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1章
3 旅立ち 3
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見つかった持ち物から、ガイが拾ったお嬢さんは「ミオン」という名だという事になった。
本当は違うのかもしれないが、それも記憶を取り戻せばわかる事。
そんな彼女、ミオンは‥‥ガイのもう一人の連れと戯れていた。
「あらまぁ、妖精さんとは珍しいわね。お名前は?」
「イムだよ~」
ミオンの差し出した掌の上で、イムが上機嫌で名乗る。
そんな二人に、ガイが大きな声をかけた。
「怪しい奴が見えたらすぐに知らせてくれよな」
そしてすぐに河原へ引き返してしまう。
ミオンを護衛して近くの村へ避難する事になったガイ。
しかし決定から小一時間、一行はまだ河原の側から出発していなかった。
ガイがここで大きな「準備」をすると決めたからである。
なにせ流れ着いたガラクタはまだいっぱいある。その大半はこの世界の巨大兵器、ケイオス・ウォリアーの残骸。
ガイはそれらを集め、乗って動かせる状態の機体を一台用意しようと奮闘していたのだ。
(戦があったのなら、魔王軍と出会う可能性がある。雑兵の群れなら珠紋石で多少の数は蹴散らせるけど、ケイオス・ウォリアーとなると話は別だからな‥‥ついでに移動手段も欲しいし)
そう考え、ガイはとにかく使える部品を探す。
まだ操縦席が使える胴体を、まだ歩ける足を、できれば武器も。
他に生き残りがいれば、それも‥‥。
なんとか火の入るボディを見つけ、河原に這って上陸させる。
無くなったシートの代わりを取り付け、吹き飛んだ足を付け替えて‥‥と作業しているうちに陽が傾き始めた。
やはり手持ちの作業道具しかなく、工場でも無い野外ではできる範囲に限りがある。
しかしガイは工兵なのだ。野外の現場作業が本来のフィールド、悪戦苦闘の末にようやく声をあげた。
「よし、乗れるぜ!」
この世界の巨大兵器で最もスタンダードな機体、人造巨人兵士のBソードアーミーが身を起こし、膝をついた。撃墜された機体の部品を集め、ここに一機蘇ったのだ。
ミオンとイムがぱちぱちと拍手する。
「ガイ、えらーい」
「流石ね。これで出発できるわ」
この頃にはミオンも服を着替えていた。使える部品探しの途中で見つかった日用品入りのコンテナから見つかった服に。
そのデザインはケイト帝国の都やその周辺で好まれる様式の物。地球でいう中華風に近く、女性用の着物はチャイナドレスに酷似している。
(という事は‥‥ミオンさんはかなり都会の出身なんだろうな)
ガイはそう考えたが、それが正しいかどうかはまだわからないのだ。
ミオンを操縦席の後部スペースに、イムを自分の肩に乗せ、ガイは修理したばかりのBソードアーミーを直立させた。ガイの感覚は人造巨人と一体化し、己の体としてこの兵器を動かせるようになる。
そうしながら、ガイは機体のアビリティレベル‥‥各種戦闘力数値を操縦席のモニターに映して確認した。
ファイティングアビリティ:40
ウェポンズアビリティ:20
スピードアビリティ:60
パワーアビリティ:50
アーマードアビリティ:30
(この数値は‥‥!)
