の装甲でできており、それもまた人造物である事が窺えた。
『この艦に機体ごと乗るように』
センザンコウから通信が入る。声は――ヴァルキュリナと名乗った女神官戦士だ。
わき腹の装甲が持ち上がり、大きく開いた。中は巨大なスタンドが設置された格納庫になっていた。
ジン達の機体を収容し、格納庫のハッチが閉じる。重々しい振動――センザンコウは歩き出したようだ。
(さて、どんな態度で出迎えてもらえるやら……)
緊張しながら自機のハッチを開け、ジンは格納庫内に降りる。すぐにナイナイとダインスケンも降りて来た。三人の周囲に兵士達がやってきて、遠巻きに囲む。抜刀はしていないので、敵意は無いようだが……。
様子を覗うジン。だがその耳に飛び込んで来たのは、兵士達からの言葉ではなかった。
「あっー! 有る! ボク、男に戻ってるよ!」
驚きと喜びで満ちた、自分の体をまさぐりながらのナイナイの叫びだった。
どう反応していいかわからず顔を見合わせる兵士達。無反応のダインスケン。
(変わったように見えねぇ……)
心の中で呟くジン。体格に全く変化なし。ショートカットも大きなちょい垂れ目も、声質さえ変わらない。元から少年でも少女でも通じるような容姿だったという事か。
ふと気になって自分の右腕を見たが、甲殻に覆われた怪物じみた様相に変化は無かった。
(俺のはこのままか。異世界だから特に珍しくもない、ならいいんだが……)
心配していると頭上でリリマナが元気に叫ぶ。
「機体の修理は整備班に任せて、ブリッジに行こうよ! ヴァルキュリナが待ってる」
ブリッジは頭頂部にあった。ヴァルキュリナは部屋全体を見渡せる位置の座席に座っていたが、三人がリリマナと共に入室すると、立ち上がって出迎える。
「ご苦労だった。流石は聖勇士だ」
「そう呼ばれてるみたいだが、その聖勇士というのは、俺達みたいな異世界から召喚された奴らの事か?」
ジンが訊くとヴァルキュリナは頷く。
「今ではそうなっている。召喚魔法に対象が異界流を持つかどうか、判別する効果を入れられてからは」
「異界流――ステータス画面にもそんなスキルがあったな」
ジンが呟くとリリマナがはしゃいだ声をあげる。
「次元の力の切れ端みたいな物だって聞いた! 異世界からの召喚者には、転移の際に元の世界のエネルギーを持ったまま、この世界に来る事ができる人もいるんだって。それが様々な世界からこの世界――インタセクシルへ持ち込まれたパワー。今では異界流って名付けられてるの!」
「ボク、元の世界ではただの馬番で、何の力も無かったけど……」
自信なさそうなナイナイ。だがヴァルキュリナは諭すように言う。
「世界に存在するだけで、物理的・霊的にエネルギーを持つ。全く無いのなら『無』なのだから。それはこの世界に存在する物も同じ。この世界に存在する事で持つエネルギーに、元の世界から持ち込んだエネルギーを加えた者――二重のエネルギーを持つのが聖勇士なのだ」
「ほほう。で、そのパワーをどれだけ持っているかが、あのケイオスレベルなわけか」
呟くジン。似たような設定がある作品も、見たり読んだりした事はある。
「持っているかもあるが、発揮できるかどうかも重要だ。潜在能力と出力とでも言おうか。だから聖勇士がレベルアップしていくうちにスキルレベルも上がる」
