異世界スペースNo1(ランクB)

マッサン

文字の大きさ
29 / 37

10 王都 2

しおりを挟む
 星空の下をひたすら進む戦艦Cガストニア。
 ブリッジにMAPが映るとはいえ、夜の闇の中では当然視界が悪い。黒々とした影でしかない山の間を抜ければ、ただただ黒く広がる平原に出た。天と地を分かつのは星の瞬きの有無だけだ。
 当然、前進速度は落ちる。日中の半分程度の速度で移動を続ける竜型艦……それでも停まる事はできなかった。
 王都は今攻撃を受けており、最も近い外部からの援軍がこの艦なのだから。

 朝日が大地を照らし始める頃、ようやく長大な防壁が見えてきた。
 白く高い壁が地平線に現れ、その向こうには輝く城の尖塔が。中央に見える塔はひと際高く、腕か翼かのような装飾が左右に飛び出し、頂点は丸い顔のようで都へ向かう者を見下ろしているようだった。

 だがその壁の、最も大きい門の周囲では何十体もの巨人が戦っている。
 都を襲う魔王軍と、防衛する王都の軍。二派のケイオス・ウォリアーがぶつかりあっているのだ。
 王都ともなればこの国で最も強固な防衛部隊がいそうな物だが――巨人兵士、Bソードアーミーが次々と撃破されている。
 それらを攻撃する魔王軍の半数は上空にいた。ジン達もこの間戦った、半人半鳥、カラスの頭を持つBボウクロウである。地上から攻撃する半数は巨大な骸骨兵士・Bシックルスカル。

 その様子をジン達もブリッジで見ていた。
「魔王軍にやられてるよ……青銅級機ブロンズクラス同士なのに、どうして?」
 ナイナイが不安も露わに言うと、側に座っているクロカが苛々と頭を掻く。
「魔王軍側はどの機体も2段階は強化されているみたいだ。首都を攻めるだけあって金かけた部隊を回してきたな。だから魔王軍側の方が高性能になってる。それに……BシックルスカルにはHP回復能力があるから粘り強い。それを飛行型で上空から支援しているから、陸戦機中心の王都軍にはますます不利だね」
 その分析を聞きながら、ジンはモニターに見覚えのある機体を見つけた。
「あいつは!」

 輝く鎧の白銀級機シルバークラス。女の貌に長い髪、一際大きな翼。だがその両腕・両足には剣呑な鉤爪。
 その爪と羽手裏剣で次々と防衛軍を切り刻んでいるのは、かつて倒した親衛隊員マスターコロンの乗機・Sフィルシーハーピーであった。

「三人とも、すぐ出撃してくれ」
「了解!」
 ヴァルキュリナからの指示に、ジン達三人はブリッジから駆け出る。

 既に防衛部隊は二、三機しか残っていない。
 もはや全滅かというそのタイミングで、ジン達の三機は戦場に駆け込んだ。
「そこまでだ。諦めてお縄につきな!」
 叫ぶジン。

 モニターに見覚えのある顔が映る。金髪のロングヘアに白い肌、舞踏会に使うような半仮面。やはりマスターコロンだった。
『あ、あんたら! マスターウインドが始末する筈なのに!?』
 上ずった声で狼狽する女親衛隊。
「それをアテにしての襲撃か。上手く逃げ出せたってのに、まだこの国で悪さしやがって」
 呆れるジンに女親衛隊が苛々と怒鳴る。
『好きで出てきたんじゃないわよ! 私だって、こんな敵地のど真ん中で……』
 目元を隠していても美女であろうと察する事のできる顔立ちだが、こうも怒りと焦りを露わにしては魅力も何もなかった。
 少々気圧されて呟くナイナイ。
『なんか……追い詰められてるね』
「敗戦のツケで首都攻めやらされて、ここでも負けたら処刑とかなんじゃねぇの。悪の組織にはよくある事だ。一回だけでも汚名返上の機会があるだけ温情なのかもしれないしよ」
 ジンのその想像が正しかったのか、女親衛隊は小さく歯軋りした。
『クッ……ともかく貴様らから息の根を止めてやる!』
 彼女が何やら操作すると、魔王軍がその矛先をジン達へと切り替える。
『こちらは全機、前回より強化改造してある! 今回はあんたらも平原にいて、街の地形効果に頼る事もできない! 前と同じと思わない事ね!』

