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1章
13 チマラハ攻略戦 1
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――カーチナガ子爵の都・チマラハの街――
かつて地方都市ながら河川交易でそこそこ栄えていた街・チマラハ。
しかし今や防壁があちこち砕かれており、戦いの痕が痛々しく刻まれている。
そして街中から悲痛な嘆きの声が、今日も絶える事なく……
ゴブリン兵士が鞭で地面を叩いた。
領主邸の前にある広場には家ほどもある石臼状のような装置があり、そこからは放射状にたくさんの棒が突き出している。そしてその棒を、鎖で足を繋がれた大勢の捕虜達が延々とぐるぐる回しているのだ。
ゴブリンはその監督であり、好き放題に大声をあげる。
「働け! 働けぇ! 死ぬまで回すのだァ!」
叫んでは気まぐれに意味もなく捕虜達を鞭打つ。なんという過酷な労働であろうか。
だが残虐なのはそこだけではない。
街の中央広場には多数の住民が鎖に繋がれている。彼らは臼回し労働の補充要員であり、空きができるまでここに晒し者にされ、屋根も無い場所で野晒しになっているのだ。
もちろん彼らを鞭打つためにオーク兵士が配置されている。
「我らに従わない者には死あるのみ! 逆らう者にも死あるのみ! 気にくわねー奴にも死あるのみ! たまに気分で死あるのみ!」
疲労困憊して地に膝をつく囚われ人達にオーク兵が叫んだ。その声は付近の住人達へも響き渡る。なんという横暴。
他の住人どもに不穏な者はいないか、人間でありながら魔王軍に与する兵士達が捜し歩く。
彼らは腹が減っては目についた商店から勝手に食べ物を奪い、泣きべそをかく店主へ偉そうに怒鳴るのだ。
「俺ら魔王軍のカースト制度はよぉ! 暗黒大僧正様>四天王>親衛隊>俺ら兵士>食べられる生き物>メクラチビゴミムシ>お前ら負け犬ども、だァ!」
おおなんという傍若無人。
――領主の邸宅・最上階の部屋――
街を一望できる部屋に二人の人物がいた。
一人は豪華な椅子に座る、でっぷり太った男。身に着けた装飾のある兜や鎧は彼がそこそこの地位にある事を示している。
もう一人も鎧を纏っているが、こちらは体格がよく背も高い。背や体型からしておそらく男。赤い鎧は肌に一点の露出も無く、顔さえフルフェイスヘルメットで覆われている。
赤い鎧の男がもう一人に訊いた。
「我ら魔王軍に決戦を挑む連中がスイデン国に集まっているが……お主はどうされるのかな?」
肥満の男は窓から外を眺めつつ面倒臭そうに答える。
「本来の隊長、マスターキメラが倒されてな。その仇を討つまでは、面子も立たんし、いつ反攻されるかわからん不安も残る。よって我らから戦力は出せんな。すまんのう」
そんな態度に、赤い鎧の男は怒りも叱責もしなかった。ただ頷くのみだ。
「わかった。ならば私は明日、次の地へ向かおう」
肥満の男は機嫌よくニヤつく。
「連絡係もあちこち行かねばならんで大変だな。魔王軍に鞍替えしたせいで……」
その時、轟音が響いた!
間違いなく爆発音……そして館を襲う振動!
