フェアリー・フェロウ~追い出されたフーテン野郎だが、拾い物でまぁなんとか上手くいく~

マッサン

文字の大きさ
126 / 147
2章

23 皇女の帰還 6

しおりを挟む
――ケイト帝国首都・ヨンアン――

 かつて大陸三大国の首都だった都を囲む、巨大で長大な防壁。そこに設けられた巨大で堅固な門。
 文化と権力を永遠に守るその門の前は、今、地獄となっていた。
 攻める敵によって。守ろうとする兵士達にとって。

 押し寄せる敵からの砲撃を食らい、防衛部隊のケイオス・ウォリアーの肩が爆発。腕が地面に転がった。
「だ、駄目だ! やられる!」
「撤退しろ! 急げ!」
 悲鳴をあげる操縦者に隣にいる機体の兵士が叫ぶ。大門の脇の小門に破損した機体が逃げ込み、その背中を味方機が守ろうとした。

 だがその味方機も半壊しており、簡易修理でなんとか動かしている有様だ。
 そもそも無傷の機体など防衛側には無い。全損する前になんとか都へ逃げ込み、動くようにしては再出撃する――そんな無茶を続けてなんとか都を守っていた。
 それも限界が近い。撃墜されて動かなくなった機体が、数えるのも面倒なほど防壁の周りに倒れているのだ。

『ヒャッハー! 燃えろ燃えろー!』
 魔王軍残党の機体から通信機越しに愉悦の叫びが届いた。かつてケイト帝国を崩壊させた憎き侵略者どもは、人類の決死の攻撃で壊滅した筈なのに……生き残りどもがまたこうして攻めて来たのである。

 最も普及している量産型の巨人戦士機・Bソードアーミーの操縦席で兵士が歯軋りした。
「クソッ、天下の央たるケイトが……途絶えてたまるか!」
 ケイト本国・都の周辺にある村から上京し、兵士となって幾年。妻も子も友人もいる彼にとって首都は人生そのものだ。退路は無い。敵を退けて生き延びる以外の選択肢は無いのである。

 修理を終えた味方機の一つが小門から出て来た。虫頭の重装甲砲撃機・Bカノンピルバグだ。
「戻ったぞ! 大丈夫か」
「ああ、まだやれる」
 互いに名も知らぬ一兵士同士が肩を並べ、敵へ必死の反撃を撃ち込む。
 だが敵軍からの砲撃も激しい。下級の魔物兵の不快な声がまた通信機から響いた。
『ヒャッハー! 今日は祭りだ血祭だー!』
「おのれ……!」
 怒りを込めた矢と砲弾が敵機に命中。爆発!
『ギャース!』
「どうだ!」
 吹き飛ぶ敵量産機を見て、兵士は高揚して叫んだ。

 だがしかし。
 直後、巨大な熱の奔流が地面に突き刺さる!
 悲鳴とともに味方のカノンピルバグが爆発した。兵士のソードアーミーも衝撃で地面を転がる。
「く、くそう……」
 泣きそうな声を漏らしてモニターを見る兵士。

 そこに映っているのは、並みのケイオス・ウォリアーより頭一つ以上大きな、身長20メートルを超える光り輝く怪獣。
 結晶のような鱗の二足歩行竜だった。

 魔王軍残党だけにここまで追い込まれたりはしない。いくら崩壊前に遠く及ばないとはいえ、ケイトの首都を守る軍が蹴散らされたりはしない。
 だがこの奇怪な魔竜はケタ違いだった。魔王軍残党とともに現れたのだから奴らの兵器なのだろうが、パワー・タフネス・破壊力……怪物という言葉はこの魔竜のためにあったのだ。


 だがその魔竜を金属球が打ちのめす!
 牛頭の白銀級機シルバークラス・Sメテオミノタウロスが魔竜に挑んだのだ。他にも数機のお供を連れて。
 兵士は希望と……そして悔しさを籠めて彼らを見る。彼らは異国から来たレジスタンス【リバーサル】のリーダーとその側近。壊滅したケイト軍に代わり今の帝国を守ってくれる守護者なのだ。

 魔竜が全身から何度も熱線を放つ。それを食らって【リバーサル】の精鋭達も一機、また一機と倒れていった。
 だが彼らの攻撃も魔竜の体を穿ち、次第に削り……ミノタウロス型リーダー機の鎖鉄球が頭を砕いた。
「やった! 撃破だ!」
 歓声の中、魔竜の巨体が倒れる。
「か、勝った……」
 放心気味の声を漏らす兵士。
(どうしても彼らに頼らなければならないんだな……)
 半数になりながらも勝利した【リバーサル】の精鋭を見て、彼の中に残念な気持ちはわいたが、安堵があるのも本当だった。


