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第一章:魔剣いっこ拾う
とても困る仲間ができた日
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灰色のローブで体を、フードで頭部を隠した人影。
背丈も体格も並、体つきに凡そ特徴らしい特徴は無い。それは「フェフェフェ……」と奇怪な笑い声を漏らし、バルチェ達を指さした。
「聖魔剣士たち。貴様らが今日まで生きていたのは、魔王軍が本気で殺しにこなかったが故の事と知れ。だがそれも昨日までの話よ」
店内がどよめく。
しかしこの店にいる者の大半は冒険者だ。A級やB級のパーティともなれば、魔王軍の尖兵を何度も討伐している。
彼らは武器を手にし、呪文のため精神を集中し始めた。
「始まるぞ」
オウガが呟いた。
そして、ギルド本部店が爆発した!
バルチェは見た。こちらを指していた相手の指先が一瞬輝くのを。その指一本で吹き飛んだのだ。
セキセー国有数の大都市ダイラ、その冒険者ギルド本部店が。この近隣で最高の腕を誇る冒険者達の集まる店が。
二階から上は完全に無くなり、一階の壁も大半が消し飛んでいる。
残った壁も柱も床も黒焦げで、無数の煙が立ち昇っていた。
人は軒並み倒れ、ある者は砕けた鎧の中で動かず、またある者は煤だらけの体で呻いている。
その中に、ザーゴルの支援者だったギルド高官の姿もあった。
この日、ダイラの冒険者ギルドはしばらく活動できなくなる大打撃を受けた。
しかし無傷の者も極僅かながら居た。
「大丈夫ですか、バルチェ」
バルチェを抱きかかえるようにして訊ねるアーサー。
目を丸くしながらバルチェは頷いた。
「あ、うん。アーサーさんが助けてくれたから。でも……人を盾にするのはどうかと……」
二人の側で鎧の吹き飛んだ戦闘士のバサルスが痙攣している。
嗚呼、無残。
だがアーサーはそれを一瞥もしない。
「身をかわしたら彼の後ろだっただけです。私は彼が逃げる邪魔を何もしていませんから。無罪の私よりも、ご覧なさい……あれを」
『なんだか納得しにくい言い分ね……』
ラザリアが剣の内からそう言うのを無視し、アーサーは店の外を指さした。
ギルド本部店の後ろは大きな採石場になっていた。すり鉢状の谷底に人影が二つ。
フードローブの人物と、オウガだ!
「聖魔剣士がこの程度では死なんか。ならば我が全力を見せてやろう!」
フードローブの人物がそれを脱ぎ捨てた。
身の丈2mを超える屈強な大男。それを覆うは肌に密着した闘衣。
不敵な笑みを浮かべる力強い顔に、獣を象った兜。そこから生える巨大な二本の捻くれた角は装飾などではない……紛う事なき本物の、この男から生えた角だ。
その怪人を店の焼け跡から見て呟くバルチェ。
「魔族……なのかな? ラザリア、能力を見る魔法は使える?」
『まぁやってみるけど……』
剣の内から答える声とともに、刃の前に小さな魔法陣が生じた。それを透かして怪人を見ると様々な数値が映る。
『よし、この姿でも魔法は使えるわ』
少し嬉しそうなラザリア。
発動したのは【スキャニング】の呪文。敵の能力やステータスを数値化・表示する魔法である。特に敵レベルの査定は重要だ。
歴史上、魔王を名乗る魔術師や魔物が何度か現われた。
記録の最初期に現われた魔王を倒した英雄達はレベル13程度だったという。
しかし次に現れる魔王は英雄達に敗れぬよう、さらに強大な力をもって現われた。
それを破る勇者たちは過去の英雄よりさらに力をつけ、次の魔王はさらに強大となり、打ち勝つために勇者達は……。
時代の進歩とともに光と闇の戦いは激しさを増し、レベルは15、20、25、30……と上がり、前回魔王を名乗った邪神官を倒した勇者たちはレベル60だったと伝えられている。
バルチェ達もレベル30は超え、大昔の魔王になら勝てるとリーダーのザーゴルは言い切っていた。
現魔王軍相手でも、幹部ぐらいならもう討ちとれるだろうとも。
そして魔法陣に映った刺客のレベルは――
『え!? あ? レベル、1023!?』
「ええええ!? 嘘!」
驚愕するラザリア、信じられないバルチェ。
そんな数値はあり得ない! まさしくケタ違い!