そう言うとヴァルキュリナは近くに設置された水晶玉に触れた。すると宙に映像が投影される。
武装した男女が、得体の知れない魔物と戦っている画像。それがいくつも。
「この世界――インタセクシルには、かつて異界から召喚され、魔王や邪神を倒した勇者の存在が、古来からいっぱい記録されているの。彼らについての研究もね。それによって明らかになったのがこの異界流。だから今では、異世界から召喚された戦士を聖勇士て呼んでるの!」
はしゃぐリリマナ。
「言葉の意味はよくわからんが、とにかく凄い力らしいな……。でも俺、そのスキル2レベルらしいぞ」
ジンが不安げに言うと、リリマナは親指を立ててウインクする。
「大丈夫! この世界の人間は大概0レベル、鍛えてレベルを上げても上限1レベルがほとんどだから。最初から2って大半の人の上限よりもう高い。レベルを上げれば多分もっと上がるよ!」
「で、2ならどんだけ凄いんだ?」
戸惑うジンにヴァルキュリナがモニターを指さす。
「実際に映してみよう」
すると画像の一つが切り替わり、ジンのステータス画面になった。そこのカーソルが動き、ジンの【ケイオス2】に重なる。説明文が表示された。
『全てのステータスがレベル+1上昇する。また特定の武器を使う場合、設定された以上のレベルが必要』
ナイナイが目を丸くした。
「全ての能力が上がるんだ! 六つなら全部で18だね。凄いや!」
「凄いじゃねぇよ! 満遍なくちょっとずつ上がるって? それ器用貧乏でダメなパターンじゃねぇのか!」
思わず声を上げるジン。リリマナが宙でガッツポーズを見せる。
「レベルが上がれば何やっても強くなるよ。それにケイオスレベルが必要な武器は特殊で強い武器ばかりなんだ。特殊効果のある武器とかMAPのつく武器とかは全部ケイオスレベルが必要なんだよ。今回はそれのおかげで勝ったし、凄さはわかるよね!」
ヴァルキュリナが画像の一つを変化させる。ナイナイの乗っていたBバイブグンザリのステータス画面になり、武器・インパルスウェーブへカーソルが動いた。例によって詳細が出るが――
射 インパルスウェーブ(MAP) 攻撃3200 射程1-5
気力120 消費EN70 条件:ケイオス2
「量産機なのに大概の兵士には使えない武器があるのか……?」
先刻の説明を思い出しながら訊ねるジン。ヴァルキュリナは頷いた。
「この世界で生まれた住人にもケイオスが2レベル以上になる者が皆無ではないからな。そういう者はエリート兵として重宝される。それらが乗る事を前提としているから、Bバイブグンザリは量産機とはいえ生産数は少ない」
(それ、魔王軍の本隊は全員エリート兵で構成されてるパターンだからよ……)
ジンの頭に嫌な予感が浮かんで来た。
物のついでに、さらに質問する。
「俺らの2レベルがこの世界の一般人より優れている事はわかった。だが召喚された者としてはどの程度だ?」
ヴァルキュリナは少し言い淀んだが、それでもはっきりと告げた。
「英雄として名を遺した物達は、最初から3や4だったようだ。だが英雄の仲間として語られる者には1や2から始まった者もいる」
(わ、脇役……!)
