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2章
16 魔獣咆哮 4
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「ヒャッハー! 次はお前だーッ!」
タリンは敵の大将へ突撃する。
対するマスターボウガスは……動じる事なく剣を構えた。
強烈な異界流が発せられ――その身に、その剣に、変化が生じる……!
青い瞳が赤く染まり、刀身が金色に輝いた。
彼の影から小さな黒い何かがいくつも飛び出す。よく見ればそれは蝙蝠のような形をしていた。それらが剣に吸い込まれ、金の刃に赤黒いオーラが生じた。
「ライディングアサルトタイガーー!!」
タリンが骸骨馬の加速度を乗せて横薙ぎに剣を振るう。
「ブラッド……エンド!」
ボウガスが端正な顔から野太い声を吐いて剣を縦に振るった。
激突!
硬い物が砕ける激しい音。
絶叫とともに吹きとばされ、地面に叩きつけられたのは……やはりタリンだった。骸骨馬が横転する。
「予想通りじゃい!」
鍛冶屋のイアンが苛々しながら両手戦鎚を振り回し、タリンへの間にいる敵を打ちのめす。そこを女神官リリが必死に走り、タリンの手当てに駆け付けた。
ガイは見た。
タリンの剣もまた敵を捉えていた事を。
しかしボウガスはまるで微動だにしていなかった。
(あの鎧がとんでもなく頑強なのか? それとも……)
ガイは感じていた。強大な異界流だけではない、何か得体の知れない気配が敵の身に満ちている事を。
(以前会った時より遥かに強力だ。どこかでパワーアップしてきたのか? 装備は前と同じに見えるが……)
しかしガイは聖剣を構えた。
そうせざるを得なかった。
ボウガスが真っすぐ、ミオンへと向かってきたからだ。
ガイが退くわけにはいかなかった。
ガイは腰の鞄から珠紋石を取り出す。
(この組み合わせなら、勝てないまでも負けない)
取り出すのは土と魔、二つの結晶。それらをセットされた聖剣が呪文を読み込む。
『アーマープレート。ライフスティール』
【アーマープレート】大地領域第4レベルの防御呪文。防具の分子密度が強化され、より強固に身を守る。
【ライフスティール】魔領域第6レベルの攻撃呪文。敵の生命力を吸収し、己への活力に変換する。
「護身吸引・一文字斬り!」
ガイは敵へ打ちかかった。己の防具を強化し、敵から生命力を吸い取る魔の剣技で。この盤石の組み合わせが一撃で敗れる事は無い筈だ。
「ブラッド……エンド!」
先程と同じ準備を終えていたボウガスが、赤黒いオーラを纏った金の刃を振るった。
激突!
肉体が切り裂かれる生々しい音。
絶叫とともに吹きとばされ、地面に叩きつけられたのは……ガイだった!
ミオンとイムが悲鳴をあげる。
一方、ボウガスもガイの一撃を受けてはいたのだが……以前同様、打たれた箇所から煙が上がっていた。
しかしその煙はすぐに消えた。ボウガスは平気な様子で立っている。
だがガイの方は地面に倒れたままロクに動けない。
意識はあるのだが、それが体に上手く伝わらない程のダメージを受けたのだ。
(衝撃もあるが……力が、命が、大きく吸い取られた……)
血が流れない傷口を抑え、ガイは呻く事しかできない。聖剣の回復能力がなければ死んでいたかもしれない。
「よくわからんが、使う力を間違えたようだな」
己を見下ろすボウガスの言葉と、そこにある微かな戸惑いをガイは聞く。
(どういう事だ? 奴の剣技以上のダメージを俺が受けたというのか。なんで……?)
瀕死のガイは必死に考えるが、その頭上でボウガスが剣を振り上げた。
「お前は油断も生かしておく事もできん男だ。それだけはわかる。さらばだ」
剣がガイの頭に振り下ろされた。
ある者は悲鳴をあげ、ある者は駆け付けようとして敵の兵士に阻まれる。
ただ一人、敵の兵士を貫いてボウガスの剣を弾いた者を除いては。
熱線に刃を打たれ、ボウガスは跳び退く。間一髪、地面を次の熱線が打った。
「次は貴様か!」
「ああ、私だ」
元魔王軍親衛隊のレレンが竜鱗に体を覆われた戦闘形態に変身し、炎の拳を握っていた。
「受けろ燃える獅子の牙! ブレイズプラズマーー!!」
獣人キマイラの繰り出す拳が幾条もの熱線を放ち、焦熱地獄を生み出す。
「ブラッド……エンド!」
先程と同じ準備を終えていたボウガスが、赤黒いオーラを纏った金の刃を振るった。
黄金の刃は熱線を破りレレンを切り裂いた!
