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神様、降臨!
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にぎやかな繁華街や高層ビル立ち並ぶビジネス街
そこから離れた山間にその神社はあった。
縁結びで有名な由緒正しいスポットだが。
昨今は流行の占いやメジャー・スポットに押されて参拝者数は減少気味だという。
その神社の石段を一気に駆け上がってきたのはジャージ姿の青年だった。
「ハッ、ハッ……ハァッ。ミコさん、今日はいるかな?」
軽く息を切らせているところからすると、ジョギングの途中だったのだろうか。
「あ、おはようございます」
境内に上がってきた彼に気づいたのは竹箒を手にした巫女さん。
石造りの鳥居の向こうでお掃除中だった。
巫女と言っても、縁結びで有名なこの神社のバイトさんだ。
「おはよう……」
「今朝はお早いですね、アキラさん」
お互いに気づいて、笑顔で会釈を交わす二人。
恋人同士だろうか?
それにしては青年の顔は暗い。
「ミコちゃん……」
「ハ、ハイ、何ですか?」
慌てて嬉しそうに返事したミコ、頬が薔薇色に染まる。
早朝の境内、寒い季節には辛い掃除だが、ミコには辛くはなかった。
毎朝、ジョギングにやってくる青年・アキラと会えるからだ。
だが、アキラは悲しそうに、鳥居の向こうに見えるビルを指差した。
「今晩、俺……お見合いするんだ。あのレストランで」
せわしく竹箒を振っていたミコの手が止まった。
「そ、そうですか。相手の方、良い人だといいですね?」
明らかな作り笑いに、上ずった口調。
「とても、いい人だそうだよ。親父が完全調査済みの名家の一人娘さ」
彼の父親は経済界の裏の顔役とも噂される人物だった。
「で、では、上手くいきますように当神社で祈祷を……」
「ハハッ、必要ないさ。上手くいくことは決定済みの政略結婚なんだから」
自嘲気味の笑顔でアキラはポツリと言った。
ミコは返す言葉も思いつかなかった。
「さようなら、もう、ここへは来ないよ。今まで、ありがとう」
肩を落として去って行くアキラ。
ミコは何も言えずなかった。
ただ、竹箒を握り締めた指先を涙の雫で濡らしていた。
**********
社殿の中の掃除を終えて、ミコはご神体の神鏡の前に座っていた。
この神社の神主は高齢のため長らく不在。
実質的にバイトであるミコがすべてを取り仕切っている。
「他人の縁結びの祈祷は結構うまくいくのになぁ……自分のは」
一日泣き続けて、もう涙さえ出ない。
出るのは溜息だけだった。
その時、神鏡がいきなり太陽のような光輝を発した!
ピカァッ!
「えっ?なにごと……」
『我が名はヤマトエニシヒメ。当神社の祭神である』
声なき声は厳かにそう告げた。
人よりも霊感の強いミコには分かった。
話しかけてきたのは人間ではない!
神霊、それも極めて高い位階の神様だ。
慌ててミコはその場に平伏した。
「ははっ!」
『ミコ、おぬしの誠心誠意の祈祷により、数多くの娘たちが良縁にめぐり合うことができた』
「ははぁっ!」
頭を床にこするつけるほどの平身低頭。
流石に神様相手にはひたすら礼儀正しく従順に、というわけではなかった。
『まことにご苦労であった』
「もったいなきお言葉、ありがたく!」
この神社にバイト巫女として採用された時、祭神についてある注意を受けたのだ。
曰く……
『下手に怒らせたりしてもいかんし、調子に乗らせてもいかん』
いろいろと問題のある神様らしいのだ。
『褒美としておぬしにも良縁を授けようと思い、天下ったのじゃ』
「ありがとうございます!しかし、残念ながら私……」
脳裏に浮かぶアキラの面影を打ち消して、ミコは縁結びを断ろうとした。
『案ずるに及ばぬ。我ら天の神には全てお見通しじゃ』
「駄目です!アキラさんはいずれは経済界を背負う大人物。貧乏アルバイト巫女の私なんかじゃ、釣り合いません」
再び、ミコの瞳に諦めと失意の涙が溢れた。
『では、望むなら我が神通力を貸してやろう』
「ヤマトエニシヒメ様の……神通力を?」
『おぬしには日の本の国をお造りになった大いなる神の一人の血が流れておる』
「私に神の血が?」
『その血に我が神通力を加えれば、おぬしをアキラ殿に匹敵する大人物にするなど容易いことよ!』
「私と…………アキラさんが?」
ゴクッと唾を飲み込む。
それが本当なら?本当なら!
『では最後にもう一度だけ聞く。かの男との縁結びを願うか?』
「…………ね……願います!」
パァッ…………
鏡の光がひときわ増した!
