北部には精霊使いがいるらしい

どね

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十 その先を※

 ツイディアは焦っていた。
 皆をこの場から逃す為に言った言葉だったが、レヴィアはツイディアを背後から抱き締めたまま動かないのである。

「お疲れでしょう。少し横になりますか?」

 レヴィアは耳元で聞こえる心地よいツイディアの声に、存在を確かめるように深く息を吸い込んだ。
 それから、レヴィアは額を肩に擦り付け首を振る。薬を飲んだ後にいつも訪れていた絶望感はなく、ただ心が穏やかである。

「貴方は本当に俺の婚約者だろうか」
「はい。閣下に捨てられない限り」

 ツイディアは場を和ませようと笑うが、部屋には静寂が訪れた。

「申し訳ありません。私が閣下を不安にさせているのですよね」

 腹に回された腕に手を添え、ツイディアは改めてレヴィアの体格の良さを実感する。そっと自分の腕を並べてみたが、敵いそうにない。
 まだ、レヴィアのこの腕に抱かれる覚悟はなかった。

「ひとつよろしいでしょうか?」

 ツイディアはレヴィアの手を取り、大きな手のひらに唇を押し付ける。

「ああ」

 レヴィアはツイディアの唇へ指を這わせ、柔らかな感触を指先に刻み込む。

「閣下は様々な方と身体を重ねてきたと噂で聞いております」
「……あ」

 ツイディアは動きの止まった指に口づけ、ゆっくりとレヴィアを振り返り目を伏せる。

「出来れば、これからはそういった行為を……私だけにして欲しいのです」

 レヴィアは逸る鼓動に胸元を鷲掴み、自分の耳を疑った。薬の影響で遂に幻聴まで聞こえるようになったのか。そもそも、目の前にいる人物は本当にツイディアなのか。
 こんなにも自分に都合の良い話があるのか、レヴィアは思わずツイディアの頬に手を添えた。

「それは、意味をわかって言っているのか」
「わかっております。急に話す内容でもないと、それもわかっております」

 ツイディアは頬を撫でられ、恥ずかしさからぎこちない笑みを浮かべる。
 先に伝えておけば、少し時間が出来ると考えたのである。心の準備を整え、身体に負担が掛からない魔法薬を用意しようと思っていた。

「それも……いや。それはツイディアの意思なのか?」
「はい。伴侶となった時に、無益な争いは避けたいので。それに、婚約者が他の者と関係を持つのは、その……周囲の評判も、よろしくないかと」

 ツイディアは語尾を弱め視線を彷徨わせる。
 精霊の姿はなく、本当に二人だけの世界に紛れ込んだようだった。

「全て貴方の言う通りだ。訂正するとすれば、俺は貴方の婚約者になってから、他の誰とも関係を持つ気がなかったところだな」

 ツイディアは自分の額に指を添え、また一人で恥をかいたのだと理解する。ルカサの言う通りにして上手く行ったことがあるだろうか。
 そして、レヴィアに失言をしたことに気付き、ツイディアは小さく頭を下げた。

「大変失礼いたしました。私の気持ちが先走っていたようです」

 いつものように手の中からすり抜けてゆくツイディアに、レヴィアは深く息を吐き指で前髪を後ろに流す。

「貴方はそうだよな」

 レヴィアは改めて隣に座り直したツイディアの顎を掴み、強引に口を開かせ深く口づけをする。まだ準備の出来ていないツイディアの舌を絡めとり、そのままソファへと身体を押し倒した。

「俺は今貴方に触れたくて仕方がない。許してもらえるか」

 レヴィアは散らばる白金の髪を指で撫でて、驚くツイディアの顔を見下ろす。

「閣下……今は」

 レヴィアはツイディアの制止の声に耳を貸さず、細い首筋に唇を近付け白い肌を啄む。喉仏に舌を這わせ、そのまま強く吸い上げれば、刻印にも負けない鮮やかな紅い華が咲いた。

「いつも逃げるんだな」

 レヴィアがツイディアのシャツのボタンを外していると、困惑しながら背中を叩かれる。レヴィアはそれでも手を止めず、露わになった胸の突起を指で撫でた。

「あ、あの今日はまだ早いです」
「貴方だけだと言ったではないか」

 熱のこもった息、湿った唇、その後に首筋を這う生温かい舌。
 ツイディアは首筋に顔を埋めるレヴィアの髪を、無意識に指で梳き瞼を閉じる。止めなければと思う気持ちと、レヴィアの熱に流されてしまいたい気持ちが混ざり合う。