ジンの顔が引きつった。
「あ! もしかしてあの乗り物をケイオス・ウォリアーって呼んでるのも、異界流が関係しているの?」
ジンを他所に、思いついて訊ねるナイナイ。リリマナがうんうん頷く。
「そうだよ。異界流が全く発揮できないとあれはまともに動かないの。まァでも、戦わせる最低限の異界流ならレベル1にも満たない程度でいいし、訓練すれば半分ぐらいの人には出せるんだけどね。だからステータス画面ではケイオススキルが表示されない兵士も多いよ」
「逆に言えば、スキル0の兵士ならごろごろ居るんだろ。で、こんな母艦があれば、当然あんたらの部隊にもそのぐらいの兵士とケイオス・ウォリアーが配備されてるんじゃねぇのか」
ジンの言葉には僅かな棘があった。なぜ自分達へ加勢が無かったのか、母艦がずっと隠れていたのか。そこが引っかかったのである。
訊かれたヴァルキュリナは……目を伏せ、視線を落とした。
「部隊はあった。だが……実はここに到着する寸前、魔王軍の機影を捉えたのだ。そちらに半分を回し、残り半分は廃墟を調査する間、周囲の森の巡視をさせていた」
そこで一瞬口籠り――
「だが……親衛隊クラスが部下を連れて襲撃してきたとなると、恐らくこちらの部隊は……」
(全滅、か)
その推測をジンは口にしなかった。
表情を引き締めなおし、ヴァルキュリナは三人へ告げる。
「我々は本国に帰還する。だが途中で襲われると抵抗する術が無い。そこで貴方達をこの場で雇いたい」
「一応訊くが、嫌だと言ったら?」
「……止める術は無い。どこへなりと行くがいい」
訊ねるジンに、ヴァルキュリナは毅然と答えた。
「重ねて訊くが、雇われた時の報酬は?」
「本国までの衣食住、この世界の知識と情報。本国に帰りついたら傭兵の相場通りの金銭に加え、王に紹介して職も得られるよう進言しよう。上手くいけば騎士団長に近い地位と収入は得られると思う」
重ねて訊ねるジンに、ヴァルキュリナは少し考えながらも答えた。
「右も左もわからねぇ俺達には、事実上選択の余地は無しだな……」
「ボクはいいと思うよ。寝たまま閉じ込められていたのを、ヴァルキュリナさんが助けてくれたんだし」
「ゲッゲー」
溜息をつくジン、機嫌よく承諾するナイナイ、鳴くだけのダインスケン。
こうして三人は神官戦士ヴァルキュリナに雇われ、猛獣型艦Cパンゴリンの船員となった。
「ところで相談なんだが。ステータスを見る限り、俺は格闘戦の方が適性があるらしい。今の機体は射撃戦機らしいんで、他に適当な機体があれば乗り換えたいんだが……」
「どれどれ」
ジンが訴えると、ヴァルキュリナがジンのステータスを表示した。
ジン=ライガ
レベル4
格闘153 射撃148 技量180 防御127 回避81 命中87 SP68
特殊スキル
ケイオス2 底力7 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【スカウト】
「確かに格闘向きだな。しかしこの艦には、廃墟で鹵獲した三機しかケイオス・ウォリアーは残っていないのだ」
ヴァルキュリナが非情な現実を告げる。
「マジか! あの三機に格闘型機体なんてBクローリザードって奴しか無いだろ……おいダインスケン、ちょっとお前のステータス確認させろ。射撃が得意なら俺と変われ」
「ゲッゲー」
ジンの要求にただ鳴くダインスケン。ヴァルキュリナがステータス画面を切り替える。
ダインスケン
レベル4
格闘155 射撃145 技量175 防御125 回避92 命中87 SP68
ケイオス2 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【ヒット】
「ジン以上に格闘型じゃン!」
リリマナがおかしそうに笑った。
「回避もジン以上だ。リザードよりピルパグの方が頑丈だが、どうする?」
ヴァルキュリナの言葉にジンはしかめ面をする。確かに、より脆い機体へ乗るのは不安だ。そして疑問もあったのでジンはそれを訊く。
