フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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1章

5 特産品 1

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 マスターキメラを退けてから数日。
 ガイは朝食の後、珠紋石じゅもんせきを作成しながら考え事をしていた。

(俺の異界流ケイオスがまた上がっていた。なぜだ? 以前食べた実に隠された効果があったのか?)
 インタセクシル人のガイが「1」以上に異界流ケイオスのレベルが上がる事は考えられない。アイテムで一つ底上げはしたが、それよりさらに上がるなどと、何か普通でない原因がある筈なのだ。
 となると、イムが生まれた実がそれではないかと思うのだが‥‥

 ガイはイムの方へ視線を向ける。
 イムはミオンのお手伝いをしていた――朝食の跡片付け、皿洗いを。奇麗になった皿を両手で抱え、宙を飛んで運んでいる。
 そちらを見ているうちに、いつの間にかガイはミオンの後姿をぼうっと眺めていた。

 程なく洗い物が終わり、ミオンは視線に気づいて振り返る‥‥と、ガイは視線がバッチリ合ってしまった。
 くすくすと笑うミオン。
「そんなにじっと見つめちゃって。穴が開いたらどうしようかしら。あ、まさか‥‥お尻を見ていたりした?」
 エプロン姿のまま、両手でわざとらしくお尻を隠すしぐさ。
 ガイは慌てて言い訳した。
「か、考え事をしていたんだよ!」

 微妙に早口で話し始めるガイ。
 とはいえ話題は至って真面目、己の異界流ケイオスがおかしな上昇をしている件である。
 笑っていたミオンも、それを聞くと真剣に考え込んだ。
「そんな事があったの! 確かに聞かない話ね。やっぱりその実が関係あるんでしょうけど‥‥」
「イム、何かわからないか?」
 ガイが訊くとイムは素直に頷く。
「うん、わからない」

 額を抑えるガイ。
 ミオンは指で頭を軽く叩きながら考えを纏めようとした。
「もしかしたら、ガイの遠い先祖に聖勇士パラディンがいたのかも? 異界流ケイオスが一度上がったのをきっかけに、薄く継いだ血が覚醒したとか‥‥」
「あー‥‥混血なら異界流ケイオスもある程度は上がるからなぁ。それぐらいしか考えられないか‥‥?」
 ガイは思わず声をあげた。

 そう、この世界インタセクシルで生まれながら異界流ケイオスが上がってゆく例外。それは異世界から召喚された聖勇士パラディンの血を引く者達だ。
 とはいえ子供なら高確率で起こる現象だが、孫以降となると極端に起こらなくなる。
 ガイの記憶では、両親ともにこの世界土着の住人なのだが‥‥。

「ま、今考えても答えが出ない事でも、これから何かしらの情報が見つかるかもしれないわ。とりあえずは今必要な事をしましょう」
 ミオンにそう促され、ガイは気持ちを切り替える事にした。
「そうだな。何かある?」
 にっこりと微笑むミオン。
「今日の御飯のため、お買い物」
 ガイは思わず「ははは」と笑った。
「そうだな。何につけても先ずは今日のメシだ」
 
 数分後。
 三人は連れ立って家を出た。
 買い物籠を手に、ミオンはガイの手を握る。
 ドキリとするガイを見上げ、ミオンは悪戯っぽい笑みを見せた。
「何を食べたい? ご飯かしら、パンかしら。それとも、わ・た・し?」
「ど、どれも悪くないね!」
 さらりと言えればジョークの一つにでもなるのだろうが、残念。ガイは目を逸らしながら必死に声をあげていた。
 その不器用な態度に、ミオンはにんまりと笑う。
 ガイの肩ではイムが「?」と首を傾げていた。


――村の商店前――


 村の農協が出している食料品店。ガイ達はそこに着いた‥‥のだが。
 今日に限って何やら人が多い。しかも誰も彼もが衣服を傷め、汚しており、ケガ人も多い。

「なんだ、これ?」
 思わず呟くガイ。
 それを聞きつけて駆け寄ってきたのは村長のコエトールだ。
「ガイ様あ! 魔王軍に攻め滅ぼされた町の難民が、我が村にも押し寄せてきましたぞ」


 そこから村長がまくし立てる。今回の魔王軍の大攻勢でケイトの関所は大半が破壊され、壊滅した町村は数知れず。首都での決戦でぎりぎりの辛勝はしたので、魔王軍は撤退を始めたものの、皇帝は二人の子の片方・長女と共に行方不明。もはや王族は年若い次女のみ。
 帝国の機能はほとんどが麻痺している状態なのだという。


「‥‥これ、負け戦って事だよな?」
「首都での決戦では一応勝ったので、公式には勝利となったようですぞ」
「そんな有様でかよ」
 村長とガイが話していると、何やら商店の方で声があがった。
「ここまで~配給はここまで~」
 何気なく見ると、商店の親父は山中の隠し畑で遭遇した農夫だった。
 驚くガイ。
「あのオッサンが店主かよ!」
「おや、タゴサックとお知り合いで。あいつは農協の幹部の一人です」
 村長が説明していると、当の本人が店を閉めて走ってくるではないか。

「村長! なんとかメシは配ったし、薬は勇者どのの造ったヤクで一応足りたが、これからどうするね。そうそう毎日タダで食わせてやるほど豊かな村ではないし、これだけの人数に仕事を行き渡らせるのも無理があるぞ」
 両手にナタを握り締めて訴える農夫タゴサック。側にいたガイにも気が付いた。
「おお、勇者殿! 今回もその御力でなんとかなりませんか?」

「そうは言われてもなぁ‥‥この村、何か産業は無いのか?」
「農業と漁業です。景気は村人がなんとか食っている程度です」
 ガイの質問に項垂うなだれて答える村長。
「なんか特産品とかは‥‥」
「何もありません」
 ガイの質問に項垂うなだれて答える村長。
 ガイは困って額を抑えた。

 そんなガイをイムがつんつんとつつく。
「探しにいこ?」
 言って彼女は山を指さした。
 ガイは大きな溜息をつく。
「すまねぇ。苦労かけるなぁ」
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