 ぞろぞろとジン達に迫る魔王軍。
 ジンは――
「スイデン軍の皆さんよ、ここは俺達に任せて下がってくれ」
『我々は黄金級機ゴールドクラス設計図を届けにきた部隊だ! 後は私達が戦う!』
 Cガストニアも戦場に乗りこみ、ヴァルキュリナが防衛部隊に通信を送る。
『わ、わかった。我々は後退して態勢を立て直す』
 ほぼ壊滅状態に追い込まれていた防衛部隊はそう返信し、防壁の内側へと駆け込んでいった。

「さぁて……やり易くなったからよ」
 うそぶくジン。巨大な骸骨兵士どもの群れは目の前に迫っている。
「ぶちまかしてくれ!」
『うん、任せて!』
 ジンの声にナイナイが応えると、BCパンゴリンから放たれた魔力の結界が敵群を包み込んだ……!

『いきなりMAP兵器!?』
 驚愕するマスターコロン。
 四対のアンテナから放たれた高周波振動の魔力により、範囲内のシックルスカルはことごとく爆発し、吹き飛んだ。
「さっすがァ! とことん強化してるだけあるね!」
 ジンの肩ではしゃぐリリマナ。
 満足げに頷くジン。
「取得したスキルもバッチリだな」


ナイナイ レベル30
BCバイブグンザリ
HP:7000/7000 EN:232/280 装甲:2000 運動:150 照準:205
格 アームドナックル  攻撃4200 射程P1-2
射 ソニックショット  攻撃4200 射程1-5
射 デストロイウェーブ(MAP) 攻撃5000 射程1-5



 MAP兵器・デストロイウェーブは、本来は必要気力120、消費EN80の、強力ではあるが使い難い武器であった。
 だが改造を進めるうちに能力がより特化・強化され――この世界では『カスタムボーナス』と呼ばれる。これまたジンが昔遊んでいたゲームと同じだ――気力110、消費EN60に高効率化していた。

 さらにジン達は今まで入手したCOCPを費やし、皆が新スキルを取得していたのだ。

闘争心3:気力+10。グレートエースボーナスと合わせ、ジン達は出撃直後から気力120を発揮する。
気力限界突破3:最大気力+20。ジン達は気力が170まで上がるようになった。
気力+ATK:援護攻撃も含め、敵へ攻撃した時に気力が余分に上がる。
Eセーブ2:武器の消費ENが80%になる。

 気力の高まりは攻撃力・防御力に影響し、一定以上で発動するスキルもある。
 これまで敵親衛隊への気力・スキル対策に四苦八苦してきた事も踏まえ、そこを中心に強化したのだ。
 これにより、ナイナイはBCバイブグンザリ最強の武器・MAP兵器を出撃直後から撃てるようになっていたのである。

「回復能力があろうが、ワンパンで吹っ飛ばせば関係ねぇな」
 シックルスカルどもの残骸を踏み越えながら呟くジン。残る敵の方へ無造作に進む。
 一方、ジンのBCカノンピルバグとは別方向へ、ダインスケンは自機を進めた。その後ろには母艦Cガストニアが続く。
 そんな二機へ、MAP兵器の範囲外にいた敵が殺到してきた!

 だが挑みかかった魔王軍の機大は次々と破壊され、地に転がる羽目になった。
 彼らの放つ攻撃は、刃は、矢は、ジンの機体に半分ほどしか当たらない。
 当たった攻撃も装甲で弾き返され、掠り傷しかつけられない。
 モニターに表示されるダメージ値がせいぜい二桁で、それもジンの気力が高まるとともに10――被弾を示すだけの最低値――になるのを見て、リリマナが感心して呟く。
「これじゃ負けようがないよ」



ジン レベル30
BCカノンピルバグ
HP:9350/9500 EN:256/280 装甲:2800 運動:135 照準:205
射 ハンドビーム  攻撃4200 射程1-5
射 ロングキャノン 攻撃4700 射程2-7
格 ハードメイス  攻撃5200 射程P1