「そのスピリットコマンド、効果は?」
言われたヴァルキュリナがカーソルを合わせた。
【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。
「こ、こいつ……明らかに俺より強いじゃねぇか! スジが通らねぇ」
「ゲッゲー」
わななくジンに、ダインスケンは無表情で鳴くだけだ。
「あの……ボクのも確認した方がいい?」
「そうだな。見てみよう」
ナイナイが遠慮がちに訊くと、ヴァルキュリナがさらに画面を切り替える。
ナイナイ
レベル4
格闘145 射撃153 技量175 防御120 回避87 命中92 SP68
ケイオス2 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【フォーチュン】
「一番射撃向きか。MAP兵器を使わせるならナイナイしかねぇな……」
ジンの呟き。それは機体の乗り換えは当分無い事を意味していた。
一人、胸の内で愚痴る。
(機体とパイロットで得意武器が一致しないとか、いつの時代の調整だ……)
ナイナイから通信が入る。ジンとしては疲労困憊の極み、とにかく休みたい所だが……
その時、軽い振動と大きな歩行音がして、森の中――敵が出て来た反対側から、巨大な獣が姿を現した。ロボットより遥かに大きなサイズのセンザンコウに見える。だが全身の各所が人工の装甲でできており、それもまた人造物である事が窺えた。
『この艦に機体ごと乗るように』
センザンコウから通信が入る。声は――ヴァルキュリナと名乗った女神官戦士だ。
わき腹の装甲が持ち上がり、大きく開いた。中は巨大なスタンドが設置された格納庫になっていた。
ジン達の機体を収容し、格納庫のハッチが閉じる。重々しい振動――センザンコウは歩き出したようだ。
(さて、どんな態度で出迎えてもらえるやら……)
緊張しながら自機のハッチを開け、ジンは格納庫内に降りる。すぐにナイナイとダインスケンも降りて来た。三人の周囲に兵士達がやってきて、遠巻きに囲む。抜刀はしていないので、敵意は無いようだが……。
様子を覗うジン。だがその耳に飛び込んで来たのは、兵士達からの言葉ではなかった。
「あっー! 有る! ボク、男に戻ってるよ!」
驚きと喜びで満ちた、自分の体をまさぐりながらのナイナイの叫びだった。
どう反応していいかわからず顔を見合わせる兵士達。無反応のダインスケン。
(変わったように見えねぇ……)
心の中で呟くジン。体格に全く変化なし。ショートカットも大きなちょい垂れ目も、声質さえ変わらない。元から少年でも少女でも通じるような容姿だったという事か。
ふと気になって自分の右腕を見たが、甲殻に覆われた怪物じみた様相に変化は無かった。
(俺のはこのままか。異世界だから特に珍しくもない、ならいいんだが……)
心配していると頭上でリリマナが元気に叫ぶ。
「機体の修理は整備班に任せて、ブリッジに行こうよ! ヴァルキュリナが待ってる」
ブリッジは頭頂部にあった。ヴァルキュリナは部屋全体を見渡せる位置の座席に座っていたが、三人がリリマナと共に入室すると、立ち上がって出迎える。
「ご苦労だった。流石は聖勇士だ」
「そう呼ばれてるみたいだが、その聖勇士というのは、俺達みたいな異世界から召喚された奴らの事か?」
ジンが訊くとヴァルキュリナは頷く。
「今ではそうなっている。召喚魔法に対象が異界流を持つかどうか、判別する効果を入れられてからは」
「異界流――ステータス画面にもそんなスキルがあったな」
ジンが呟くとリリマナがはしゃいだ声をあげる。
「次元の力の切れ端みたいな物だって聞いた! 異世界からの召喚者には、転移の際に元の世界のエネルギーを持ったまま、この世界に来る事ができる人もいるんだって。それが様々な世界からこの世界――インタセクシルへ持ち込まれたパワー。今では異界流って名付けられてるの!」
