27 / 37
9 無限 3
しおりを挟む
凱旋したジン達を、領主が格納庫にまで出てきて出迎えた。
機体から降りてきたジン達に、嬉しさと心配の入り混じった顔で話しかけてくる。
「なにやらドえらく苦戦していたようですな。これほどの激戦は今までありませんでしたぞ」
頷くジン。
「ああ。最強の敵と戦っていましたからよ」
いつの世も貧乏は恐るべき脅威である。改造費用を捻出するためのこの戦いは避けられない天王山だったのだ。
そんなジン達の側を、足音を忍ばせて通ろうとする者があった。
クロカだ。
ジンと目があうと、彼女は目と歯を剥いた。
「話しかけるな! 今日はもう寝る! 絶対にだ! 絶対にだからな!」
ジンは何も言っていないのにそういきり立ち、彼女は格納庫から走って出て行ってしまった。
「つっても資材回収班は出動させてもらにゃあよ」
頭を掻きながら呟くジン。
だがそれに答える声が後からかかる。ヴァルキュリナがブリッジから降りてきたのだ。
「それならもう作業を始めている。ジン……もし彼らが貴方を嫌っても、恨んでも、そこは受け入れてくれ」
街のすぐ外、ジン達が戦っていた場所は一面が巨大蟻の屍で埋まっていた。
比喩などではなく、本当に一面敷き詰められ、小さな山がいくつも出来ていたのだ。
倒した数は一千体を超える。
そして回収班はこの中から利用できる資材をより分け、持ち帰らねばならない。
今日、彼らに寝る時間は無いだろう。
だからと言ってなんと理不尽な事か。
十時間を超える戦闘も、回収班の夜なべも、あくまで機体強化のため……ひいては明日の勝利のため、黄金級機設計図を王都へ届けるためである。それが味方から疎まれるとは。
「戦いとは孤独なものだぜ……」
呟くジン。その後ろでダインスケンが「ゲッゲー」と鳴いた。
まぁジンとて、一方的に決められた強制長時間労働は理屈うんぬんに関わらず嫌なものだと、日本の中年労働者だった時代によく理解はしているのだが。
(まぁ恨まれるのは良しとしても、だ)
ジンは長時間の戦闘でずいぶん傷んだ自機を見上げた。
「改造やスキル獲得は明日まわしか」
せっかく必要な資金は稼いだというのに残念な話である。
その傍で「ふう」と溜息をつくナイナイ。
「最後の方は敵を倒しても経験値が1点しかもらえなかったね……」
「敵とのレベル差が開いちまったからな。片手でひねれる雑魚をいくら蹴飛ばしても、技量の向上にはそうそう繋がらないからよ」
もちろんそれも昔プレイしていたゲームで知った事である。
まぁ実際にやってみて、途中から流れ作業になっていた事でよく実感できはしたが。
そんなジンのためになる言葉に、ゴブオが愚かしくも口を挟む。
「アニキ……戦闘中と言う事が変わってませんかい?」
「そうか? 両立する事しか言ってないと思うが。まぁ矛盾がおきた時はだいたい新しい方が正しいと思っとけ」
何を言ったかあんまり覚えていないので、ジンは物分かりよくそう言っておいた。
すると今度はリリマナが抗議する。
「そんなの、後だしし放題じゃン!」
ジンは肩をすくめた。
「あらかじめ全ての真理を見通せる天才様のお理屈は俺には不要って事だからよ」
そして翌日。ジン達は食堂で朝食を摂りながら、改めて今後の予定を話し合った。
「で、2~3日はここに滞在するだと?」
スプーンを片手に問うジンに、ヴァルキュリナは頷く。
「そうだ。一日仕事でフル稼働させていた修理・補給装置の整備。集めた資材による改造作業、保守点検。各自の疲労の回復。おそらく二日でここを発てるが、一応の予備日を見ると三日だ」
ジンは周囲を見渡した。
「そう言うならまぁ仕方ねぇか。なら操縦者側の能力を確認したい。あれだけ敵を撃墜すればCOCPもかなり手に入っただろ。スキルの獲得もしないとな」
パンの切れ端をのみ込んでから、ナイナイは小首を傾げる。
「僕はそこら辺、よくわからないなぁ。ジンが決めてよ」
ダインスケンもそれに続いて「ゲッゲー」と鳴いた。
「そう言うなら、まぁ考えてみるか……」
答えながらジンは頭の中でいくつかプランを練る。
「昨日稼いだCOCP? だいたい一万だね」
うんざりした顔で答えるクロカ。
格納庫で朝一番に捉まった彼女は、不機嫌を隠そうともしない。