「ぐ、うっ……」
傷口を抑えてよろめくレレン。人間離れした頑強な体は持ち堪えるものの、ダメージは大きい。
一方、敵とて全ての熱線を凌ぐ事はできず、何発かはその身に受けていた。
だが……ブスブスと鎧を焦がしながらも、ボウガスは怯んでいなかった。
「流石は元陸戦大隊の親衛隊だ。だが今の私には勝てまい」
言って剣を構え直すマスターボウガス。自信に満ちた態度と声が、その言い分は事実なのだと宣言している。
ガイに再び疑問がわいた。
(今の? やはり昔よりパワーアップしているという事なのか……それとも……)
「ガイ、しっかりして」
リリが駆け寄り、回復魔法をかけてきた。タリンの手当は終わったのだろう。
「おっと、サンキュー」
礼を言いつつ、ガイは腰の鞄から自作の回復薬も取り出す。
急ぎ回復に努めるガイだが、すぐには参戦できない。
イアンやスティーナ、タゴサックやララは敵の兵士と戦っている。
だからボウガスとレレンの戦いに割り込める者はいなかった。
「まだやるか」
問うボウガスに、レレンは再び身構える。
「ふん、処刑されて当然の身が生かされていただけだ。ここで捨てるのも悪くない。いくらお前でも、私を倒した頃にはガイ達に勝てる力は残っていないだろうからな!」
「そうかな? まぁそう思うなら付き合ってやろう」
ボウガスは再び黄金の剣を構えた。
と、その時。
にわかに地面が揺れる。戦っていた者達が手を止めるほどに大きく。
地響きとともに、山影から見上げるほどの巨体が姿を現した。
天に向かって吠えるのは——二足歩行の肉食恐竜のような体型の、巨大なドラゴン! 身の丈は二十メートルを越え、固い鱗は月光を受けて水晶かダイヤモンドのような輝きを放っていた。
「怪獣!?」
ミオンが驚く。
「チッ、時間がかかり過ぎたか」
マスターボウガスは忌々しそうに言うと、生き残っている部下に「退け!」と命令する。
彼らは夕闇に包まれた山中に撤退していった。
引き上げる敵を見つつスティーナが首を傾げる。
「制御……できてないの?」
「に、逃げようよ!」
慄くリリ。
しかしようやく負傷から癒えたガイは、怪獣を睨みつける。
「いや、ここで倒したい」
タリンは敵の大将へ突撃する。
対するマスターボウガスは……動じる事なく剣を構えた。
強烈な異界流が発せられ――その身に、その剣に、変化が生じる……!
青い瞳が赤く染まり、刀身が金色に輝いた。
彼の影から小さな黒い何かがいくつも飛び出す。よく見ればそれは蝙蝠のような形をしていた。それらが剣に吸い込まれ、金の刃に赤黒いオーラが生じた。
「ライディングアサルトタイガーー!!」
タリンが骸骨馬の加速度を乗せて横薙ぎに剣を振るう。
「ブラッド……エンド!」
ボウガスが端正な顔から野太い声を吐いて剣を縦に振るった。
激突!
硬い物が砕ける激しい音。
絶叫とともに吹きとばされ、地面に叩きつけられたのは……やはりタリンだった。骸骨馬が横転する。
「予想通りじゃい!」
鍛冶屋のイアンが苛々しながら両手戦鎚を振り回し、タリンへの間にいる敵を打ちのめす。そこを女神官リリが必死に走り、タリンの手当てに駆け付けた。
ガイは見た。
タリンの剣もまた敵を捉えていた事を。
しかしボウガスはまるで微動だにしていなかった。
(あの鎧がとんでもなく頑強なのか? それとも……)
ガイは感じていた。強大な異界流だけではない、何か得体の知れない気配が敵の身に満ちている事を。
(以前会った時より遥かに強力だ。どこかでパワーアップしてきたのか? 装備は前と同じに見えるが……)
しかしガイは聖剣を構えた。
そうせざるを得なかった。
ボウガスが真っすぐ、ミオンへと向かってきたからだ。
ガイが退くわけにはいかなかった。
ガイは腰の鞄から珠紋石を取り出す。
(この組み合わせなら、勝てないまでも負けない)
取り出すのは土と魔、二つの結晶。それらをセットされた聖剣が呪文を読み込む。
『アーマープレート。ライフスティール』
【アーマープレート】大地領域第4レベルの防御呪文。防具の分子密度が強化され、より強固に身を守る。
【ライフスティール】魔領域第6レベルの攻撃呪文。敵の生命力を吸収し、己への活力に変換する。
「護身吸引・一文字斬り!」
ガイは敵へ打ちかかった。己の防具を強化し、敵から生命力を吸い取る魔の剣技で。この盤石の組み合わせが一撃で敗れる事は無い筈だ。
「ブラッド……エンド!」
先程と同じ準備を終えていたボウガスが、赤黒いオーラを纏った金の刃を振るった。
激突!