「ボク、元の世界ではただの馬番で、何の力も無かったけど……」
自信なさそうなナイナイ。だがヴァルキュリナは諭すように言う。
「世界に存在するだけで、物理的・霊的にエネルギーを持つ。全く無いのなら『無』なのだから。それはこの世界に存在する物も同じ。この世界に存在する事で持つエネルギーに、元の世界から持ち込んだエネルギーを加えた者――二重のエネルギーを持つのが聖勇士なのだ」
「ほほう。で、そのパワーをどれだけ持っているかが、あのケイオスレベルなわけか」
呟くジン。似たような設定がある作品も、見たり読んだりした事はある。
「持っているかもあるが、発揮できるかどうかも重要だ。潜在能力と出力とでも言おうか。だから聖勇士がレベルアップしていくうちにスキルレベルも上がる」
そう言うとヴァルキュリナは近くに設置された水晶玉に触れた。すると宙に映像が投影される。
武装した男女が、得体の知れない魔物と戦っている画像。それがいくつも。
「この世界――インタセクシルには、かつて異界から召喚され、魔王や邪神を倒した勇者の存在が、古来からいっぱい記録されているの。彼らについての研究もね。それによって明らかになったのがこの異界流。だから今では、異世界から召喚された戦士を聖勇士て呼んでるの!」
はしゃぐリリマナ。
「言葉の意味はよくわからんが、とにかく凄い力らしいな……。でも俺、そのスキル2レベルらしいぞ」
ジンが不安げに言うと、リリマナは親指を立ててウインクする。
「大丈夫! この世界の人間は大概0レベル、鍛えてレベルを上げても上限1レベルがほとんどだから。最初から2って大半の人の上限よりもう高い。レベルを上げれば多分もっと上がるよ!」
「で、2ならどんだけ凄いんだ?」
戸惑うジンにヴァルキュリナがモニターを指さす。
「実際に映してみよう」
すると画像の一つが切り替わり、ジンのステータス画面になった。そこのカーソルが動き、ジンの【ケイオス2】に重なる。説明文が表示された。
『全てのステータスがレベル+1上昇する。また特定の武器を使う場合、設定された以上のレベルが必要』
ナイナイが目を丸くした。
「全ての能力が上がるんだ! 六つなら全部で18だね。凄いや!」
「凄いじゃねぇよ! 満遍なくちょっとずつ上がるって? それ器用貧乏でダメなパターンじゃねぇのか!」
思わず声を上げるジン。リリマナが宙でガッツポーズを見せる。
「レベルが上がれば何やっても強くなるよ。それにケイオスレベルが必要な武器は特殊で強い武器ばかりなんだ。特殊効果のある武器とかMAPのつく武器とかは全部ケイオスレベルが必要なんだよ。今回はそれのおかげで勝ったし、凄さはわかるよね!」
ヴァルキュリナが画像の一つを変化させる。ナイナイの乗っていたBバイブグンザリのステータス画面になり、武器・インパルスウェーブへカーソルが動いた。例によって詳細が出るが――
射 インパルスウェーブ(MAP) 攻撃3200 射程1-5
気力120 消費EN70 条件:ケイオス2
「量産機なのに大概の兵士には使えない武器があるのか……?」
先刻の説明を思い出しながら訊ねるジン。ヴァルキュリナは頷いた。
「この世界で生まれた住人にもケイオスが2レベル以上になる者が皆無ではないからな。そういう者はエリート兵として重宝される。それらが乗る事を前提としているから、Bバイブグンザリは量産機とはいえ生産数は少ない」
(それ、魔王軍の本隊は全員エリート兵で構成されてるパターンだからよ……)
ジンの頭に嫌な予感が浮かんで来た。
物のついでに、さらに質問する。
「俺らの2レベルがこの世界の一般人より優れている事はわかった。だが召喚された者としてはどの程度だ?」
ヴァルキュリナは少し言い淀んだが、それでもはっきりと告げた。
「英雄として名を遺した物達は、最初から3や4だったようだ。だが英雄の仲間として語られる者には1や2から始まった者もいる」
(わ、脇役……!)