谷底で怪人が笑う。
「オレは魔王軍・超魔神大隊最強の戦士、ダイコーン! 聖魔剣士ども、貴様らは今日で終わりだ!」
確かに、ここで終わりだろう……。
だがオウガは――ふん、と面白くもなさそうに呟く。
「いずれ戦いの中で終わる身。それがここでも構わんが……貴様にできるのか?」
オウガは剣を取り出し、抜いた。
銀に輝く曇りなき刃。その峰には紅く透き通った太いラインが一筋。それは燃え上がる炎のような煌めきを放っていた。
「あれは! オウガさんも聖魔剣士だったの!?」
驚愕するバルチェ。アーザーがメガネをくいくいと人差し指で弄ぶ。
「フッ……そう、あれも聖魔剣の一つ。その名はヘルフェニックス!」
『いやいや、あの剣どこから出したのよ? それにあいつ戦士系クラスなの? 武闘家じゃないの?』
ラザリアが剣から叫んだ。
だがその間に、オウガは剣を己の前に、刃を天に向けて構える。
「覚醒! 装着!」
その一声で全身が炎に包まれた!
その炎が収まった時、オウガは鎧を纏っていた。
決して重装備ではない――上半身、肩、腕、脚、そして頭。二の腕や腿には無い。
だがそれら防具は剣同様、銀に輝き紅の紋様が施されていた。
そして剣は……オウガが鞘に収め、背負ってしまう。
『仕舞うんかい!』
ラザリアの声が聞こえる筈の無い距離だが、オウガは身構えた。
「武器は使わない。カラテだ! 俺は地上最強の男! どんな相手も1ターンで地獄へ送る事ができる!」
カラテカ! それは武闘家系上級クラスの一つ!
カラテ――大半のマーシャルアーツの源流であり、その起源は一万年以上昔、神話の時代にさえ遡る事が古墳の壁画により証明されている。
神々の峰と呼ばれる霊山のどこかには発祥の地となったドージョーテンプル・醍母栖館があり、そこでは天下無敵とならんがために大陸中から集まったカラテモンク達が日夜修業に励んでいるのだ。
技を極め下山するのは千人に一人とも万人に一人とも……だがマスターの段位を許されたタツジン達はそのクビキリジュツによりあらゆる敵の急所を破壊し、手刀の一閃で巨人を屠り、抜き手の一撃で上級悪魔をも絶命させる。
真のカラテを極めた腕は神の手と呼ぶ以外にないであろう――
(古代網躁賢者学院刊行「極闘の拳」より)
「フェフェフェ……口でならなんとでも言えるがな?」
せせら笑うダイコーン。
そして吠えた!
「ランペイジブレイザー!!」
角と両腕から光線が迸る!
「む……! この店を吹き飛ばした光線は指一本で放ったもの。それを両手から、つまり10倍の威力! 両角からも同等の威力ならばさらに10倍をプラス!」
アーサーが鋭い目で威力を的確に見抜く。
告げられた威力に恐れ慄き、バルチェはオウガへ「逃げて」と叫ぼうとした。
だが声になる前に光線はオウガを撃った!
「なにィ!?」
しかし……驚愕の声はダイコーンからだ。
必殺の光線は、なんと片手で止められていた! 四本のその全てが!
「フッ……笑止。俺は不死鳥! 終わらせる事など地獄の閻魔にもできん。聞くか……火の鳥が天に叫ぶ声を!」
そしてオウガは真正面に正拳突きを打つ――!
「乱凰飛翔拳――!!」
必殺の一打! 技の名前を掛け声に炸裂!
DOGOOOOOOOOOOOOOON!
哀れ魔物は真正面から打ち抜かれ、あまりの威力にその体が真上に吹き飛んだ!
「フェフェーッ!」
断末魔!
天に絶叫を轟かせた後、頭を真下にして落下!
地面に激突!
巨大なクレーターを穿ち、その真ん中で躯がブスブスと煙をあげた。
スゴイ威力!
