フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

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2章

17 竜の神 2

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「俺、ミオン、イム……故郷にはこの3人だけで行ってくる。村を空っぽにするわけにはいかないからな」
 ガイは村の主な面々にそう告げると、ゾウムシ型の運搬機で出発した。


――霧深い山間部――


 運搬機一台ぶんの幅しかない山道を進みながら、ガイは助手席のミオンに頼む。
「ミオン。故郷では夫婦設定は無しにしてくれ」
「そうね……流石に親御さんにまで、こんな事で嘘をつくのは良くないか」
 ちょっぴり残念そうではあったが、ミオンは納得してくれた。
 ついでにガイはあらかじめ詫びておく。
「いろいろ我慢してもらうと思うけど、ゴメンな」
「?」
 わけがわからず戸惑うミオンに、ガイは溜息交じりに説明した。
「閉鎖的というか、硬直してるというか……あまり良くない意味で変化しない村なんだ」
 それを聞いて、ミオンにはピンとくる物があった。
「そういう所だから冒険者になったの?」
「うん。地元大好きでしがみつくか、嫌になって出ていくか。村の若いもんはどっちかで真ん中が無いんだよな」
 そう答えるガイは少々憂鬱なようでもあった。


――山奥の集落・シナナ村――


  山肌に沿って大きく弧を描く道をどれほど進んだだろうか。
 村を離れて数日、ついに山間の川の両岸に家屋の立ち並ぶ村が見えた。
 しかし……そこへ向かって道を進むと、段々畑から中年の男が飛び降り、運搬機の前を遮る。
何者なにもんだ?」
 男は露骨に警戒しながら叫んだ。

 ガイは操縦席の窓から顔を出した。
「俺ですよ、ギムおじさん」
「ガ……ガイ! 戻ってきたのか! そうか、都会なんぞは水が合わなんだのだな。よしよし、今日は宴会……い?」
 一転して嬉しそうな満面の笑みを見せた中年男は、しかし助手席のミオンに気づくと言葉を止めた。
 ガイはミオンを紹介する。
「あ、こっちはミオン。今はこの人の護衛をしています」
「初めまして」
 丁寧に頭を下げるミオン。
 ガイは本題に入ろうとした。
「今は仕事の途中で村に立ち寄ったんで……用事が終わったらまたすぐ出ます。大婆ちゃんはやしろですか?」

 だが農夫のギムはわなわなと全身を震わせる。
「その服……ケイトの都の女! ガイ、都会の女と帰ってきよったか!」
 内心|(やっぱりか……)と思いつつ、ガイは話してきかせようとした。
「いや、事情はさっき話した通りで……」
「都会人にコキ使われとんのか!」
 ギムは話を全く聞かずに額を抑えた。
 内心|(やっぱりか……)と思いつつ、ガイは思わずこぼす。
「なんでそうなる……」
「なんてぇこったぁ!」
 ギムは話を全く聞かないまま、村の中へと走っていった。

「あまり歓迎されてないみたいね?」
 戸惑い半分に言うミオンに、ガイは溜息をつきつつ応えた。
「ごめんな。こうなったら急ごう」


――シナナ村奥の社――


 ガイは寄り道せずに村の奥へ向かった。
 最奥にあるのは神社だ。そこそこ大きく、運搬機を境内に入れる事もできた。ガイ達はそこで降りる。
 境内に飾られた竜の石像――大きな球に絡みつく、角のある蛇――をミオンは見た。
「竜神信仰……確かにね。ここで何らかの助力が得られればいんだけど」


 だがそこへ、大勢の村人がどやどやと入ってくる。半分は中年、半分は老人の村人達だ。
「ガイだ! ガイが帰ってきおった!」
「本当に都の女を連れとる」
刺股さすまたじゃ! 刺股さすまたを持ってくるんじゃ!」
 村人の半数は刺股さすまたを手に、ガイ達をぐるりと取り囲んだ。

「なんだか人里に迷い込んだモンスターみたいな扱いね?」
「ごめんな……」
 戸惑うミオンに詫びるガイ。

 だが老人の一人がガイの肩を指さした。
「おいガイ! そ、そこにおるのは……」
「妖精のイムだよ、グオ爺ちゃん」
「こんちはー」
 ガイが紹介するとイムは天真爛漫な笑顔で手をあげ、挨拶する。
 村人達がにわかにどよめいた。
「妖精じゃ! 妖精がおるぞ!」
「ぬう、これは吉兆じゃ!」
「ありがたや、ありがたや……」
 老人の何人かは手を合わせて拝み始めた。
 この村の古い伝承では極めて貴重な縁起物なのだ。

 老人が拝み、中年が刺股さすまたを手にどうした物かと決めかねる。
 そんな中、包囲をかき分けて若い農夫が入ってきた。
「ようガイ」
「ゲンか。久しぶりだな」
 そう、この農夫はガイの同年代、子供の頃の旧友なのだ。
 そのゲンは呑気に話しかけてくる。
「仕事でここに来たって? 都会に出たのに大変だな、お前も」
「知らなかったかもしれないけど、世界中が大変だったんだぜ」
 世間と離れた村の様子に、ガイは今更ながら呆れてしまった。

 だがしかし。
「知っておる。だがこの村はビクともせんわ」
 キツめの女性の声で、ガイは後ろから声をかけられたのだ。
 子供の頃から聞きなれたその声にガイは振り向く。
「大婆ちゃん!」
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