「ななな、何事じゃあ!?」
肥満の男が慌てふためく中、部屋にコボルドの兵士が駆け込んできた。
「川の方から街へ砲撃を加える敵部隊があるようです!」
赤い鎧の男は見た。
街の防壁の方から煙が上がっているのを。
「ふむ。いつ来るかわからん反攻が来てくれたようだぞ。なかなか親切な連中だ」
一転、肥満の男は汗だくになって喚き散らす。
「ぼ、防備を固めろ! 住民が残っている以上、街中へ無茶は仕掛けてこないはずだ!」
そんな肥満の男へ、赤い鎧の男が再び訊ねた。
「副隊長殿はどうされるのだ?」
気まずく言葉に詰まる、太った男――この街を占領した魔王軍部隊の副隊長。
焦りながらもなんとか返事を考える。
「き、決まっているだろう! ここで指揮をとる。あんたも下手に動かん方がいいぞ」
赤い鎧の男は肩を竦めた。
「今は貴公がここの責任者だからな。従おう」
かつて地方都市ながら河川交易でそこそこ栄えていた街・チマラハ。
しかし今や防壁があちこち砕かれており、戦いの痕が痛々しく刻まれている。
そして街中から悲痛な嘆きの声が、今日も絶える事なく……
ゴブリン兵士が鞭で地面を叩いた。
領主邸の前にある広場には家ほどもある石臼状のような装置があり、そこからは放射状にたくさんの棒が突き出している。そしてその棒を、鎖で足を繋がれた大勢の捕虜達が延々とぐるぐる回しているのだ。
ゴブリンはその監督であり、好き放題に大声をあげる。
「働け! 働けぇ! 死ぬまで回すのだァ!」
叫んでは気まぐれに意味もなく捕虜達を鞭打つ。なんという過酷な労働であろうか。
だが残虐なのはそこだけではない。
街の中央広場には多数の住民が鎖に繋がれている。彼らは臼回し労働の補充要員であり、空きができるまでここに晒し者にされ、屋根も無い場所で野晒しになっているのだ。
もちろん彼らを鞭打つためにオーク兵士が配置されている。
「我らに従わない者には死あるのみ! 逆らう者にも死あるのみ! 気にくわねー奴にも死あるのみ! たまに気分で死あるのみ!」
疲労困憊して地に膝をつく囚われ人達にオーク兵が叫んだ。その声は付近の住人達へも響き渡る。なんという横暴。
他の住人どもに不穏な者はいないか、人間でありながら魔王軍に与する兵士達が捜し歩く。
彼らは腹が減っては目についた商店から勝手に食べ物を奪い、泣きべそをかく店主へ偉そうに怒鳴るのだ。
「俺ら魔王軍のカースト制度はよぉ! 暗黒大僧正様>四天王>親衛隊>俺ら兵士>食べられる生き物>メクラチビゴミムシ>お前ら負け犬ども、だァ!」
おおなんという傍若無人。
――領主の邸宅・最上階の部屋――
街を一望できる部屋に二人の人物がいた。
一人は豪華な椅子に座る、でっぷり太った男。身に着けた装飾のある兜や鎧は彼がそこそこの地位にある事を示している。
もう一人も鎧を纏っているが、こちらは体格がよく背も高い。背や体型からしておそらく男。赤い鎧は肌に一点の露出も無く、顔さえフルフェイスヘルメットで覆われている。
赤い鎧の男がもう一人に訊いた。
「我ら魔王軍に決戦を挑む連中がスイデン国に集まっているが……お主はどうされるのかな?」
肥満の男は窓から外を眺めつつ面倒臭そうに答える。
「本来の隊長、マスターキメラが倒されてな。その仇を討つまでは、面子も立たんし、いつ反攻されるかわからん不安も残る。よって我らから戦力は出せんな。すまんのう」
そんな態度に、赤い鎧の男は怒りも叱責もしなかった。ただ頷くのみだ。
「わかった。ならば私は明日、次の地へ向かおう」
肥満の男は機嫌よくニヤつく。
「連絡係もあちこち行かねばならんで大変だな。魔王軍に鞍替えしたせいで……」
その時、轟音が響いた!
間違いなく爆発音……そして館を襲う振動!
「ななな、何事じゃあ!?」
肥満の男が慌てふためく中、部屋にコボルドの兵士が駆け込んできた。
「川の方から街へ砲撃を加える敵部隊があるようです!」
赤い鎧の男は見た。
街の防壁の方から煙が上がっているのを。
「ふむ。いつ来るかわからん反攻が来てくれたようだぞ。なかなか親切な連中だ」
一転、肥満の男は汗だくになって喚き散らす。
「ぼ、防備を固めろ! 住民が残っている以上、街中へ無茶は仕掛けてこないはずだ!」
そんな肥満の男へ、赤い鎧の男が再び訊ねた。
「副隊長殿はどうされるのだ?」
気まずく言葉に詰まる、太った男――この街を占領した魔王軍部隊の副隊長。
焦りながらもなんとか返事を考える。
「き、決まっているだろう! ここで指揮をとる。あんたも下手に動かん方がいいぞ」
赤い鎧の男は肩を竦めた。
「今は貴公がここの責任者だからな。従おう」
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