現状でできうる限りの修理を施した数値をガイは見る。
これらの数値は、現代で最も普及している機体・Bソードアーミーをスタンダードモデルとして「100」と設定した値なのだ。
つまり‥‥
(全部壊滅的だ。まともな戦闘は無理だな)
この機体、本来は鎧を纏い、剣と弩で武装した巨人兵士である。
だがガイの機体ときたら‥‥装甲版が足りずに所々で内部機構が露出し、弩も無い。剣は刃が欠けている。左腕は肩から先が丸々無い。実は駆動部品もちょっと足りてない。一目でわかるオンボロである。
まぁ完全な修理なんか元々無理な状況なのだ。仕方が無い。
それでも身長18メートルの巨人である。生身のゴブリンやオークごとき、百体いようが負けはしない。
そう考えるだけでも安心なのだ‥‥守らなければならない護衛対象がいるのだから。
夕陽の中、ガイ達はいよいよ出発した。
この先の村で安全を得られる事を期待しながら。
――しかしすぐに夜――
最寄りの村に着きもしないうちに、完全に日が暮れてしまった。まぁ仕方が無い、出発が遅かったのだ。
川沿いの林を探し、その中で機体を膝立ちにさせ、ガイ達は一夜を明かす事にする。
ガイとて年頃の男子。おそらく年上であろうが同年代の女性と一つの部屋で寝る事を、全く意識しないわけではない。
だがしかし――
操縦席の後ろの空間ははっきり言って狭い。一人が体を伸ばして寝る事もできない。
その空間をミオンに与え、ガイは座席を後ろに傾けてそれをベッド代わりにする。毛布は拾えていたので、寝具には困らなかったが、寝床としては劣悪だ。
(色気もへったくれもねぇなぁ)
ほんのちょっぴり残念に思いながらも、ガイはイムを懐に抱いたミオンの寝息を聞きつつ、自分も眠る事にした。
――早朝――
あまり熟睡できる場所でもないので、結果的に朝はすぐに目が覚めた。
食料は流れてこなかったので、ガイが元々持っていた物を三人で――まぁ妖精のイムはほとんど消費しないが――分けて食べる。
(ミオンさんは‥‥大丈夫みたいだな)
本当に貴族のお嬢さんなら旅の携帯食なんぞ口に合わず吐き出すかもしれないと懸念していたが、当のミオンは平気な顔でパンと干し肉とチーズの簡素な食事を文句ひとつなくとっていた。
ガイの視線に気づいたミオンがにっこり微笑む。
「あらら。私は朝食を食べているだけで殿方の視線を集めるほどの美人さんかしら?」
「‥‥否定はしませんよ」
ちょっとたじろぎながらそう返すガイに、ミオンはくすくすと可笑しそうに笑う。
(身元もわからず放浪しているのに冗談を言える余裕、か。タフなお嬢さんだなぁ)
割と本気でガイは感心していた。
朝食を終えて再び出発する一行。
元々一人旅同然の量しか食料を用意していないのに口が増えたのだ。もし次の村を通り過ぎるにしても、食料の買い足しだけはしなければならない。
ガイは蛇行する川辺に沿って、山裾を一つ迂回した。
その向こうに小さな村が見つかった。
だが‥‥
村は燃えていた。
やっぱり魔王軍の旗の下、火の中で暴れる量産型ケイオス・ウォリアーの部隊。
「またかぁ!」
ガイが頭を抱えて叫んでも、まぁ許されるというものだろう。
(ミオン服装)
本当は違うのかもしれないが、それも記憶を取り戻せばわかる事。
そんな彼女、ミオンは‥‥ガイのもう一人の連れと戯れていた。
「あらまぁ、妖精さんとは珍しいわね。お名前は?」
「イムだよ~」
ミオンの差し出した掌の上で、イムが上機嫌で名乗る。
そんな二人に、ガイが大きな声をかけた。
「怪しい奴が見えたらすぐに知らせてくれよな」
そしてすぐに河原へ引き返してしまう。
ミオンを護衛して近くの村へ避難する事になったガイ。
しかし決定から小一時間、一行はまだ河原の側から出発していなかった。
ガイがここで大きな「準備」をすると決めたからである。
なにせ流れ着いたガラクタはまだいっぱいある。その大半はこの世界の巨大兵器、ケイオス・ウォリアーの残骸。
ガイはそれらを集め、乗って動かせる状態の機体を一台用意しようと奮闘していたのだ。
(戦があったのなら、魔王軍と出会う可能性がある。雑兵の群れなら珠紋石で多少の数は蹴散らせるけど、ケイオス・ウォリアーとなると話は別だからな‥‥ついでに移動手段も欲しいし)
そう考え、ガイはとにかく使える部品を探す。
まだ操縦席が使える胴体を、まだ歩ける足を、できれば武器も。
他に生き残りがいれば、それも‥‥。
なんとか火の入るボディを見つけ、河原に這って上陸させる。
無くなったシートの代わりを取り付け、吹き飛んだ足を付け替えて‥‥と作業しているうちに陽が傾き始めた。
やはり手持ちの作業道具しかなく、工場でも無い野外ではできる範囲に限りがある。
しかしガイは工兵なのだ。野外の現場作業が本来のフィールド、悪戦苦闘の末にようやく声をあげた。
「よし、乗れるぜ!」
この世界の巨大兵器で最もスタンダードな機体、人造巨人兵士のBソードアーミーが身を起こし、膝をついた。撃墜された機体の部品を集め、ここに一機蘇ったのだ。
ミオンとイムがぱちぱちと拍手する。
「ガイ、えらーい」
「流石ね。これで出発できるわ」
この頃にはミオンも服を着替えていた。使える部品探しの途中で見つかった日用品入りのコンテナから見つかった服に。
そのデザインはケイト帝国の都やその周辺で好まれる様式の物。地球でいう中華風に近く、女性用の着物はチャイナドレスに酷似している。
(という事は‥‥ミオンさんはかなり都会の出身なんだろうな)
ガイはそう考えたが、それが正しいかどうかはまだわからないのだ。
ミオンを操縦席の後部スペースに、イムを自分の肩に乗せ、ガイは修理したばかりのBソードアーミーを直立させた。ガイの感覚は人造巨人と一体化し、己の体としてこの兵器を動かせるようになる。
そうしながら、ガイは機体のアビリティレベル‥‥各種戦闘力数値を操縦席のモニターに映して確認した。
ファイティングアビリティ:40
ウェポンズアビリティ:20
スピードアビリティ:60
パワーアビリティ:50
アーマードアビリティ:30
(この数値は‥‥!)