もちろんそんな事は全く気にせず、ジン達三人はその使い道を相談し始める。
「アイテムの作成もあるから、全部スキルの習得に使うわけにもいかねぇな。安くて有用な物を全員に配る方針で考えたい所だが……そのためにも今のステータスを見せてくれるか」
ジンが頼むと、クロカは黙ってバインダーを操作した。表面にメニュー表が映る。
「ねぇねぇ、前から思ってたけど、どうしてこの板にはまず僕の顔が映るの?」
ナイナイが訊いた。
メニュー表にはナイナイの顔がバストアップで映されているのだ。
訊かれたクロカは「ん?」と訝しむ。
「敵の撃墜数がこの部隊トップだからだけど。知らなかったのか? 他のメンバーが……今、200と数十機。ナイナイだけ400オーバーしてるから、順位はもう変わらないだろうね」
ジンは「ふむ」と呟く。
これも昔プレイしていたゲームと同じシステムだ。
「あざといカワイイ服に着替えたら、この画面も変わるのか?」
ちょっとした疑問を訊いてみるジン。クロカは肩を竦める。
「登録してある画像を変えればな。で、どんな変態スケベ衣装にするんだ?」
「しないよ! ジンはすぐ変な事言う」
むすっとふくれるナイナイ。
「案が歪められてから俺に怒られてもな……」
微妙に納得いかないジン。
ジンが怒られる事で微妙に機嫌が治ったのか、クロカはかろやかな操作でバインダーにジンのステータスを映した。
>
ジン=ライガ
レベル30
格闘203 射撃198 技量220 防御182 回避118 命中142 SP120
ケイオス5 底力7 援護攻撃1 援護防御1 H&A
【スカウト】【ウィークン】【ヒット】【プロテクション】
>
「おお、一気にレベルが8も上がったな! ケイオスレベルも5になったか。だがスピリッコマンドに新習得は無いな……」
喜び半分、がっかり半分のジン。
実はかつてない大量の敵を倒した事で、何か物凄いチートが発揮されブッ壊れキャラになれる事を少し期待はしていたのだが。
確実に強くはなったものの、割と地味な成長である。
>
ナイナイ=テインテイン
レベル30
格闘187 射撃203 技量215 防御160 回避142 命中147 SP120
ケイオス5 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【フォーチュン】【トラスト】【コンセントレーション】【フレア】
>
「僕もナントカコマンドが4つのままだね。ジンと同じだ」
自分の能力を確認するナイナイ。
ジンは微妙に疑わしい目つきで表示された数値を眺める。
「ケイオスレベルも同じペースで成長か……なーんか俺ら三人、妙にお揃いになっているような気がするんだがよ」
ダインスケンも「ゲッゲー」と鳴いた。
>
ダインスケン
レベル30
格闘205 射撃187 技量215 防御165 回避147 命中142 SP120
ケイオス5 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【ヒット】【フレア】【アクセル】【ダイレクトヒット】
>
「こいつもケイオスレベル、コマンド数が同じか。エースボーナスまで同じ……こりゃ偶然じゃねぇな」
そう呟くジンだが、ならばなぜこうなっているのかはわからない。
「お揃いならいいじゃない?」
ナイナイは嬉しそうだった。
「次、私ね!」
「はいな。了解」
リリマナにせがまれ、クロカはそのステータスを映し出す。
>
リリマナ レベル30 SP89 スピリットコマンド【サーチ】【ガッツ】【ウィークン】【フォーティテュード】【エナジー】
【サーチ】隠された物のあるMAP上のポイントを発見する。
【ガッツ】自機のHPを最大値の30%回復する。
【ウィークン】敵1体の気力を10低下させる。
【フォーティテュード】次に被弾した攻撃のダメージを87.5%軽減する。
【エナジー】操縦者の気力を10上昇させる。
>
「やった! 私はコマンド5個目だァ!」
はしゃぐリリマナ。宙でジンを見下ろし、勝ち誇って胸を張った。
それを見上げて考えるジン。
(やはり個人差はあるんだよな……それが当然か。ならなぜ俺ら三人はこんなに共通点が多い?)