 そしてキャノン砲やメイスの一撃で、敵は容易く粉砕されてゆく。
 まさに無人の野を行くがごとしであった。

 ダインスケンの方でも、魔王軍は次々と駆逐されていった。
 こっちはBCクローリザードに傷さえつかない。攻撃が当たらないのだ。
 矢継ぎ早に繰り出される敵の攻撃をことごとく掻い潜り、その爪で敵を斬り裂いてゆく。両断された敵機が無残にも大地に転がった。



ダインスケン レベル30
BCクローリザード
HP:7500/7500 EN:280/280 装甲:2100 運動:170 照準:205
射 スケイルシュリケン 攻撃4200 射程P1―4
格 ブレードクロー   攻撃4700 射程P1―2
格 スラッシュレザー  攻撃5200 射程P1―1



 敵からの被弾予測値が0%――速度の絶対値が違い過ぎて当たらない――とモニターに表示されるのを見て、Cガストニアのブリッジでクロカが呟く。
「援護防御の出番は当分なさそうだな……」


『な、なんなの、こいつらのこの強さは!?』
 雑兵を一方的に蹴散らしながら自分の方へ止まる事なく接近するジン達へ、マスターコロンは戦慄していた。
 かつて敗れた相手ではある。だがここまでの強さではなかった筈だ。
「悪いな。全機、限界まで改造済みだからよ。前と同じと思わない事だ」
「いけいけ、どんどん!」
 軽く返すジン。その肩ではしゃぐリリマナ。
『そ、そんな!』
 操縦席でマスターコロンは必死に首をふった。そうすれば悪夢が覚める、と無意識に思いでもしたのだろうか。
 だがジン達は遠慮なく彼女に詰め寄る。

 最後のBボウクロウがジン機の頭上から襲い掛かり、ダガーを突き立て……装甲に引っかき傷しかつけられず……反撃のメイスを食らって宙で爆散した。

 もはや雌雄は決したかに見えた。
 だがヴァルキュリナの声がブリッジから飛ぶ。
『ジン! 敵増援だ!』

 平原の向こうから土煙とともに迫る機影の群れ――狼男のようなBダガーハウンド。
 性能は低めながら、量産し易さと地上での移動力に優れた機体である。
 それを率いる隊長機は先頭を飛んでいた。
 鳥頭の翼人機・Sフェザーコカトリスであった。

『マスターウインド! あんたがこの出来損ないどもを仕留めてさえいれば!』
 自分が救われる立場だと言うのに、増援へ罵声を浴びせるマスターコロン。
「じゃあそれに負けて、今にもやられそうなアンタは何なのよ! 後で酷い目にあわせてやるんだから!」
 発言にカチンと来たリリマナが叫ぶ。
 だが――そんな二人など無視して、マスターウインドは真っすぐジン達を目指した。
『ゆくぞ、超個体戦闘員スーパーオーガニズムコンバタントども』
「これからあれで呼ばれるのか? どうも、別の名前を考えたくなるな」
 そう言いながらも、ジンは前進を止めた。
 マスターコロンへ進み続ければ横から、もしくは後ろから増援に突かれる。優勢ではあっても奢る事なく、ジンは進軍を止めて迎え撃つ事にしたのだ。
 増援へスピリットコマンド【スカウト】を放ち、そのデータをモニターへ映す。



魔王軍兵 レベル25
Bダガーハウンド
HP:5500/5500 EN:200/200 装甲:1380 運動:110 照準:169
射 ダガーショット 攻撃2800 射程1―4
格 ワイルドバイト 攻撃2900 射程P1



『増援連中は3段階改造されているようだな』
 同じデータを見ながら母艦のブリッジで言うクロカ。
「要するに……問題無いってこったろ」
 牙を剥く狼頭の巨人達へ、ジンは照準を合わせた。

 実際、ジン達の優勢は変わらなかった――いや、先刻以上だと言ってもいい。敵の攻撃はとにかく無力で、まともなダメージにならないのだ。
 ジン達が身に着けたスキルは気力補強とEN消費軽減だけではない。
 