現状でできうる限りの修理を施した数値をガイは見る。
これらの数値は、現代で最も普及している機体・Bソードアーミーをスタンダードモデルとして「100」と設定した値なのだ。
つまり‥‥
(全部壊滅的だ。まともな戦闘は無理だな)
この機体、本来は鎧を纏い、剣と弩で武装した巨人兵士である。
だがガイの機体ときたら‥‥装甲版が足りずに所々で内部機構が露出し、弩も無い。剣は刃が欠けている。左腕は肩から先が丸々無い。実は駆動部品もちょっと足りてない。一目でわかるオンボロである。
まぁ完全な修理なんか元々無理な状況なのだ。仕方が無い。
それでも身長18メートルの巨人である。生身のゴブリンやオークごとき、百体いようが負けはしない。
そう考えるだけでも安心なのだ‥‥守らなければならない護衛対象がいるのだから。
夕陽の中、ガイ達はいよいよ出発した。
この先の村で安全を得られる事を期待しながら。
――しかしすぐに夜――
最寄りの村に着きもしないうちに、完全に日が暮れてしまった。まぁ仕方が無い、出発が遅かったのだ。
川沿いの林を探し、その中で機体を膝立ちにさせ、ガイ達は一夜を明かす事にする。
ガイとて年頃の男子。おそらく年上であろうが同年代の女性と一つの部屋で寝る事を、全く意識しないわけではない。
だがしかし――
操縦席の後ろの空間ははっきり言って狭い。一人が体を伸ばして寝る事もできない。
その空間をミオンに与え、ガイは座席を後ろに傾けてそれをベッド代わりにする。毛布は拾えていたので、寝具には困らなかったが、寝床としては劣悪だ。
(色気もへったくれもねぇなぁ)
ほんのちょっぴり残念に思いながらも、ガイはイムを懐に抱いたミオンの寝息を聞きつつ、自分も眠る事にした。
――早朝――
あまり熟睡できる場所でもないので、結果的に朝はすぐに目が覚めた。
食料は流れてこなかったので、ガイが元々持っていた物を三人で――まぁ妖精のイムはほとんど消費しないが――分けて食べる。
(ミオンさんは‥‥大丈夫みたいだな)
本当に貴族のお嬢さんなら旅の携帯食なんぞ口に合わず吐き出すかもしれないと懸念していたが、当のミオンは平気な顔でパンと干し肉とチーズの簡素な食事を文句ひとつなくとっていた。
ガイの視線に気づいたミオンがにっこり微笑む。
「あらら。私は朝食を食べているだけで殿方の視線を集めるほどの美人さんかしら?」
「‥‥否定はしませんよ」
ちょっとたじろぎながらそう返すガイに、ミオンはくすくすと可笑しそうに笑う。
(身元もわからず放浪しているのに冗談を言える余裕、か。タフなお嬢さんだなぁ)
割と本気でガイは感心していた。
朝食を終えて再び出発する一行。
元々一人旅同然の量しか食料を用意していないのに口が増えたのだ。もし次の村を通り過ぎるにしても、食料の買い足しだけはしなければならない。
ガイは蛇行する川辺に沿って、山裾を一つ迂回した。
その向こうに小さな村が見つかった。
だが‥‥
村は燃えていた。
やっぱり魔王軍の旗の下、火の中で暴れる量産型ケイオス・ウォリアーの部隊。
「またかぁ!」
ガイが頭を抱えて叫んでも、まぁ許されるというものだろう。
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