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事前の口裏合わせ
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ツァーグとリスペルはベースキャンプ移動用の大型荷車に残った馬を全て繋ぎ、多頭立て馬車とした。
そこにアージュ達も乗り込んでいく。
「犬のおっさんも乗れ」
「フントだ」
小生意気なクソガキに指示されるのも癪だが、蟲の姫の配下であるならば立場は自分の方が下である。
なのでフントは自らを名乗ると、指示されるがままに馬車に乗り込む。
ツァーグの指示で御者はリスペルが務め、荷台にはツァーグ、アージュ、ナイ、フントが座る。
イーゼルはツァーグ達が馬車を用意している間にアージュとクラウスから
「お前すげえな!」
「ボクにはあんなの無理だよ!」
などと称賛の声を送られながら、涙とちんこじるで汚れた顔を拭ってもらっていた。
服装もワンピース一枚から、アージュの着替えを着せてもらい、今では可愛らしい男の子の服装となっている。
「狭いのは嫌だな」
と、クラウスはリスペルの隣に陣取り、イーゼルはアージュの背後に隠れるようにして彼の背中と馬車の側板の間に座り込んだ。
「それでは出発します」
リスペルはそう宣言すると、馬車をキュルビスに向けて走り出させた。
馬車の後ろからは、馬を怯えさせないように極力殺気を断ったハイエナハウンドの群れが、その後についてくる。
「それじゃあ、事前打ち合わせと行くか」
アージュは一行の表情をぐるっと見渡すと、そう宣言した。
馬車でそれぞれが確認した項目は次の通り。
まずはフントが率いるハイエナハウンドの群れについて。
「フントとやら、子犬を一匹分けてもらうことはできるか?」
ツァーグからの駄目元の申し出に、フントは冗談は顔だけにしろといった表情となる。
「人族は異種族に子供を分けてくれと言われたら、ホイホイ差し出すものなのか?」
そりゃそうだよな。
さて、どうしたものか。
するとアージュが面白いことを言い出した。
「なあツァーグのおっさん、ボーデン領主からの依頼はハイエナハウンドの子を入手であって、ハイエナハウンドの子『だけ』を入手じゃねえよな」
その言い回しにツァーグも気づいた。
「そうですね。いっそのことまとめて引き渡しますか」
するとアージュが憎たらしい笑みを浮かべる。
「ならこうしたらどうだおっさん?」
「確かに理には叶っていますね」
ツァーグは金髪のガキが提案してきた方法を、人の弱みにつけ込みやがってとむかつきながらも、採用することにする。
次に山岳地帯に現れたというよくわからない蟻塚のような塔と、そこからはい出てきたと思われる植物魔族「脊髄草」の処理について。
この件についてはキュルビスに戻り次第、ツァーグの手配で、風俗組合と商人組合にボーデンからの使者であるシュルトも交えて大至急協議するとした。
続けてアージュとクラウス、ナイのキュルビスにおける身分の確保について。
「今回の魔物退治とハイエナハウンド捕獲の功労者として、ナイを正式に風俗組合の組合員として迎えます。そうすればアージュとクラウスにも組合員の家族証が発行されますよ」
どうやら組合員証はキュルビス風俗組合が保証する身分証として使用できるらしい。
これさえあれば今後いちいち三人の身分を一から説明する必要はないそうだ。
また、裏の世界でも通じる身分証のため、路地裏でのトラブルの際に提示すれば、カツアゲ等の仲裁に役立つとのこと。
「その代わり、相手がキュルビス風俗組合身分証を提示してきたら、その場で暴力は止めてくださいね」
どうやらツァーグが彼らに身分証を発行する真の目的はこちらにあるらしい。
確かにこんな危ないガキどもに下手に絡めば、絡んだ方のケツの毛が抜かれてしまうであろう。