オウガはくるりと背を向る。
それを【スキャニング】で見ていたラザリアが、呆けたような呟きを漏らした。
『レベル……きゅうじゅうごまん……』
950000。
初めて見る数値が魔法陣に映っていた。
「もう全部あの人だけでいいんじゃ……」
バルチェも呆けた面持ちで呟いた。
オウガが跳んだ。一跳びで店の焼け跡に着地する。
バルチェの目の前で鎧が剥がれ落ちた。それらは床に落ちると光の粒子となって消える。
呆然と見つめるバルチェの前でオウガは微笑んだ。
「では行くか。魔王の居城へな」
「いやいやいや、無理無理無理です! やめてください死んでしまいます!」
首を千切れんばかりにぶんぶん振るバルチェ。
レベル千だの万だのに付き合ってはいられない。
そんな彼の後ろで、燃え残った壁に器用にもたれてアーサーが笑う。
「ご安心を。君も聖魔剣の伝説はいくつか知っているでしょう。語られている者は皆、その当時最強の勇者となっています。君もそうなれるという事ですよ」
「そ、そうなの?」
安心と期待感がバルチェを慰める。
オウガが頷いた。
「うむ。極限の戦いで聖魔剣士は無敵の存在になるのだ。なれなかった奴は消えるからな」
『ちょい待ちい! それは死んだ奴が語られてないから最強の奴だけが伝説に残ってるんでしょうが!』
ラザリアが剣から怒鳴った。
だがオウガは微笑みながらバルチェの肩に手を置く。
「フッ……地獄への旅に、馬鹿が三人もよく揃ったものだ」
「え? いやいやいや僕は……」
叫ぼうとするバルチェの肩にアーサーも手を置いた。
「フフ……賢くなるだけが生き方ではありますまい」
三人は揃って夕陽の方を向く。
肩から手を離してもらえないバルチェ含む。
「行くぞ!」
オウガの声と共に、三人の聖魔剣士が焼け跡から旅立った。
引きずられるバルチェ含む。
この時代で最も恐るべき戦いが始まった。
雷鳴は轟く!
『だから地方ギルドで便利屋さんをやってれば良かったのに……戦うの、向かないんだから……』
ラザリアが剣の内から呟いたが、はて、バルチェに聞こえたかどうか。
背丈も体格も並、体つきに凡そ特徴らしい特徴は無い。それは「フェフェフェ……」と奇怪な笑い声を漏らし、バルチェ達を指さした。
「聖魔剣士たち。貴様らが今日まで生きていたのは、魔王軍が本気で殺しにこなかったが故の事と知れ。だがそれも昨日までの話よ」
店内がどよめく。
しかしこの店にいる者の大半は冒険者だ。A級やB級のパーティともなれば、魔王軍の尖兵を何度も討伐している。
彼らは武器を手にし、呪文のため精神を集中し始めた。
「始まるぞ」
オウガが呟いた。
そして、ギルド本部店が爆発した!
バルチェは見た。こちらを指していた相手の指先が一瞬輝くのを。その指一本で吹き飛んだのだ。
セキセー国有数の大都市ダイラ、その冒険者ギルド本部店が。この近隣で最高の腕を誇る冒険者達の集まる店が。
二階から上は完全に無くなり、一階の壁も大半が消し飛んでいる。
残った壁も柱も床も黒焦げで、無数の煙が立ち昇っていた。
人は軒並み倒れ、ある者は砕けた鎧の中で動かず、またある者は煤だらけの体で呻いている。
その中に、ザーゴルの支援者だったギルド高官の姿もあった。
この日、ダイラの冒険者ギルドはしばらく活動できなくなる大打撃を受けた。
しかし無傷の者も極僅かながら居た。
「大丈夫ですか、バルチェ」
バルチェを抱きかかえるようにして訊ねるアーサー。
目を丸くしながらバルチェは頷いた。
「あ、うん。アーサーさんが助けてくれたから。でも……人を盾にするのはどうかと……」
二人の側で鎧の吹き飛んだ戦闘士のバサルスが痙攣している。
嗚呼、無残。
だがアーサーはそれを一瞥もしない。
「身をかわしたら彼の後ろだっただけです。私は彼が逃げる邪魔を何もしていませんから。無罪の私よりも、ご覧なさい……あれを」
『なんだか納得しにくい言い分ね……』
ラザリアが剣の内からそう言うのを無視し、アーサーは店の外を指さした。
ギルド本部店の後ろは大きな採石場になっていた。すり鉢状の谷底に人影が二つ。
フードローブの人物と、オウガだ!