かといってステータスやコマンドの内容まで同じわけではない。だがその半端さが逆におかしい気がしていた。
>
ヴァルキュリナ
レベル30
格闘199 射撃183 技量211 防御178 回避114 命中138 SP120
ケイオス3 指揮官3 援護防御2
スピリットコマンド【プロテクション】【ホープ】【エフォート】【チアー】
【プロテクション】短時間の間、被ダメージを75%軽減する。
【ホープ】味方一機に有効。HP50%回復、状態異常を解除。次に倒した敵からの獲得資金と経験値が200%になる。
【エフォート】次に倒した敵からの獲得経験値が200%になる。
【チアー】味方一機に有効。気力を10上昇させる。
>
「おお! 味方の気力増加! 支援能力に拍車がかかったか!」
目を輝かせるジン。
「しかしこの世界じゃ、隣接する4機を激励するわけじゃねぇのか。まぁ離れた所にいる奴に使える事を活かして……」
ジンは腕組みして考え出すが、彼が何を言っているかイマイチわからず、周りの者は首を傾げる。
>
クロカ レベル30 SP89 スピリットコマンド【アナライズ】【フォーサイト】【ヒット】【アクセル】【ディスターブ】
【アナライズ】敵1機に有効。短時間の間、被ダメージが110%、与ダメージが90%になる。
【フォーサイト】味方一機に有効。一度だけ敵の攻撃を確実に回避する。
【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。
【アクセル】短時間、自機の移動力を増加する。
【ディスターブ】短時間、敵全ての最終命中率を半減させる。
>
「クロカもコマンドを5個覚えているね。私のライバルかな」
リリマナが嬉しそうに言う。
「おう、優秀なのは間違いねぇ。流石だ。俺の頭も思わず下がるからよ」
物理的には下げずに言うジン。
「そ、そうか? まぁそうかもな」
それでもクロカは嬉しそうに照れ笑いを隠し切れない。
「ところで優秀なクロカさんよ。グレートエースってのはどんな効果があるんだ?」
ジンが訊くと、クロカはバインダーを何回かタップした。
それは用語や項目の解説を呼び出すための操作であり……表示された解説をクロカは説明する。
「60機撃墜してエースになると、エースボーナスを得たな? 実はそれに加えて、初期気力が5、敵を撃墜した時の獲得資金が10%上がるんだが……」
そこで一度ジン達を見渡し、それから続きを読み上げた。
「80機以上撃墜したグレートエースになると、初期気力がさら5、獲得資金がさらに10%上がる。合計10上昇と20%増加になるわけだ」
ふむ、と納得するジン。
「この世界だとそういう効果か。なるほどな……」
そう呟きながら、各人が習得すべきスキルは何か考えていた。
その考えも、すぐにまとまりつつあったのだが。
機体から降りてきたジン達に、嬉しさと心配の入り混じった顔で話しかけてくる。
「なにやらドえらく苦戦していたようですな。これほどの激戦は今までありませんでしたぞ」
頷くジン。
「ああ。最強の敵と戦っていましたからよ」
いつの世も貧乏は恐るべき脅威である。改造費用を捻出するためのこの戦いは避けられない天王山だったのだ。
そんなジン達の側を、足音を忍ばせて通ろうとする者があった。
クロカだ。
ジンと目があうと、彼女は目と歯を剥いた。
「話しかけるな! 今日はもう寝る! 絶対にだ! 絶対にだからな!」
ジンは何も言っていないのにそういきり立ち、彼女は格納庫から走って出て行ってしまった。
「つっても資材回収班は出動させてもらにゃあよ」
頭を掻きながら呟くジン。
だがそれに答える声が後からかかる。ヴァルキュリナがブリッジから降りてきたのだ。
「それならもう作業を始めている。ジン……もし彼らが貴方を嫌っても、恨んでも、そこは受け入れてくれ」
街のすぐ外、ジン達が戦っていた場所は一面が巨大蟻の屍で埋まっていた。
比喩などではなく、本当に一面敷き詰められ、小さな山がいくつも出来ていたのだ。
倒した数は一千体を超える。
そして回収班はこの中から利用できる資材をより分け、持ち帰らねばならない。
今日、彼らに寝る時間は無いだろう。
だからと言ってなんと理不尽な事か。
十時間を超える戦闘も、回収班の夜なべも、あくまで機体強化のため……ひいては明日の勝利のため、黄金級機設計図を王都へ届けるためである。それが味方から疎まれるとは。
「戦いとは孤独なものだぜ……」
呟くジン。その後ろでダインスケンが「ゲッゲー」と鳴いた。
まぁジンとて、一方的に決められた強制長時間労働は理屈うんぬんに関わらず嫌なものだと、日本の中年労働者だった時代によく理解はしているのだが。