こういう連中はさっさと仲間にして囲ってしまうに限る。
「ところでさ」
「なんですか?」
アージュはツァーグに確認するように尋ねてきた。
「どうせイーゼルの身分証はないんだろ?」
「ええ、イーゼルはパドの庇護下にありましたからね」
「なら、イーゼルの身分証もナイねーちゃんの家族証で作ってくれねーか?」
アージュの意外な申し出にツァーグは驚きの表情を見せる。
「あなた方がイーゼルの面倒をみるということですか?」
「そうだ。あんなガッツのある野郎を放っておく手はねえからな」
なんですかそれはよくわかりません。
しかしながらツァーグにとっても、この申し出は都合のいいことである。
何故ならイーゼルはパドがどこからか誘拐してきた、誰とも知れない存在であり、いわゆる保証人となる者は皆無なのだから。
なのでアージュ達がイーゼルを引き取ってくれるのならば、話は早い。
だが、一つ問題がある。
「イーゼルはパドが薬漬けにしてしまっています。今晩あたりに禁断症状が出るかと思いますが、それでも構わないですか?」
ツァーグの確認をアージュは笑い飛ばした。
「何とかなるだろ。なあ、ナイねーちゃん。あれ?」
話に飽きたのだろうか、いつの間にかナイは馬車から抜け出し、御者席に割り込んでいる。
「まあいいか。オレが何とかするよ」
「ならばお任せします。身分証の発行手続きはすぐに済ませますから」
ということで、キュルビスの街に到着次第ツァーグとリスペルは風俗組合に戻り、今回の事件についての報告と、ハイエナハウンドの件についての報告を行うことにする。
商人組合にはクラウスが向かい、今日の受取証提出とともに、事の顛末をキュール達に報告する。
アージュとナイは、イーゼルとフントおよびハイエナハウンドの群れを率いて町を大回りし、人目に触れないようにアパートメントに帰ることにする。
ハイエナハウンド達は町はずれに明日まで身を隠しておくようにしておけばよい。
そうこうしているうちに、馬車は草原を抜け、かぼちゃ畑に囲まれた街道まで到着したのである。
そこにアージュ達も乗り込んでいく。
「犬のおっさんも乗れ」
「フントだ」
小生意気なクソガキに指示されるのも癪だが、蟲の姫の配下であるならば立場は自分の方が下である。
なのでフントは自らを名乗ると、指示されるがままに馬車に乗り込む。
ツァーグの指示で御者はリスペルが務め、荷台にはツァーグ、アージュ、ナイ、フントが座る。
イーゼルはツァーグ達が馬車を用意している間にアージュとクラウスから
「お前すげえな!」
「ボクにはあんなの無理だよ!」
などと称賛の声を送られながら、涙とちんこじるで汚れた顔を拭ってもらっていた。
服装もワンピース一枚から、アージュの着替えを着せてもらい、今では可愛らしい男の子の服装となっている。
「狭いのは嫌だな」
と、クラウスはリスペルの隣に陣取り、イーゼルはアージュの背後に隠れるようにして彼の背中と馬車の側板の間に座り込んだ。
「それでは出発します」
リスペルはそう宣言すると、馬車をキュルビスに向けて走り出させた。
馬車の後ろからは、馬を怯えさせないように極力殺気を断ったハイエナハウンドの群れが、その後についてくる。
「それじゃあ、事前打ち合わせと行くか」
アージュは一行の表情をぐるっと見渡すと、そう宣言した。
馬車でそれぞれが確認した項目は次の通り。
まずはフントが率いるハイエナハウンドの群れについて。
「フントとやら、子犬を一匹分けてもらうことはできるか?」
ツァーグからの駄目元の申し出に、フントは冗談は顔だけにしろといった表情となる。
「人族は異種族に子供を分けてくれと言われたら、ホイホイ差し出すものなのか?」
そりゃそうだよな。
さて、どうしたものか。
するとアージュが面白いことを言い出した。