「……ん」

 チュッと短い音を立てて白い肌に紅い華を咲かせる唇が、遠慮がちに胸の突起を啄む。舌先で強く押し込まれたかと思えば、口内に吸い上げられ軽く歯で弄ばれる。
 レヴィアの太い指その腹で、もう片方の突起をグリグリと撫でられると、ツイディアの口から自然と甘い声が漏れた。

「今だけ名前を呼んでくれないか」

 ツイディアは喉元に口づけをされ、そのまま歯を立てられ身震いをした。

「……レヴィア」

 レヴィアはツイディアの股を膝で押し開き、汗ばんだ上衣を脱ぎ捨てた。
 露わになったレヴィアの鍛え上げられた身体には、古傷の痕がいくつも残っておりツイディアは悲しげに眉の端を下げる。

「貴方には醜く映るだろうか」
「いいえ、私が側に居ればレヴィアを守れたかと、考え——」

 レヴィアはツイディアが言い終わる前に口づけをし、言葉を飲み込ませる。何度も想像した口づけは雰囲気のいいものではないが、心が満たされてゆくのがわかった。
 ツイディアが逃げ出さないように、レヴィアは指をからめ手をきつく握りしめた。頭の中で繰り返ししていたように、苦しませないよう舌を追う。逃げずに自分の舌を追うツイディアが愛しく、レヴィアはこのままツイディアを壊してしまいたくなった。

「あまり見ないでください」

 レヴィアはツイディアに塞がれた目から手を退かし、刻印が浮かぶ肌に唇を落とす。服の上からではわからなかったツイディアの一部に、心が躍るのがわかった。
 レヴィアは脇腹に歯を立てぐっと噛み締める。ツイディアの悲痛な声が聞こえて、優しく噛み跡を舌でなぞった。

「まっ、うう、それは、待ってください」

 ツイディアは肉棒の先にレヴィアの唇が触れ、慌てて頭を押し返す。脇腹の痛みに気をとられている間に下衣を下ろされていたのである。

「貴方が俺のことを直ぐに忘れないように」

 ツイディアは自分の股に顔を埋めるレヴィアを見下ろし、忘れられるはずがないと下唇を噛み締める。
 これだけで反応している自分はおかしいのではないか、レヴィアにも引かれてしまったのではないか。そんな考えを浮かべていたが、先端にレヴィアの舌が触れた途端頭が真っ白になった。

「あ、汚い……ので」

 ツイディアはせめてもの理性でそう言って、躊躇うことなくツイディアの肉棒を口に含んだレヴィアを見つめる。公爵ともあろうレヴィアが、自分の卑しい部分を口に含み、口づけよりも執拗に舌を絡めている。
 ジュルジュルとわざとらしく先端を吸い上げられ、ツイディアは堪らずレヴィアの頬に手を伸ばした。

「それっ……ん」
「これが好きなのか?」

 レヴィアはツイディアの手に己の手を添えて、快楽に表情を歪ませ俯くツイディアを見上げた。滲む汗と雄の臭いが、今この瞬間が夢ではないと告げている。

「あ、レヴィア」

 レヴィアは満足そうに目元を細め、今までよりも深くツイディアを咥え喉の奥で吸い上げる。苦しそうに短い呼吸を繰り返すツイディアに、レヴィアも興奮から熱い息を漏らす。
 口の中でツイディアの肉棒が脈打ったと思えば、肩を押され腰を引き抜かれてしまった。

「は、っ——汚れて、いませんか」

 ツイディアから吐き出された白濁に目を閉じるが、思っていた熱は顔にかからず、ツイディアの手のひらで受け止められていた。
 レヴィアは目を見開いて呼吸を整え、口元を手の甲で拭った。
 ツイディアのものを受け止める気でいた手前、何と返して良いのかわからなかったのだ。
 しかし、初めて他人のものを咥えたが、ツイディアの手のひらに溜まっている白濁を見て、満足感は得られた。

「ああ……貴方のものを口にできず残念ではある」

 ツイディアは無意識に顔に熱が集まるのがわかり、レヴィアの顔を見ることができずに、手のひらで冷たくなった白濁の処理をする。

「私もお手伝いを」

 ツイディアは下衣を腰まで上げて、ぎこちなくレヴィアの股に手を伸ばす。
 その手はレヴィアによって阻まれ、指先に口づけをされた。

「ツイディアには別の方法で手伝って欲しい」
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