(まぁ恨まれるのは良しとしても、だ)
ジンは長時間の戦闘でずいぶん傷んだ自機を見上げた。
「改造やスキル獲得は明日まわしか」
せっかく必要な資金は稼いだというのに残念な話である。
その傍で「ふう」と溜息をつくナイナイ。
「最後の方は敵を倒しても経験値が1点しかもらえなかったね……」
「敵とのレベル差が開いちまったからな。片手でひねれる雑魚をいくら蹴飛ばしても、技量の向上にはそうそう繋がらないからよ」
もちろんそれも昔プレイしていたゲームで知った事である。
まぁ実際にやってみて、途中から流れ作業になっていた事でよく実感できはしたが。
そんなジンのためになる言葉に、ゴブオが愚かしくも口を挟む。
「アニキ……戦闘中と言う事が変わってませんかい?」
「そうか? 両立する事しか言ってないと思うが。まぁ矛盾がおきた時はだいたい新しい方が正しいと思っとけ」
何を言ったかあんまり覚えていないので、ジンは物分かりよくそう言っておいた。
すると今度はリリマナが抗議する。
「そんなの、後だしし放題じゃン!」
ジンは肩をすくめた。
「あらかじめ全ての真理を見通せる天才様のお理屈は俺には不要って事だからよ」
そして翌日。ジン達は食堂で朝食を摂りながら、改めて今後の予定を話し合った。
「で、2~3日はここに滞在するだと?」
スプーンを片手に問うジンに、ヴァルキュリナは頷く。
「そうだ。一日仕事でフル稼働させていた修理・補給装置の整備。集めた資材による改造作業、保守点検。各自の疲労の回復。おそらく二日でここを発てるが、一応の予備日を見ると三日だ」
ジンは周囲を見渡した。
「そう言うならまぁ仕方ねぇか。なら操縦者側の能力を確認したい。あれだけ敵を撃墜すればCOCPもかなり手に入っただろ。スキルの獲得もしないとな」
パンの切れ端をのみ込んでから、ナイナイは小首を傾げる。
「僕はそこら辺、よくわからないなぁ。ジンが決めてよ」
ダインスケンもそれに続いて「ゲッゲー」と鳴いた。
「そう言うなら、まぁ考えてみるか……」
答えながらジンは頭の中でいくつかプランを練る。
「昨日稼いだCOCP? だいたい一万だね」
うんざりした顔で答えるクロカ。
格納庫で朝一番に捉まった彼女は、不機嫌を隠そうともしない。
もちろんそんな事は全く気にせず、ジン達三人はその使い道を相談し始める。
「アイテムの作成もあるから、全部スキルの習得に使うわけにもいかねぇな。安くて有用な物を全員に配る方針で考えたい所だが……そのためにも今のステータスを見せてくれるか」
ジンが頼むと、クロカは黙ってバインダーを操作した。表面にメニュー表が映る。
「ねぇねぇ、前から思ってたけど、どうしてこの板にはまず僕の顔が映るの?」
ナイナイが訊いた。
メニュー表にはナイナイの顔がバストアップで映されているのだ。
訊かれたクロカは「ん?」と訝しむ。
「敵の撃墜数がこの部隊トップだからだけど。知らなかったのか? 他のメンバーが……今、200と数十機。ナイナイだけ400オーバーしてるから、順位はもう変わらないだろうね」
ジンは「ふむ」と呟く。
これも昔プレイしていたゲームと同じシステムだ。
「あざといカワイイ服に着替えたら、この画面も変わるのか?」
ちょっとした疑問を訊いてみるジン。クロカは肩を竦める。
「登録してある画像を変えればな。で、どんな変態スケベ衣装にするんだ?」
「しないよ! ジンはすぐ変な事言う」
むすっとふくれるナイナイ。
「案が歪められてから俺に怒られてもな……」
微妙に納得いかないジン。
ジンが怒られる事で微妙に機嫌が治ったのか、クロカはかろやかな操作でバインダーにジンのステータスを映した。
>
ジン=ライガ
レベル30
格闘203 射撃198 技量220 防御182 回避118 命中142 SP120
ケイオス5 底力7 援護攻撃1 援護防御1 H&A
【スカウト】【ウィークン】【ヒット】【プロテクション】
>
「おお、一気にレベルが8も上がったな! ケイオスレベルも5になったか。だがスピリッコマンドに新習得は無いな……」
喜び半分、がっかり半分のジン。
実はかつてない大量の敵を倒した事で、何か物凄いチートが発揮されブッ壊れキャラになれる事を少し期待はしていたのだが。
確実に強くはなったものの、割と地味な成長である。
>
ナイナイ=テインテイン
レベル30
格闘187 射撃203 技量215 防御160 回避142 命中147 SP120
ケイオス5 底力5 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【フォーチュン】【トラスト】【コンセントレーション】【フレア】