神社の一角から金色の光の噴水が噴き上がった。
地面がグラグラと揺れ、本殿の柱がへし折れて斜めに傾いた。
そこから離れた山間にその神社はあった。
縁結びで有名な由緒正しいスポットだが。
昨今は流行の占いやメジャー・スポットに押されて参拝者数は減少気味だという。
その神社の石段を一気に駆け上がってきたのはジャージ姿の青年だった。
「ハッ、ハッ……ハァッ。ミコさん、今日はいるかな?」
軽く息を切らせているところからすると、ジョギングの途中だったのだろうか。
「あ、おはようございます」
境内に上がってきた彼に気づいたのは竹箒を手にした巫女さん。
石造りの鳥居の向こうでお掃除中だった。
巫女と言っても、縁結びで有名なこの神社のバイトさんだ。
「おはよう……」
「今朝はお早いですね、アキラさん」
お互いに気づいて、笑顔で会釈を交わす二人。
恋人同士だろうか?
それにしては青年の顔は暗い。
「ミコちゃん……」
「ハ、ハイ、何ですか?」
慌てて嬉しそうに返事したミコ、頬が薔薇色に染まる。
早朝の境内、寒い季節には辛い掃除だが、ミコには辛くはなかった。
毎朝、ジョギングにやってくる青年・アキラと会えるからだ。
だが、アキラは悲しそうに、鳥居の向こうに見えるビルを指差した。
「今晩、俺……お見合いするんだ。あのレストランで」
せわしく竹箒を振っていたミコの手が止まった。
「そ、そうですか。相手の方、良い人だといいですね?」
明らかな作り笑いに、上ずった口調。
「とても、いい人だそうだよ。親父が完全調査済みの名家の一人娘さ」
彼の父親は経済界の裏の顔役とも噂される人物だった。
「で、では、上手くいきますように当神社で祈祷を……」
「ハハッ、必要ないさ。上手くいくことは決定済みの政略結婚なんだから」
自嘲気味の笑顔でアキラはポツリと言った。
ミコは返す言葉も思いつかなかった。
「さようなら、もう、ここへは来ないよ。今まで、ありがとう」
肩を落として去って行くアキラ。
ミコは何も言えずなかった。
ただ、竹箒を握り締めた指先を涙の雫で濡らしていた。
**********
社殿の中の掃除を終えて、ミコはご神体の神鏡の前に座っていた。
この神社の神主は高齢のため長らく不在。
実質的にバイトであるミコがすべてを取り仕切っている。
「他人の縁結びの祈祷は結構うまくいくのになぁ……自分のは」
一日泣き続けて、もう涙さえ出ない。
出るのは溜息だけだった。
その時、神鏡がいきなり太陽のような光輝を発した!
ピカァッ!
「えっ?なにごと……」
『我が名はヤマトエニシヒメ。当神社の祭神である』
声なき声は厳かにそう告げた。
人よりも霊感の強いミコには分かった。
話しかけてきたのは人間ではない!
神霊、それも極めて高い位階の神様だ。
慌ててミコはその場に平伏した。
「ははっ!」
『ミコ、おぬしの誠心誠意の祈祷により、数多くの娘たちが良縁にめぐり合うことができた』
「ははぁっ!」
頭を床にこするつけるほどの平身低頭。
流石に神様相手にはひたすら礼儀正しく従順に、というわけではなかった。
『まことにご苦労であった』
「もったいなきお言葉、ありがたく!」
この神社にバイト巫女として採用された時、祭神についてある注意を受けたのだ。
曰く……
『下手に怒らせたりしてもいかんし、調子に乗らせてもいかん』
いろいろと問題のある神様らしいのだ。
『褒美としておぬしにも良縁を授けようと思い、天下ったのじゃ』
「ありがとうございます!しかし、残念ながら私……」
脳裏に浮かぶアキラの面影を打ち消して、ミコは縁結びを断ろうとした。
『案ずるに及ばぬ。我ら天の神には全てお見通しじゃ』
「駄目です!アキラさんはいずれは経済界を背負う大人物。貧乏アルバイト巫女の私なんかじゃ、釣り合いません」
再び、ミコの瞳に諦めと失意の涙が溢れた。
『では、望むなら我が神通力を貸してやろう』
「ヤマトエニシヒメ様の……神通力を?」
『おぬしには日の本の国をお造りになった大いなる神の一人の血が流れておる』
「私に神の血が?」
『その血に我が神通力を加えれば、おぬしをアキラ殿に匹敵する大人物にするなど容易いことよ!』
「私と…………アキラさんが?」
ゴクッと唾を飲み込む。
それが本当なら?本当なら!
『では最後にもう一度だけ聞く。かの男との縁結びを願うか?』
「…………ね……願います!」
パァッ…………
鏡の光がひときわ増した!
神社の一角から金色の光の噴水が噴き上がった。
地面がグラグラと揺れ、本殿の柱がへし折れて斜めに傾いた。
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