肉体が切り裂かれる生々しい音。
絶叫とともに吹きとばされ、地面に叩きつけられたのは……ガイだった!
ミオンとイムが悲鳴をあげる。
一方、ボウガスもガイの一撃を受けてはいたのだが……以前同様、打たれた箇所から煙が上がっていた。
しかしその煙はすぐに消えた。ボウガスは平気な様子で立っている。
だがガイの方は地面に倒れたままロクに動けない。
意識はあるのだが、それが体に上手く伝わらない程のダメージを受けたのだ。
(衝撃もあるが……力が、命が、大きく吸い取られた……)
血が流れない傷口を抑え、ガイは呻く事しかできない。聖剣の回復能力がなければ死んでいたかもしれない。
「よくわからんが、使う力を間違えたようだな」
己を見下ろすボウガスの言葉と、そこにある微かな戸惑いをガイは聞く。
(どういう事だ? 奴の剣技以上のダメージを俺が受けたというのか。なんで……?)
瀕死のガイは必死に考えるが、その頭上でボウガスが剣を振り上げた。
「お前は油断も生かしておく事もできん男だ。それだけはわかる。さらばだ」
剣がガイの頭に振り下ろされた。
ある者は悲鳴をあげ、ある者は駆け付けようとして敵の兵士に阻まれる。
ただ一人、敵の兵士を貫いてボウガスの剣を弾いた者を除いては。
熱線に刃を打たれ、ボウガスは跳び退く。間一髪、地面を次の熱線が打った。
「次は貴様か!」
「ああ、私だ」
元魔王軍親衛隊のレレンが竜鱗に体を覆われた戦闘形態に変身し、炎の拳を握っていた。
「受けろ燃える獅子の牙! ブレイズプラズマーー!!」
獣人キマイラの繰り出す拳が幾条もの熱線を放ち、焦熱地獄を生み出す。
「ブラッド……エンド!」
先程と同じ準備を終えていたボウガスが、赤黒いオーラを纏った金の刃を振るった。
黄金の刃は熱線を破りレレンを切り裂いた!
「ぐ、うっ……」
傷口を抑えてよろめくレレン。人間離れした頑強な体は持ち堪えるものの、ダメージは大きい。
一方、敵とて全ての熱線を凌ぐ事はできず、何発かはその身に受けていた。
だが……ブスブスと鎧を焦がしながらも、ボウガスは怯んでいなかった。
「流石は元陸戦大隊の親衛隊だ。だが今の私には勝てまい」
言って剣を構え直すマスターボウガス。自信に満ちた態度と声が、その言い分は事実なのだと宣言している。
ガイに再び疑問がわいた。
(今の? やはり昔よりパワーアップしているという事なのか……それとも……)
「ガイ、しっかりして」
リリが駆け寄り、回復魔法をかけてきた。タリンの手当は終わったのだろう。
「おっと、サンキュー」
礼を言いつつ、ガイは腰の鞄から自作の回復薬も取り出す。
急ぎ回復に努めるガイだが、すぐには参戦できない。
イアンやスティーナ、タゴサックやララは敵の兵士と戦っている。
だからボウガスとレレンの戦いに割り込める者はいなかった。
「まだやるか」
問うボウガスに、レレンは再び身構える。
「ふん、処刑されて当然の身が生かされていただけだ。ここで捨てるのも悪くない。いくらお前でも、私を倒した頃にはガイ達に勝てる力は残っていないだろうからな!」
「そうかな? まぁそう思うなら付き合ってやろう」
ボウガスは再び黄金の剣を構えた。
と、その時。
にわかに地面が揺れる。戦っていた者達が手を止めるほどに大きく。
地響きとともに、山影から見上げるほどの巨体が姿を現した。
天に向かって吠えるのは——二足歩行の肉食恐竜のような体型の、巨大なドラゴン! 身の丈は二十メートルを越え、固い鱗は月光を受けて水晶かダイヤモンドのような輝きを放っていた。
「怪獣!?」
ミオンが驚く。
「チッ、時間がかかり過ぎたか」
マスターボウガスは忌々しそうに言うと、生き残っている部下に「退け!」と命令する。
彼らは夕闇に包まれた山中に撤退していった。
引き上げる敵を見つつスティーナが首を傾げる。
「制御……できてないの?」
「に、逃げようよ!」
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「いや、ここで倒したい」
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