見切り3:気力130以上で命中・回避・クリティカル率が+15%される。
ガード3:気力130以上で被ダメージが20%軽減される。

 ダインスケンとナイナイは見切り3を、そしてジンとヴァルキュリナはガード3を習得していた。
 よって母艦を狙って攻撃を仕掛ける敵兵士もいたが――まともな痛手は与えられず、反撃の尻尾で叩きのめされていた。



ヴァルキュリナ レベル30
Cガストニア
HP:17500/17500 EN:350/350 装甲:2500 運動:125 照準:205
射 騎獣砲撃     攻撃3700 射程P1―3
格 格闘       攻撃4500 射程P1
射 ファイヤーブレス 攻撃5300 射程1―7
格 ドラゴンタックル 攻撃5800 射程P1



(ヘッヘッヘ、次々と景気よくブッ飛ばされやがって。あそこでうだつの上がらねー毎日だった俺が、それを見下ろす日が来るなんてよ。やっぱアニキの下について正解だったわ)
 粉砕される魔王軍を騎獣の座席で眼下に眺めながら、ゴブオは調子に乗って口笛を吹いていた。

 一方的に倒された部下の、機体の残骸の山。
 その上を飛びこえ、マスターウインドはSフェザーコカトリスを降下させた。
『よもやお前達がここまでになるとは! だがこちらとて戦わねばならん!』
「来るかよ!」
 叫びながらもジンは相手へ【スカウト】はまず放つ。



マスターウインド レベル28
Sフェザーコカトリス
HP:22500/22500 EN:245/245 装甲:1970 運動:135 照準:185
格 ヘブンズソード    攻撃3500 射程P1―3
射 ブレイドフェザー   攻撃4000 射程2-7
射 ペトリフィケーション 攻撃4500 射程P1-6 機体能力全低下2



 モニターに表示された値を見たリリマナは、それが以前見た数値を上回っている事を知った。
「やっぱり強化されてる?」
「それで言うならこちらが上だ! クロカ、サポート!」
 叫んで真正面から激突するジン。
『わかったよ!』
 母艦のブリッジで応答し、彼女は敵機の脆い部分を分析する。
『僕らも! 行くから!』
 ナイナイも、そしてダインスケンもジンの横へ駆け込んだ!

 フェザーコカトリスの放つ羽の竜巻がジン機を巻き込んだ。
 だがジン達が三人同時に放つ合体攻撃・トライシュートもマスターウインド機を撃ち抜いていた。

 コカトリスの胸部装甲が砕け、その身が大地に落ちた。
 一方、ジンのピルバグは立っていた。全身傷だらけではあるが、揺らぐ事なく持ち堪えたのだ。

 ジン機のモニター表示……受けたダメージは2000足らず。強化パーツの補強もあってHP9000を超えるようになったBCカノンピルバグは、雑兵との戦闘を経てなおその威力に容易く耐えた。
 そしてペトリフィケーションが持つ機能低下デバフは強化パーツ【フルコーティングアーマー】の効果により無力化されている。
 一方、コカトリスは11000以上の大ダメージを受けていた。限界まで強化された合体技の攻撃力が6200に達し、ジンのかつてなく高まった気力とエースボーナスにより威力を激増させていたが故に。

 かろうじて倒れず踏み止まるコカトリス。
 その操縦席でマスターウインドは吐き出すように言う。
『クッ……私を完全に捉えるか!』
 高い回避技術を持ち、それを跳ね上げるスキル【見切り3LV】を習得し、機体も高運動性を誇る。数々の敵を、ほぼ無傷で葬ってきた魔王軍の親衛隊。
 だがその彼に、ジンはスピリットコマンド【ヒット】で渾身の攻撃を撃ち込んだ。

 以前なら攻撃に防御にデバフにと、コマンドで消費するSPを考えながら戦わねばならなかった。
 だが機体が限界まで強化され、新たなスキルも習得した事により、攻撃だけにリソースを費やしても太刀打ちできるようになった。
 ジンは言う。
「雑魚でも必死になればそれなりに伸びるもんだな。俺らの場合、三人がかりで三倍伸びてるのもあるが」

