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6話 ツキと六文銭
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結婚式はもうはじまったのだろうか。
やけにくっついて歩こうとするヴェスナにげんなりして、廊下に出てからは見るとはなしに窓外を眺めていた。
中庭には先程までなかったはずの長テーブルが並んでいる。キャンドルの明かりも灯されつつあり、作業に勤しむその女性の姿を見て晴澄が顔を背けるより早く、ガラス越しに視線がかちあってしまった。
──藍沢だ。
彼女は彼女で晴澄に寄り添う男の存在に気付き、真顔で瞬きを繰り返していたが、やがて我に返ったように会釈をしてみせる。
「知り合いか?」
「……結婚式の……」
「相手か。手っ取り早く破談にできてよかったな」
そういう関係ではないしそういう話でもないが、彼の悪趣味な冗談に付き合っていてはキリがない。
藍沢ともこれ以上関わり合いになるつもりはなく、いきいきと手を振ろうとするヴェスナの腕を引っ掴んで、表通りへ連れ出した。
「それで……目当てでもあるのか」
温泉街で温泉以外のものを挙げるなら、景色か民芸品か食事かといったところだ。しかしヴェスナがそれらを好むという話は聞いたことがないし、食事に至っては精液以外を口にしているのを見たことがなかった。
「特にない。おまえは?」
「ない。帰るか」
「そうはいくか。適当にぶらつくぞ」
「はあ……」
彼の華美な外見、異質な気配は注目を集める。往来で彼の隣に立つことは可能なかぎり避けたいというのが晴澄の本心だ。今日も道々どれほど気詰まりだったか。地元ではゲイだと認識されるのが困るのだが、旅先だからといって許容できるものでもない。道行く人すべてに見つめられるような居心地の悪さを好んで味わいたい者はいないだろう。
要するに、流されてここまで来たものの、晴澄がヴェスナとの散策を楽しめるわけはないのだった。
「……」
歩道のレンガの隙間を意味もなく視線でなぞる。
こうして連れ立って歩く、肌寒く息苦しいだけの時間が何を生むというのだ。ヴェスナが言い出した以上、彼にとっては有益になりうるのだろうか。それとも晴澄を針の筵に座らせること自体が目的なのか。
「ハール。警戒しすぎだ」
商店街とは逆方向に川沿いを進んでしばらく。周囲に人気がなくなってもろくに目を合わせない晴澄に痺れを切らしたか、ヴェスナが大きな溜息をついた。
「旅行に来てからおれがおまえに何をした?」
「されてないから警戒してるんだが」
「されたいのか。難儀なやつ」
冷やかすのではなく心底不服そうに肩を竦め、彼は足を止める。
晴澄としてはこのまま置き去りにしてもよかったのだが、それこそ面倒な事態に発展しかねないので、少し距離を作ってから振り返ることにした。
逡巡ののち、胸裡でくすぶっている違和感を口に上らせる。
「……お前がここにいるのは心を開くためだ。いつも訳知り顔でいらんことをするくせに、こういう特別な機会に何もしてこないほうがおかしい」
「おまえ自身、波風が立つことを望んではいないのにか。穏やかで円満な──まるで恋人同士のような旅ではいけないと?」
薄ら寒いその表現に、ぞわりと肌が粟立つ。
企んでいたのはそれか。なぜ今になって──いや、初めての出会いから時が経過し、晴澄が彼のいる生活に慣れた今だからだ。彼に対する信頼も執着もないが、他人とは違う特別な情が芽生えつつあることは、さすがに晴澄も自覚している。きっとヴェスナはそこに付け入るつもりなのだ。
しかし、これは断じて恋や愛ではない。互いを理解することで生じた余裕のようなものである。
「白々しいだけだろう、恋人同士になる気もないのに。お前だってそんな展開は願い下げのはずだ」