「聖魔剣士がこの程度では死なんか。ならば我が全力を見せてやろう!」
フードローブの人物がそれを脱ぎ捨てた。
身の丈2mを超える屈強な大男。それを覆うは肌に密着した闘衣。
不敵な笑みを浮かべる力強い顔に、獣を象った兜。そこから生える巨大な二本の捻くれた角は装飾などではない……紛う事なき本物の、この男から生えた角だ。
その怪人を店の焼け跡から見て呟くバルチェ。
「魔族……なのかな? ラザリア、能力を見る魔法は使える?」
『まぁやってみるけど……』
剣の内から答える声とともに、刃の前に小さな魔法陣が生じた。それを透かして怪人を見ると様々な数値が映る。
『よし、この姿でも魔法は使えるわ』
少し嬉しそうなラザリア。
発動したのは【スキャニング】の呪文。敵の能力やステータスを数値化・表示する魔法である。特に敵レベルの査定は重要だ。
歴史上、魔王を名乗る魔術師や魔物が何度か現われた。
記録の最初期に現われた魔王を倒した英雄達はレベル13程度だったという。
しかし次に現れる魔王は英雄達に敗れぬよう、さらに強大な力をもって現われた。
それを破る勇者たちは過去の英雄よりさらに力をつけ、次の魔王はさらに強大となり、打ち勝つために勇者達は……。
時代の進歩とともに光と闇の戦いは激しさを増し、レベルは15、20、25、30……と上がり、前回魔王を名乗った邪神官を倒した勇者たちはレベル60だったと伝えられている。
バルチェ達もレベル30は超え、大昔の魔王になら勝てるとリーダーのザーゴルは言い切っていた。
現魔王軍相手でも、幹部ぐらいならもう討ちとれるだろうとも。
そして魔法陣に映った刺客のレベルは――
『え!? あ? レベル、1023!?』
「ええええ!? 嘘!」
驚愕するラザリア、信じられないバルチェ。
そんな数値はあり得ない! まさしくケタ違い!
谷底で怪人が笑う。
「オレは魔王軍・超魔神大隊最強の戦士、ダイコーン! 聖魔剣士ども、貴様らは今日で終わりだ!」
確かに、ここで終わりだろう……。
だがオウガは――ふん、と面白くもなさそうに呟く。
「いずれ戦いの中で終わる身。それがここでも構わんが……貴様にできるのか?」
オウガは剣を取り出し、抜いた。
銀に輝く曇りなき刃。その峰には紅く透き通った太いラインが一筋。それは燃え上がる炎のような煌めきを放っていた。
「あれは! オウガさんも聖魔剣士だったの!?」
驚愕するバルチェ。アーザーがメガネをくいくいと人差し指で弄ぶ。
「フッ……そう、あれも聖魔剣の一つ。その名はヘルフェニックス!」
『いやいや、あの剣どこから出したのよ? それにあいつ戦士系クラスなの? 武闘家じゃないの?』
ラザリアが剣から叫んだ。
だがその間に、オウガは剣を己の前に、刃を天に向けて構える。
「覚醒! 装着!」
その一声で全身が炎に包まれた!
その炎が収まった時、オウガは鎧を纏っていた。
決して重装備ではない――上半身、肩、腕、脚、そして頭。二の腕や腿には無い。
だがそれら防具は剣同様、銀に輝き紅の紋様が施されていた。
そして剣は……オウガが鞘に収め、背負ってしまう。
『仕舞うんかい!』
ラザリアの声が聞こえる筈の無い距離だが、オウガは身構えた。
「武器は使わない。カラテだ! 俺は地上最強の男! どんな相手も1ターンで地獄へ送る事ができる!」
カラテカ! それは武闘家系上級クラスの一つ!