 その言葉でマスターウインドは気づいた。
 BCバイブグンザリが次のアクションを起こしている事に。
『ジン! ダインスケン! トライシュートォ!!』
 ナイナイの声と共に、他の二人が同時に動いた。攻撃のタイミングをあらかじめ知っていたかのように。

(まさに……一群にして一個!)
 マスターウインドは見た。超個体戦闘員スーパーオーガニズムコンバタントとは何を目指していたのかを。
 そして知った。三つの射撃が同時に貫いた自機は、それで戦闘不能に追い込まれたのを。

 爆発が起こった。
 コカトリスの右胸が吹き飛び、片腕が地面に落ちる。翼がかろうじて残ったのは……そしてまだなんとか動けたのは僥倖ぎょうこうというもの。
 マスターウインドは吠えた。
『私は、まだここでは死ねん!』
 その気合を機体が受けたからか。
 コトカトリスは再び空へ飛んだ。もはや真っすぐには飛べず、無意味に蛇行はしながら、それでも高速で都から離れてゆく。
『ちょっと! どこへ行くの! 最後まで戦って!』
 哀願するような悲鳴をマスターコロンがあげた。

「さて……どうしたもんかね」
 言いながらマスターコロンの機体へ距離を詰めるジン。
『ヒィ! ち、ちくしょう!』
 悲鳴同然の声をあげ、彼女はSフィルシーハーピーで突っ込んできた。
 内心、呆れるジン。
(勝ち目が無い事がわかっているなら降伏すればいいだろうにな)

 悲しいかな、もはやヤケクソが通じるレベルの戦いではない。
 フィルシーハーピー最強の武器・ダーティーサイクロンはBCクローリザードへ向かうも、あっさり避けられ――スピリットコマンドさえ要らなかった。ダインスケンにとっては雑兵の攻撃と変わらなかったのだ――逆に反撃の三段近接攻撃・合体技トリプルウェーブが炸裂する!
 ジン機のメイス、ナイナイ機のナックル、ダインスケン機の刃が立て続けに繰り出され、ハーピーを打ちのめした。
 表示攻撃力6700の三段攻撃はダメージ12000を突破し、機体は胸から腹にかけて大きく裂け、火花が派手に噴き出す。



マスターコロン レベル28
Sフィルシーハーピー
HP:7660/20000 EN:210/230 装甲:1580 運動:120 照準:175
射 ダーティフェザー  攻撃3200 射程1―6  気力低下1
格 ダーティクロー   攻撃3700 射程P1-2 気力低下2
格 ダーティサイクロン 攻撃4200 射程1-3  気力低下3



 だがそこまで追い詰められてなお、マスターコロンは逃げる素振りを見せなかった。
 哀れなほどよろめきながら、なんとか空を飛んで攻撃に移ろうとする。
 しかし――
『全速力で突撃せよ!』
 ヴァルキュリナの指示で戦艦Cガストニアが突撃した。背中に列を為す刃ごと敵に巨体をブチ当てる、この戦艦最強の武器・ドラゴンタックル。
 弱りきったハーピーは、その一撃に牽かれ、全身の装甲を砕かれて動かなくなった。

「終わりだ。さて、今度こそ逃がさないようにしねぇとな」
 言いながらジンは動かなくなったSフィルシーハーピーに自機を近づかせる。
 だが――敵機を掴もうとした時、ハーピーが大爆発を起こした!
 ジンのピルバグも爆炎に包まれて吹き飛ばされ、近くの地面に転がる。

 だが徹底強化された重装甲は、その爆発にも耐えた。
「痛ァ……何なのよ!」
 ジンの服にしがみついて怒るリリマナ。

 爆発したハーピーの方は、当然のように粉々だった。
 小さなクレーターを作り、その中央からはもくもくと煙が上がっている。

『あの女の人、脱出……しなかったよね?』
 ナイナイが戸惑いながら呟く。
 マスターコロンが機体から出た様子は無かった。
 ジンは機体を起こしながら考えていた。
(脱出装置を外されていたのか。それにあのタイミングでの爆発、まさか……外部からの遠隔操作?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。 ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...