>
「僕もナントカコマンドが4つのままだね。ジンと同じだ」
自分の能力を確認するナイナイ。
ジンは微妙に疑わしい目つきで表示された数値を眺める。
「ケイオスレベルも同じペースで成長か……なーんか俺ら三人、妙にお揃いになっているような気がするんだがよ」
ダインスケンも「ゲッゲー」と鳴いた。
>
ダインスケン
レベル30
格闘205 射撃187 技量215 防御165 回避147 命中142 SP120
ケイオス5 底力6 援護攻撃1 援護防御1
スピリットコマンド【ヒット】【フレア】【アクセル】【ダイレクトヒット】
>
「こいつもケイオスレベル、コマンド数が同じか。エースボーナスまで同じ……こりゃ偶然じゃねぇな」
そう呟くジンだが、ならばなぜこうなっているのかはわからない。
「お揃いならいいじゃない?」
ナイナイは嬉しそうだった。
「次、私ね!」
「はいな。了解」
リリマナにせがまれ、クロカはそのステータスを映し出す。
>
リリマナ レベル30 SP89 スピリットコマンド【サーチ】【ガッツ】【ウィークン】【フォーティテュード】【エナジー】
【サーチ】隠された物のあるMAP上のポイントを発見する。
【ガッツ】自機のHPを最大値の30%回復する。
【ウィークン】敵1体の気力を10低下させる。
【フォーティテュード】次に被弾した攻撃のダメージを87.5%軽減する。
【エナジー】操縦者の気力を10上昇させる。
>
「やった! 私はコマンド5個目だァ!」
はしゃぐリリマナ。宙でジンを見下ろし、勝ち誇って胸を張った。
それを見上げて考えるジン。
(やはり個人差はあるんだよな……それが当然か。ならなぜ俺ら三人はこんなに共通点が多い?)
かといってステータスやコマンドの内容まで同じわけではない。だがその半端さが逆におかしい気がしていた。
>
ヴァルキュリナ
レベル30
格闘199 射撃183 技量211 防御178 回避114 命中138 SP120
ケイオス3 指揮官3 援護防御2
スピリットコマンド【プロテクション】【ホープ】【エフォート】【チアー】
【プロテクション】短時間の間、被ダメージを75%軽減する。
【ホープ】味方一機に有効。HP50%回復、状態異常を解除。次に倒した敵からの獲得資金と経験値が200%になる。
【エフォート】次に倒した敵からの獲得経験値が200%になる。
【チアー】味方一機に有効。気力を10上昇させる。
>
「おお! 味方の気力増加! 支援能力に拍車がかかったか!」
目を輝かせるジン。
「しかしこの世界じゃ、隣接する4機を激励するわけじゃねぇのか。まぁ離れた所にいる奴に使える事を活かして……」
ジンは腕組みして考え出すが、彼が何を言っているかイマイチわからず、周りの者は首を傾げる。
>
クロカ レベル30 SP89 スピリットコマンド【アナライズ】【フォーサイト】【ヒット】【アクセル】【ディスターブ】
【アナライズ】敵1機に有効。短時間の間、被ダメージが110%、与ダメージが90%になる。
【フォーサイト】味方一機に有効。一度だけ敵の攻撃を確実に回避する。
【ヒット】次の攻撃を確実に命中させる。
【アクセル】短時間、自機の移動力を増加する。
【ディスターブ】短時間、敵全ての最終命中率を半減させる。
>
「クロカもコマンドを5個覚えているね。私のライバルかな」
リリマナが嬉しそうに言う。
「おう、優秀なのは間違いねぇ。流石だ。俺の頭も思わず下がるからよ」
物理的には下げずに言うジン。
「そ、そうか? まぁそうかもな」
それでもクロカは嬉しそうに照れ笑いを隠し切れない。
「ところで優秀なクロカさんよ。グレートエースってのはどんな効果があるんだ?」
ジンが訊くと、クロカはバインダーを何回かタップした。
それは用語や項目の解説を呼び出すための操作であり……表示された解説をクロカは説明する。
「60機撃墜してエースになると、エースボーナスを得たな? 実はそれに加えて、初期気力が5、敵を撃墜した時の獲得資金が10%上がるんだが……」
そこで一度ジン達を見渡し、それから続きを読み上げた。
「80機以上撃墜したグレートエースになると、初期気力がさら5、獲得資金がさらに10%上がる。合計10上昇と20%増加になるわけだ」
ふむ、と納得するジン。
「この世界だとそういう効果か。なるほどな……」
そう呟きながら、各人が習得すべきスキルは何か考えていた。
その考えも、すぐにまとまりつつあったのだが。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる