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麻雀残酷記
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それは五回戦目のこと。
「それでは小町は昼食の準備をするの。アリス、用意ができるまで代走をお願いなの」
「わかりましたわ小町。それでは皆様よろしくお願いしますね」
今度はアリスが小町の代わりに卓に着いた。
なお、代走というのは主に雀荘でトイレなどに行くときに、雀荘のメンバーにそれまで代理で打ってもらうこと。
ちなみにゴリゴリの業界用語で、普通のJCはこんな用語は知らない。
しかしその不審な点にも、ユウとヤマトは気付かなかった。
「あれ、アリスさんは麻雀をやらないと聞いていましたが」
ユウの疑問にアリスは笑顔で答えた。
「皆様をお待たせするわけにはいきませんからと、小町と千里に仕込まれたのですよ」
ヤマトはゲンボクの様子が気になったのか、ちらりと食卓の方に目をやるも、ゲンボクは全くこちらに興味を示そうともせず、テレビのスポーツ中継を眺めている。
がらがらがら。
「こうやって牌を混ぜるのは楽しいですわ」
楽しそうに洗牌を行うアリスの指がユウとヤマトの手を撫で、二人は小町や千里とは違うその感触に魅了されてしまう。
「ごめんなさい、慣れないものですから」
そう二人に詫びながら、アリスがおぼつかない手つきでゆっくりと牌を積んでいく。
そんな彼女のペースにいつの間にかユウとヤマトは巻き込まれてしまい、その結果、千里はノーマークとなる。
当然のことながら、時折千里の山が「かちり」と小さな音を立てたのに、彼らが気付くはずもない。
「ロンだよ、東ドラ三だよ」
「ツモだよ、ホンイツ白発だよ」
「ロンだよ、小三元だよ」
第五回戦目は、やけに役牌の暗刻が多い手で、あっと言う間に千里の一人勝ちとなってしまった。
「昼食を用意したの。麻雀を打ちながら食べられるの」
小町が用意したのは色とりどりの茶巾寿司と、一口サイズに仕上げ、爪楊枝を刺した鶏のから揚げやタコさんウインナー、それに野菜の素揚げなど。
汁物は冷めても美味しくいただけるように、手毬麩のお吸い物にしてある。
それらはそれぞれの座布団左側に、トレイへと乗せられて置かれた。
これなら手もほとんど汚れないので、麻雀に差しさわりはない。
「それでは楽しゅうございましたわ。引き続き小町と千里をよろしくお願いいたします」
こうしてユウとヤマトはアリスと交代した小町、それに千里と引き続き麻雀を打つことになる。
食卓に戻ったアリスがゲンボクに向かってペロリと舌を出し、それにゲンボクが邪悪な笑みで返したことには全く気付かずに。
「うわ、美味しい!」
何の気なく茶巾寿司を口に放り込んだユウが驚きの声を上げる。
「美味い!」
ヤマトも心底驚いた。
つま楊枝に刺さった「一口から揚げ」の味の深さに。
「喜んでもらえてうれしいの。あ、ヤマト、それ当たりなの」
次の一戦はユウとヤマトが小町謹製の昼食に気を取られているうちに終了してしまった。
するとそこにシャワーで上気したエミリアとリザが再登場。
まさかのホワイトTシャツにホワイトハーフパンツという二人のいで立ちに、ユウとヤマトは本日何回目かの心臓握り潰し攻撃を食らった。
具体的には、二人のシャツとパンツから透ける下着のラインにだが。
「エミリアとリザの分はキッチンに用意してありますからね」
「はいよ」
「了解した」
アリスの指示に従い、二人は一旦キッチンに姿を消す。
次の対戦。
いつの間にか負けが込んできたユウとヤマトは、ここで改めて気を引き締めようとする。
も、次に彼らの耳に飛び込んできたのは、彼らの心をかき乱すやり取り。
「はい、ゲンボクちゃん、あーん」
「よせやいアリス、ユウとヤマトがこっちを見ているぜ」
「そんなの知りませんわ。それよりこのウインナーさんも絶品ですよ。さすが小町ですわ」
「仕方がねえなあ、あーん。うん、美味しいよアリス。小町もな」
「リーチだよ。ユウ、早く切ってよ」
「あ、はい。じゃあこれ」
いきなり始まったゲンボクとアリスのラブラブシーンにユウは気を取られ、普段なら絶対に切らない危険牌を、つい切ってしまう。
「ロンだよ! メンタンピン一発三色一盃口ドラ四、数え役満だよ!」
まさかのユウ、東一局で千里に大物手をぶっこんで、ハコテンになってしまった。
「ユウはもっとまじめにやってほしいの」
「さすがにそれは切らないよなあ」
小町のイラつきはともかく、一緒になってゲンボクとアリスのラブシーンに気を取られていたヤマトにそんなことを言われると、さすがの温厚なユウもカチンと来てしまう。
続けて場所決めが終わったところで次の一戦。
ヤマトの捨牌へユウが静かに手牌を倒す。
「悪いなヤマト、それ当たりだ」
「え?」
ユウがダマテンでヤマトを直撃したのは親の倍満。
しかもヤマトは「ワレメ」なので、支払いが倍付となる。
ということで三万六千点のお支払いで、今度はヤマトがハコテンになってしまった。