ジンの顔が引きつった。
「あ! もしかしてあの乗り物をケイオス・ウォリアーって呼んでるのも、異界流が関係しているの?」
ジンを他所に、思いついて訊ねるナイナイ。リリマナがうんうん頷く。
「そうだよ。異界流が全く発揮できないとあれはまともに動かないの。まァでも、戦わせる最低限の異界流ならレベル1にも満たない程度でいいし、訓練すれば半分ぐらいの人には出せるんだけどね。だからステータス画面ではケイオススキルが表示されない兵士も多いよ」
「逆に言えば、スキル0の兵士ならごろごろ居るんだろ。で、こんな母艦があれば、当然あんたらの部隊にもそのぐらいの兵士とケイオス・ウォリアーが配備されてるんじゃねぇのか」
ジンの言葉には僅かな棘があった。なぜ自分達へ加勢が無かったのか、母艦がずっと隠れていたのか。そこが引っかかったのである。
訊かれたヴァルキュリナは……目を伏せ、視線を落とした。
「部隊はあった。だが……実はここに到着する寸前、魔王軍の機影を捉えたのだ。そちらに半分を回し、残り半分は廃墟を調査する間、周囲の森の巡視をさせていた」
そこで一瞬口籠り――
「だが……親衛隊クラスが部下を連れて襲撃してきたとなると、恐らくこちらの部隊は……」
(全滅、か)
その推測をジンは口にしなかった。
表情を引き締めなおし、ヴァルキュリナは三人へ告げる。
「我々は本国に帰還する。だが途中で襲われると抵抗する術が無い。そこで貴方達をこの場で雇いたい」
「一応訊くが、嫌だと言ったら?」
「……止める術は無い。どこへなりと行くがいい」
訊ねるジンに、ヴァルキュリナは毅然と答えた。
「重ねて訊くが、雇われた時の報酬は?」
「本国までの衣食住、この世界の知識と情報。本国に帰りついたら傭兵の相場通りの金銭に加え、王に紹介して職も得られるよう進言しよう。上手くいけば騎士団長に近い地位と収入は得られると思う」
重ねて訊ねるジンに、ヴァルキュリナは少し考えながらも答えた。
「右も左もわからねぇ俺達には、事実上選択の余地は無しだな……」
「ボクはいいと思うよ。寝たまま閉じ込められていたのを、ヴァルキュリナさんが助けてくれたんだし」
「ゲッゲー」
溜息をつくジン、機嫌よく承諾するナイナイ、鳴くだけのダインスケン。
こうして三人は神官戦士ヴァルキュリナに雇われ、猛獣型艦Cパンゴリンの船員となった。
「ところで相談なんだが。ステータスを見る限り、俺は格闘戦の方が適性があるらしい。今の機体は射撃戦機らしいんで、他に適当な機体があれば乗り換えたいんだが……」
「どれどれ」
ジンが訴えると、ヴァルキュリナがジンのステータスを表示した。
ジン=ライガ
レベル4
格闘153 射撃148 技量180 防御127 回避81 命中87 SP68
特殊スキル
ケイオス2 底力7 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【スカウト】
「確かに格闘向きだな。しかしこの艦には、廃墟で鹵獲した三機しかケイオス・ウォリアーは残っていないのだ」
ヴァルキュリナが非情な現実を告げる。
「マジか! あの三機に格闘型機体なんてBクローリザードって奴しか無いだろ……おいダインスケン、ちょっとお前のステータス確認させろ。射撃が得意なら俺と変われ」
「ゲッゲー」
ジンの要求にただ鳴くダインスケン。ヴァルキュリナがステータス画面を切り替える。
ダインスケン
レベル4
格闘155 射撃145 技量175 防御125 回避92 命中87 SP68
ケイオス2 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【ヒット】
「ジン以上に格闘型じゃン!」
リリマナがおかしそうに笑った。
「回避もジン以上だ。リザードよりピルパグの方が頑丈だが、どうする?」
ヴァルキュリナの言葉にジンはしかめ面をする。確かに、より脆い機体へ乗るのは不安だ。そして疑問もあったのでジンはそれを訊く。
「そのスピリットコマンド、効果は?」
言われたヴァルキュリナがカーソルを合わせた。
【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。
「こ、こいつ……明らかに俺より強いじゃねぇか! スジが通らねぇ」
「ゲッゲー」
わななくジンに、ダインスケンは無表情で鳴くだけだ。
「あの……ボクのも確認した方がいい?」
「そうだな。見てみよう」
ナイナイが遠慮がちに訊くと、ヴァルキュリナがさらに画面を切り替える。
ナイナイ
レベル4
格闘145 射撃153 技量175 防御120 回避87 命中92 SP68
ケイオス2 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【フォーチュン】
「一番射撃向きか。MAP兵器を使わせるならナイナイしかねぇな……」
ジンの呟き。それは機体の乗り換えは当分無い事を意味していた。
一人、胸の内で愚痴る。
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イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
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