 しかし……魔王軍残党どもは引き上げない。
 大地が揺れ、裂け、巨大な咆哮が響き……土中から再び魔竜が姿を現す!
「もう一匹いるだと!?」
「そ、そんな……」
 味方の軍から絶望の声が漏れた。

 兵士は思い出した。旧ケイト帝国圏内の各地で、巨大な魔竜が人里や流通路に甚大な被害を与えている事を。
 この怪物が一匹では無い事を、わかっていなければならなかったのだ。
 だが兵士の手は動いてくれなかった。そこに伝えるべき闘志がもはや無かった。
 湧き上がる思いはただ一つ。
(もう駄目だ……)

 意思をなくした兵士の目は、迫る侵略者どもとその後ろで吠える魔竜を映してはいた。
 敵の哄笑や咆哮が通信機ごしに聞こえてはいた。
『まだだ! まだ終わってねぇ!』
 そう叫ぶ【リバーサル】リーダーの声も。
 それらが彼の闘志を蘇らせる事は無かったが。


 しかし絶望の淵の中、凛と響く女の声が一つ!
『ブレイズプラズマーー!!』
 モニターの戦場MAPに新たな機影が映っている事に気付いた時、戦場を幾条もの熱線が走った。
 熱線は魔王軍残党の機体を次々と打つ!

「な、なんだあの機体!?」
 うろたえる味方の声。
 兵士は見た。
 新たに現れた機体は二足歩行のテントウムシのような重装甲機である事。
 その隣にはもう一機、胸に獅子の顔をもつ有翼の戦士機がいる事を。

『ガイ! 今だ』
 凛と響く女の声。そして続く、無機質に何かを読み上げる声。
『レイニーウェザー。サンダークラウド』

【レイニーウェザー】大気領域第4レベルの呪文。暗雲を召喚し、雨を降らせる。
【サンダークラウド】大気領域6レベルの攻撃呪文。雷雲が頭上に生じ、そこからの落雷が範囲内の敵を一掃する。

 そして力強く響く青少年の声!
合成発動アマルガム……サンダーストーム!!』


 雷鳴が轟いた! 天を見上げれば黒雲が立ち込めていた。
 雨が降る。突然に、大量の雨が。
 そして雷が鳴った。幾条もの雷が降り注ぎ、雨の中を荒れ狂う!
 雷は雲の下にいた魔王軍残党の機体を撃ち抜いた。あちこちで起こる激しい爆発。そして水浸しになった地面を伝わり、雷を受けなかった機体を下から焼いた。
 天にも地にも逃げ場無し。黒雲の下にあるのは暴風と雷雨、そして爆発、絶命する者達の断末魔!

 兵士は知った。
 眼前で焼き払われる敵に比べれば、先刻までの己の絶望など、温い陽だまりの中も同然だったのだと。

 実際にはほんの数分の事だったろう。雷雨が止んだ。
 濡れた大地の上に煙をあげる無数の残骸。その中に動くのは魔竜のみ。
 だが全身が砕け、もはや吠える事さえできない。弱々しくかろうじて緩慢に動くだけだ。
 次の瞬間、その頭部が熱線によって砕き散らされた。


 2機のケイオス・ウォリアーが煙の立ち昇る大地を歩いて来る。背後にはゾウムシ型の運搬機が一機。
「なんなんだ、あれは……」
 己らの救世主を呆けながら見る兵士の口から漏れたのは、およそ感謝や喜びとは程遠い言葉だった。

 ゾウムシの運搬機から通信が響き渡る。
『ケイト帝国の第一皇女シャンリー=ダーが、今帰還しました。開門なさい』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき
ファンタジー
冒険者ナザルは油使い。 魔力を油に変換し、滑らせたり燃やしたりできるユニークスキル持ちだ。 その特殊な能力ゆえ、冒険者パーティのメインメンバーとはならず、様々な状況のピンチヒッターをやって暮らしている。 実は、ナザルは転生者。 とある企業の中間管理職として、人間関係を良好に保つために組織の潤滑油として暗躍していた。 ひょんなことから死んだ彼は、異世界パルメディアに転生し、油使いナザルとなった。 冒険者の街、アーランには様々な事件が舞い込む。 それに伴って、たくさんの人々がやってくる。 もちろん、それだけの数のトラブルも来るし、いざこざだってある。 ナザルはその能力で事件解決の手伝いをし、生前の潤滑油スキルで人間関係改善のお手伝いをする。 冒険者に、街の皆さん、あるいはギルドの隅にいつもいる、安楽椅子冒険者のハーフエルフ。 ナザルと様々なキャラクターたちが織りなす、楽しいファンタジー日常劇。

{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜

Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。 だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。 赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。 前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、 今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。 記憶を失ったふりをしながら、 静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。 しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。 ――これは復讐でも、救済でもない。 自由を求めただけの少年が、 やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。 最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。 重複投稿作品です 小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...