「む。誤解しているようだな」
夜風に煽られる金髪を掻き上げ、ヴェスナはゆったりと微笑んでみせる。
「なれるものならなりたいとも。おまえが恋人の肩書きを敬遠するから、無理じいはしないだけさ」
この世のものではない美しい造形。
深淵のような瞳孔が細まりさえすれば、晴澄とて見惚れることくらいはできたかもしれない。
日が落ちたとはいえ、春はすぐそこなのに、心臓が凍りついていく。
「セックスの相性もあるがな。まあそれを抜きにしても、おれにはおまえのかわいくないところがかわいく思えるし、おまえが欲するものは何だって与えてやりたい。ああ、あまりに当たり前すぎて口にしたことはなかったか」
晴澄の左胸に指を突き立て。
ヴェスナは事もなげに、鉛玉のような言葉を放った。
「おれはおまえが好きだよ、ハル」
──おそらく、呼吸を忘れていた。
車の走行音で体がその機能を思い出し、一気に肺を満たしたぬるい空気に吐き気を催しながら、どうにか首を横に振る。
「今は……熱に浮かされているんだろう。お前に心を開かない人間が貴重だから。いつかはどこかへ消え去るに決まってる」
『おれはおまえの傍を離れない──おまえが心を“開く”まで、な』
そう、あの日の一方的な誓いも期限付きだ。
所詮晴澄など、一時の退屈を慰める玩具に過ぎない──はずなのだ。
彼が実際にそう語ったかどうかは、定かではない。
「いつかはどこかへ、なあ」
胸に触れたままの掌を晴澄の首まで這わせ、ヴェスナは笑う。高慢に一笑してくれればいいものを、なぜか子どもを宥めるように優しく。
「人の終わりを誰よりもよく知っているおまえがそれを言っても仕方あるまいに。あるいは知っているから保証を求めるのか?」
「……どういう意味だ」
「いくら愛し合う仲であろうと、いつかどこかで別れは来る。命ある者はいずれ死ぬのだからな」
酷い詭弁だ。結果は同じだとしても、変わりゆく心と避けられない死を同列に語るのは間違っている。
それでも、頬へと伸ばされるあたたかな手を振り払えずにいた。
迫るのは星屑が躍る紫眼。
宇宙の双眸を通して見る世界は、きっと晴澄と同じ形をしてはいないのだろう。
身動きすることも目を逸らすことも許されず、甘やかな彼の香りに包まれる。
「ハル。おれはおまえの傍を離れない。おまえが■の■■を■■て心を閉ざすのなら──おまえの命があるかぎり、恋人として寄り添うことを約束してもいい」
「……?」
今、何を言ったのだ、この男は。
異郷の言語であるかのように、理解が滞る。
「ん? おいハル、聞こえて……っ」
今度は明確にヴェスナの声を遮るものがあった。
ドン、という地響きのような音。
続いて、視界が明るくなる。
「な……」
すっかり暗くなった空に広がるのは、色とりどりの花火だった。方向からして川の下流で打ち上げられているようだ。
街は花火大会を控えているような雰囲気ではなかったので、考えられるのは──
「……そうか、結婚式の」
先程ヴェスナの言葉が理解できなかったのも、花火の音できちんと聞き取れなかったせいなのかもしれない。
現実に引き戻されたかのような、地に足のついた感覚。四肢は自由に動き、呼吸も規則的だ。祝いの演出を歓迎できはしないが、目覚ましとして役立ったことには感謝しかない。
だが次の瞬間、花火とは別のもので聴覚を奪われていた。
「ハル」
両手で耳を塞がれ、唇に噛みつかれる。
むくれた表情がカラフルな空の光に照り映えて、どこか滑稽だった。
「返答の前に余所見とはな」
「……何を言ったか聞こえなかったんだが」
「この野郎。恋人がほしいならおれがなってやると言ったのだ」
省略しすぎではないだろうか。ほかにもごちゃごちゃ何か言っていた気がする。端的にまとめられるなら最初からそうしてほしい。
疑問と不満は残るものの、それが本題なのであれば、答えは簡単だ。