「なあツァーグのおっさん、ボーデン領主からの依頼はハイエナハウンドの子を入手であって、ハイエナハウンドの子『だけ』を入手じゃねえよな」
その言い回しにツァーグも気づいた。
「そうですね。いっそのことまとめて引き渡しますか」
するとアージュが憎たらしい笑みを浮かべる。
「ならこうしたらどうだおっさん?」
「確かに理には叶っていますね」
ツァーグは金髪のガキが提案してきた方法を、人の弱みにつけ込みやがってとむかつきながらも、採用することにする。
次に山岳地帯に現れたというよくわからない蟻塚のような塔と、そこからはい出てきたと思われる植物魔族「脊髄草」の処理について。
この件についてはキュルビスに戻り次第、ツァーグの手配で、風俗組合と商人組合にボーデンからの使者であるシュルトも交えて大至急協議するとした。
続けてアージュとクラウス、ナイのキュルビスにおける身分の確保について。
「今回の魔物退治とハイエナハウンド捕獲の功労者として、ナイを正式に風俗組合の組合員として迎えます。そうすればアージュとクラウスにも組合員の家族証が発行されますよ」
どうやら組合員証はキュルビス風俗組合が保証する身分証として使用できるらしい。
これさえあれば今後いちいち三人の身分を一から説明する必要はないそうだ。
また、裏の世界でも通じる身分証のため、路地裏でのトラブルの際に提示すれば、カツアゲ等の仲裁に役立つとのこと。
「その代わり、相手がキュルビス風俗組合身分証を提示してきたら、その場で暴力は止めてくださいね」
どうやらツァーグが彼らに身分証を発行する真の目的はこちらにあるらしい。
確かにこんな危ないガキどもに下手に絡めば、絡んだ方のケツの毛が抜かれてしまうであろう。
こういう連中はさっさと仲間にして囲ってしまうに限る。
「ところでさ」
「なんですか?」
アージュはツァーグに確認するように尋ねてきた。
「どうせイーゼルの身分証はないんだろ?」
「ええ、イーゼルはパドの庇護下にありましたからね」
「なら、イーゼルの身分証もナイねーちゃんの家族証で作ってくれねーか?」
アージュの意外な申し出にツァーグは驚きの表情を見せる。
「あなた方がイーゼルの面倒をみるということですか?」
「そうだ。あんなガッツのある野郎を放っておく手はねえからな」
なんですかそれはよくわかりません。
しかしながらツァーグにとっても、この申し出は都合のいいことである。
何故ならイーゼルはパドがどこからか誘拐してきた、誰とも知れない存在であり、いわゆる保証人となる者は皆無なのだから。
なのでアージュ達がイーゼルを引き取ってくれるのならば、話は早い。
だが、一つ問題がある。
「イーゼルはパドが薬漬けにしてしまっています。今晩あたりに禁断症状が出るかと思いますが、それでも構わないですか?」
ツァーグの確認をアージュは笑い飛ばした。
「何とかなるだろ。なあ、ナイねーちゃん。あれ?」
話に飽きたのだろうか、いつの間にかナイは馬車から抜け出し、御者席に割り込んでいる。
「まあいいか。オレが何とかするよ」
「ならばお任せします。身分証の発行手続きはすぐに済ませますから」
ということで、キュルビスの街に到着次第ツァーグとリスペルは風俗組合に戻り、今回の事件についての報告と、ハイエナハウンドの件についての報告を行うことにする。
商人組合にはクラウスが向かい、今日の受取証提出とともに、事の顛末をキュール達に報告する。
アージュとナイは、イーゼルとフントおよびハイエナハウンドの群れを率いて町を大回りし、人目に触れないようにアパートメントに帰ることにする。
ハイエナハウンド達は町はずれに明日まで身を隠しておくようにしておけばよい。
そうこうしているうちに、馬車は草原を抜け、かぼちゃ畑に囲まれた街道まで到着したのである。
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