カラテ――大半のマーシャルアーツの源流であり、その起源は一万年以上昔、神話の時代にさえ遡る事が古墳の壁画により証明されている。
神々の峰と呼ばれる霊山のどこかには発祥の地となったドージョーテンプル・醍母栖館があり、そこでは天下無敵とならんがために大陸中から集まったカラテモンク達が日夜修業に励んでいるのだ。
技を極め下山するのは千人に一人とも万人に一人とも……だがマスターの段位を許されたタツジン達はそのクビキリジュツによりあらゆる敵の急所を破壊し、手刀の一閃で巨人を屠り、抜き手の一撃で上級悪魔をも絶命させる。
真のカラテを極めた腕は神の手と呼ぶ以外にないであろう――
(古代網躁賢者学院刊行「極闘の拳」より)
「フェフェフェ……口でならなんとでも言えるがな?」
せせら笑うダイコーン。
そして吠えた!
「ランペイジブレイザー!!」
角と両腕から光線が迸る!
「む……! この店を吹き飛ばした光線は指一本で放ったもの。それを両手から、つまり10倍の威力! 両角からも同等の威力ならばさらに10倍をプラス!」
アーサーが鋭い目で威力を的確に見抜く。
告げられた威力に恐れ慄き、バルチェはオウガへ「逃げて」と叫ぼうとした。
だが声になる前に光線はオウガを撃った!
「なにィ!?」
しかし……驚愕の声はダイコーンからだ。
必殺の光線は、なんと片手で止められていた! 四本のその全てが!
「フッ……笑止。俺は不死鳥! 終わらせる事など地獄の閻魔にもできん。聞くか……火の鳥が天に叫ぶ声を!」
そしてオウガは真正面に正拳突きを打つ――!
「乱凰飛翔拳――!!」
必殺の一打! 技の名前を掛け声に炸裂!
DOGOOOOOOOOOOOOOON!
哀れ魔物は真正面から打ち抜かれ、あまりの威力にその体が真上に吹き飛んだ!
「フェフェーッ!」
断末魔!
天に絶叫を轟かせた後、頭を真下にして落下!
地面に激突!
巨大なクレーターを穿ち、その真ん中で躯がブスブスと煙をあげた。
スゴイ威力!
オウガはくるりと背を向る。
それを【スキャニング】で見ていたラザリアが、呆けたような呟きを漏らした。
『レベル……きゅうじゅうごまん……』
950000。
初めて見る数値が魔法陣に映っていた。
「もう全部あの人だけでいいんじゃ……」
バルチェも呆けた面持ちで呟いた。
オウガが跳んだ。一跳びで店の焼け跡に着地する。
バルチェの目の前で鎧が剥がれ落ちた。それらは床に落ちると光の粒子となって消える。
呆然と見つめるバルチェの前でオウガは微笑んだ。
「では行くか。魔王の居城へな」
「いやいやいや、無理無理無理です! やめてください死んでしまいます!」
首を千切れんばかりにぶんぶん振るバルチェ。
レベル千だの万だのに付き合ってはいられない。
そんな彼の後ろで、燃え残った壁に器用にもたれてアーサーが笑う。
「ご安心を。君も聖魔剣の伝説はいくつか知っているでしょう。語られている者は皆、その当時最強の勇者となっています。君もそうなれるという事ですよ」
「そ、そうなの?」
安心と期待感がバルチェを慰める。
オウガが頷いた。
「うむ。極限の戦いで聖魔剣士は無敵の存在になるのだ。なれなかった奴は消えるからな」
『ちょい待ちい! それは死んだ奴が語られてないから最強の奴だけが伝説に残ってるんでしょうが!』
ラザリアが剣から怒鳴った。
だがオウガは微笑みながらバルチェの肩に手を置く。
「フッ……地獄への旅に、馬鹿が三人もよく揃ったものだ」
「え? いやいやいや僕は……」
叫ぼうとするバルチェの肩にアーサーも手を置いた。
「フフ……賢くなるだけが生き方ではありますまい」
三人は揃って夕陽の方を向く。
肩から手を離してもらえないバルチェ含む。
「行くぞ!」
オウガの声と共に、三人の聖魔剣士が焼け跡から旅立った。
引きずられるバルチェ含む。
この時代で最も恐るべき戦いが始まった。
雷鳴は轟く!
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