「友人としてもお断りだ」
「よーし、宿に戻っても抱かせてやらん」
頭突きは痛かったが、「家に戻っても」ではないことに、わずかにほっとしている自分がいた。
やけにくっついて歩こうとするヴェスナにげんなりして、廊下に出てからは見るとはなしに窓外を眺めていた。
中庭には先程までなかったはずの長テーブルが並んでいる。キャンドルの明かりも灯されつつあり、作業に勤しむその女性の姿を見て晴澄が顔を背けるより早く、ガラス越しに視線がかちあってしまった。
──藍沢だ。
彼女は彼女で晴澄に寄り添う男の存在に気付き、真顔で瞬きを繰り返していたが、やがて我に返ったように会釈をしてみせる。
「知り合いか?」
「……結婚式の……」
「相手か。手っ取り早く破談にできてよかったな」
そういう関係ではないしそういう話でもないが、彼の悪趣味な冗談に付き合っていてはキリがない。
藍沢ともこれ以上関わり合いになるつもりはなく、いきいきと手を振ろうとするヴェスナの腕を引っ掴んで、表通りへ連れ出した。
「それで……目当てでもあるのか」
温泉街で温泉以外のものを挙げるなら、景色か民芸品か食事かといったところだ。しかしヴェスナがそれらを好むという話は聞いたことがないし、食事に至っては精液以外を口にしているのを見たことがなかった。
「特にない。おまえは?」
「ない。帰るか」
「そうはいくか。適当にぶらつくぞ」
「はあ……」
彼の華美な外見、異質な気配は注目を集める。往来で彼の隣に立つことは可能なかぎり避けたいというのが晴澄の本心だ。今日も道々どれほど気詰まりだったか。地元ではゲイだと認識されるのが困るのだが、旅先だからといって許容できるものでもない。道行く人すべてに見つめられるような居心地の悪さを好んで味わいたい者はいないだろう。
要するに、流されてここまで来たものの、晴澄がヴェスナとの散策を楽しめるわけはないのだった。
「……」
歩道のレンガの隙間を意味もなく視線でなぞる。
こうして連れ立って歩く、肌寒く息苦しいだけの時間が何を生むというのだ。ヴェスナが言い出した以上、彼にとっては有益になりうるのだろうか。それとも晴澄を針の筵に座らせること自体が目的なのか。
「ハール。警戒しすぎだ」
商店街とは逆方向に川沿いを進んでしばらく。周囲に人気がなくなってもろくに目を合わせない晴澄に痺れを切らしたか、ヴェスナが大きな溜息をついた。
「旅行に来てからおれがおまえに何をした?」
「されてないから警戒してるんだが」
「されたいのか。難儀なやつ」
冷やかすのではなく心底不服そうに肩を竦め、彼は足を止める。
晴澄としてはこのまま置き去りにしてもよかったのだが、それこそ面倒な事態に発展しかねないので、少し距離を作ってから振り返ることにした。
逡巡ののち、胸裡でくすぶっている違和感を口に上らせる。
「……お前がここにいるのは心を開くためだ。いつも訳知り顔でいらんことをするくせに、こういう特別な機会に何もしてこないほうがおかしい」
「おまえ自身、波風が立つことを望んではいないのにか。穏やかで円満な──まるで恋人同士のような旅ではいけないと?」
薄ら寒いその表現に、ぞわりと肌が粟立つ。
企んでいたのはそれか。なぜ今になって──いや、初めての出会いから時が経過し、晴澄が彼のいる生活に慣れた今だからだ。彼に対する信頼も執着もないが、他人とは違う特別な情が芽生えつつあることは、さすがに晴澄も自覚している。きっとヴェスナはそこに付け入るつもりなのだ。
しかし、これは断じて恋や愛ではない。互いを理解することで生じた余裕のようなものである。
「白々しいだけだろう、恋人同士になる気もないのに。お前だってそんな展開は願い下げのはずだ」
「む。誤解しているようだな」
夜風に煽られる金髪を掻き上げ、ヴェスナはゆったりと微笑んでみせる。