その結果、ユウとヤマトは、互いは仲間などではなく、喰うか喰われるかの獲物であると再認識したのである。
「それでは小町は昼食の準備をするの。アリス、用意ができるまで代走をお願いなの」
「わかりましたわ小町。それでは皆様よろしくお願いしますね」
今度はアリスが小町の代わりに卓に着いた。
なお、代走というのは主に雀荘でトイレなどに行くときに、雀荘のメンバーにそれまで代理で打ってもらうこと。
ちなみにゴリゴリの業界用語で、普通のJCはこんな用語は知らない。
しかしその不審な点にも、ユウとヤマトは気付かなかった。
「あれ、アリスさんは麻雀をやらないと聞いていましたが」
ユウの疑問にアリスは笑顔で答えた。
「皆様をお待たせするわけにはいきませんからと、小町と千里に仕込まれたのですよ」
ヤマトはゲンボクの様子が気になったのか、ちらりと食卓の方に目をやるも、ゲンボクは全くこちらに興味を示そうともせず、テレビのスポーツ中継を眺めている。
がらがらがら。
「こうやって牌を混ぜるのは楽しいですわ」
楽しそうに洗牌を行うアリスの指がユウとヤマトの手を撫で、二人は小町や千里とは違うその感触に魅了されてしまう。
「ごめんなさい、慣れないものですから」
そう二人に詫びながら、アリスがおぼつかない手つきでゆっくりと牌を積んでいく。
そんな彼女のペースにいつの間にかユウとヤマトは巻き込まれてしまい、その結果、千里はノーマークとなる。
当然のことながら、時折千里の山が「かちり」と小さな音を立てたのに、彼らが気付くはずもない。
「ロンだよ、東ドラ三だよ」
「ツモだよ、ホンイツ白発だよ」
「ロンだよ、小三元だよ」
第五回戦目は、やけに役牌の暗刻が多い手で、あっと言う間に千里の一人勝ちとなってしまった。
「昼食を用意したの。麻雀を打ちながら食べられるの」
小町が用意したのは色とりどりの茶巾寿司と、一口サイズに仕上げ、爪楊枝を刺した鶏のから揚げやタコさんウインナー、それに野菜の素揚げなど。
汁物は冷めても美味しくいただけるように、手毬麩のお吸い物にしてある。
それらはそれぞれの座布団左側に、トレイへと乗せられて置かれた。
これなら手もほとんど汚れないので、麻雀に差しさわりはない。
「それでは楽しゅうございましたわ。引き続き小町と千里をよろしくお願いいたします」
こうしてユウとヤマトはアリスと交代した小町、それに千里と引き続き麻雀を打つことになる。
食卓に戻ったアリスがゲンボクに向かってペロリと舌を出し、それにゲンボクが邪悪な笑みで返したことには全く気付かずに。
「うわ、美味しい!」
何の気なく茶巾寿司を口に放り込んだユウが驚きの声を上げる。
「美味い!」
ヤマトも心底驚いた。
つま楊枝に刺さった「一口から揚げ」の味の深さに。
「喜んでもらえてうれしいの。あ、ヤマト、それ当たりなの」
次の一戦はユウとヤマトが小町謹製の昼食に気を取られているうちに終了してしまった。
するとそこにシャワーで上気したエミリアとリザが再登場。
まさかのホワイトTシャツにホワイトハーフパンツという二人のいで立ちに、ユウとヤマトは本日何回目かの心臓握り潰し攻撃を食らった。
具体的には、二人のシャツとパンツから透ける下着のラインにだが。
「エミリアとリザの分はキッチンに用意してありますからね」
「はいよ」
「了解した」
アリスの指示に従い、二人は一旦キッチンに姿を消す。
次の対戦。
いつの間にか負けが込んできたユウとヤマトは、ここで改めて気を引き締めようとする。
も、次に彼らの耳に飛び込んできたのは、彼らの心をかき乱すやり取り。
「はい、ゲンボクちゃん、あーん」
「よせやいアリス、ユウとヤマトがこっちを見ているぜ」
「そんなの知りませんわ。それよりこのウインナーさんも絶品ですよ。さすが小町ですわ」
「仕方がねえなあ、あーん。うん、美味しいよアリス。小町もな」
「リーチだよ。ユウ、早く切ってよ」
「あ、はい。じゃあこれ」
いきなり始まったゲンボクとアリスのラブラブシーンにユウは気を取られ、普段なら絶対に切らない危険牌を、つい切ってしまう。
「ロンだよ! メンタンピン一発三色一盃口ドラ四、数え役満だよ!」
まさかのユウ、東一局で千里に大物手をぶっこんで、ハコテンになってしまった。
「ユウはもっとまじめにやってほしいの」
「さすがにそれは切らないよなあ」
小町のイラつきはともかく、一緒になってゲンボクとアリスのラブシーンに気を取られていたヤマトにそんなことを言われると、さすがの温厚なユウもカチンと来てしまう。
続けて場所決めが終わったところで次の一戦。
ヤマトの捨牌へユウが静かに手牌を倒す。
「悪いなヤマト、それ当たりだ」
「え?」
ユウがダマテンでヤマトを直撃したのは親の倍満。
しかもヤマトは「ワレメ」なので、支払いが倍付となる。
ということで三万六千点のお支払いで、今度はヤマトがハコテンになってしまった。
その結果、ユウとヤマトは、互いは仲間などではなく、喰うか喰われるかの獲物であると再認識したのである。
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