フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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1章

11 過去を訪ねて 3

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 黒装束を纏った新たなカエル獣人が、高い木の枝の上に現れた。
「だからこそさっさと国をまとめ直さないとならんのだ。シソウ国が次も帝王の座を維持するためにな」
 そして黒装束の下の素顔を見せる。

 その体色は明るい黄色で、頬が鮮やかな青という、妙にカラフルな色彩の素顔を。

 それを見上げるモードック。
「自ら来たのか、弟よ」
「王子なのに暗殺者アサシン? それとも忍者か?」
 ガイは驚いた。
 いきなりの黒幕出現に、そしてよくわからない職業クラス分類に。
 だが相手はそれを見下し言い放つ。
暗殺者アサシンの恰好をした王子だ。それもわからんとはな」
「いや、当然みたいに言われても……」
 ちょっとひっかかるガイ。

 だが王子はそんなガイを放っておいて、己の兄に声をかけた。
「兄よ。王位には私、インディブルが就く。覚悟はいいな」
「弟よ。王位にはお前が就いても私は一向にかまわん。だから覚悟はしない」
 毅然というモードック。
 すると弟――インディブルが「ゲコー」と鳴いた。
「往生際の悪い。だが兄弟を手にかけてでも私は強い国を作る」
「うむ、頑張れ。だが手にかけられるのは断る」
 モードックも言い返して「ゲコー」と鳴く。
 二人の間に殺気が膨れ上がった。剣を抜くのは全くの同時。
「ゆくぞ!」
「来るか!」

「行きも来もしなくていいだろ! 相手の話聞いてるのか!」
 ガイの怒鳴り声が響き渡った。
「「?」」
 兄と弟、二人のカエル獣人が首を傾げる。

「だから弟さんが王様になる事を兄さんは認めてるんだろ? 戦う必要どこにもねーだろ!」
 苛立つガイ。
 しかしインディブルは「ゲー」と鳴いて一笑に付す。
「何をバカな。クレバーに考えて、理由もなく王位を捨てる筈がない。何か企んでいるのだ」
「何かって何だよ!」
「知らんけど」
「そこが大事だろうがよ!」
 正直なインディブルに怒鳴るガイ。

 だがモードックが「ゲゲー」と鳴いた。
「捨てる理由なら有る。あえて言わなかったが」
「言えよ!」
 怒鳴るガイ。
 インディブルは「ゲー」と鳴いて一笑に付す。
「言えぬのだろう。手紙にも『言えないけど理由がある』と書いてあったしな」
「理由がある事がわかってるなら一足飛びに殺そうとしてんじゃねーよ! 確認しろよ確認をよー!」
 怒鳴るガイ。
 その後ろからミオンがモードックに尋ねた。
「それで、理由とは何なんです?」

 モードックが白い頬をぷくーと膨らませた。
「長い話になる」
「まぁ……仕方ないか。どうぞ」
 とりあえず促すガイ。
「私は幼い頃から世界を旅する事を夢見ていた。成人し、こうして冒険家となった」
 モードックの話は幼少時代から始まった。
「連合国内を一周してからこのケイト帝国に来た」
 すぐに現時点に達した。
「そこで素敵な女性と知り合い、恋に落ちた」

 そこで白い頬にほんのり朱がさす。

「結婚する事にした」
「おめでとう」
 祝福する弟。
「ありがとう」
 礼を言う兄。そして話を〆る。
「だから帰らないのだ」

「別に長くねーだろ! 手紙に書けるだろ!」
 ガイは怒鳴った。こめかみに青筋が浮いていた。
 一方、モードックは「グー」と鳴く。
「恥ずかしいし」
「殺し合いになる寸前だったろうが! 恥ずかしがるなよ!」
 ガイは怒鳴った。割と本気で苛立っていた。
 一方、モードックは「グー」と鳴く。
「君は好きな人ができたら照れずにはっきり言うタイプか」
「刃傷沙汰になるよりはな!」
 ガイは怒鳴った。こめかみの青筋がピクついていた。

 しかしインディブルは「ゲー」と鳴いて一笑に付す。
「だが兄よ。それでは兄の妻が王妃になるだけで、私に王位が転がり込んで来るわけではない」
(結局は戦うのか……)
 苛つきながらも諦めて聖剣の柄を握るガイ。
 今ならこのカエル獣人の頭を容赦なく叩き割れる。さっさとそうしようと割と本気で思っていた。

 だがなんとした事か。
 インディブルは黒装束のふところから一枚の羊皮紙を出すのだ。
「ここに役所への提出用紙がある。死亡届にするつもりだったが相続放棄申請に変更するので、名前と拇印を記すのだ」
「うむ」
 頷いて羊皮紙を受け取るモードック。
 マント下の背負い袋から羽ペンを取り出すと、さらさらと結構綺麗な字を書く。最後に親指で判を押した。
「記入したぞ弟よ」
「ありがとう兄よ」
 インディブルは羊皮紙を受け取った。
 兄弟互いに「「ゲコゲー」」と笑いあう。

「世話になったな。礼を言う」
「言う前にちゃんと話し合えよ……」
 大きな頭を下げるモードックに疲れ果てるガイ。
 そんな彼にインディブルが声をかけた。
「士官が望みならシソウ国に来るがいい。これから新帝王を決める戦いがあるはずだからな。ではこれにて」
 そして羊皮紙を手に、倒れていた部下を引っ張って去って行った。

(絶対行かねーぞ)
 インディブルを見送りながら決意するガイ。
 相手が見えなくなってから、改めてモードックに声をかけた。
「とりあえずモードックさん、あんたを探してたんだ」
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