「なれるものならなりたいとも。おまえが恋人の肩書きを敬遠するから、無理じいはしないだけさ」
この世のものではない美しい造形。
深淵のような瞳孔が細まりさえすれば、晴澄とて見惚れることくらいはできたかもしれない。
日が落ちたとはいえ、春はすぐそこなのに、心臓が凍りついていく。
「セックスの相性もあるがな。まあそれを抜きにしても、おれにはおまえのかわいくないところがかわいく思えるし、おまえが欲するものは何だって与えてやりたい。ああ、あまりに当たり前すぎて口にしたことはなかったか」
晴澄の左胸に指を突き立て。
ヴェスナは事もなげに、鉛玉のような言葉を放った。
「おれはおまえが好きだよ、ハル」
──おそらく、呼吸を忘れていた。
車の走行音で体がその機能を思い出し、一気に肺を満たしたぬるい空気に吐き気を催しながら、どうにか首を横に振る。
「今は……熱に浮かされているんだろう。お前に心を開かない人間が貴重だから。いつかはどこかへ消え去るに決まってる」
『おれはおまえの傍を離れない──おまえが心を“開く”まで、な』
そう、あの日の一方的な誓いも期限付きだ。
所詮晴澄など、一時の退屈を慰める玩具に過ぎない──はずなのだ。
彼が実際にそう語ったかどうかは、定かではない。
「いつかはどこかへ、なあ」
胸に触れたままの掌を晴澄の首まで這わせ、ヴェスナは笑う。高慢に一笑してくれればいいものを、なぜか子どもを宥めるように優しく。
「人の終わりを誰よりもよく知っているおまえがそれを言っても仕方あるまいに。あるいは知っているから保証を求めるのか?」
「……どういう意味だ」
「いくら愛し合う仲であろうと、いつかどこかで別れは来る。命ある者はいずれ死ぬのだからな」
酷い詭弁だ。結果は同じだとしても、変わりゆく心と避けられない死を同列に語るのは間違っている。
それでも、頬へと伸ばされるあたたかな手を振り払えずにいた。
迫るのは星屑が躍る紫眼。
宇宙の双眸を通して見る世界は、きっと晴澄と同じ形をしてはいないのだろう。
身動きすることも目を逸らすことも許されず、甘やかな彼の香りに包まれる。
「ハル。おれはおまえの傍を離れない。おまえが■の■■を■■て心を閉ざすのなら──おまえの命があるかぎり、恋人として寄り添うことを約束してもいい」
「……?」
今、何を言ったのだ、この男は。
異郷の言語であるかのように、理解が滞る。
「ん? おいハル、聞こえて……っ」
今度は明確にヴェスナの声を遮るものがあった。
ドン、という地響きのような音。
続いて、視界が明るくなる。
「な……」
すっかり暗くなった空に広がるのは、色とりどりの花火だった。方向からして川の下流で打ち上げられているようだ。
街は花火大会を控えているような雰囲気ではなかったので、考えられるのは──
「……そうか、結婚式の」
先程ヴェスナの言葉が理解できなかったのも、花火の音できちんと聞き取れなかったせいなのかもしれない。
現実に引き戻されたかのような、地に足のついた感覚。四肢は自由に動き、呼吸も規則的だ。祝いの演出を歓迎できはしないが、目覚ましとして役立ったことには感謝しかない。
だが次の瞬間、花火とは別のもので聴覚を奪われていた。
「ハル」
両手で耳を塞がれ、唇に噛みつかれる。
むくれた表情がカラフルな空の光に照り映えて、どこか滑稽だった。
「返答の前に余所見とはな」
「……何を言ったか聞こえなかったんだが」
「この野郎。恋人がほしいならおれがなってやると言ったのだ」
省略しすぎではないだろうか。ほかにもごちゃごちゃ何か言っていた気がする。端的にまとめられるなら最初からそうしてほしい。
疑問と不満は残るものの、それが本題なのであれば、答えは簡単だ。
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