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第03章 告白
第047話 セインとレイ
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翌日、ローンズ王国の城下町をリアム国王自ら案内してくれた。五人という少人数のうえ、特に変装する様子もなかったため、問題ないのかとレイがリアム国王に尋ねる。
「私だと分かっていて襲ってくる者などいない。むしろこの方が都合が良い」
その堂々とした態度をレイは素直にかっこいいと思った。
ただ、この五人での外出はかなり目立つ。城下の人々は遠くから様子を窺っており、まさに注目の的であった。
エリー王女はアトラス王国とは違った雰囲気の町並みと売り出されている数々の品物を眺めながらも、アトラス王国の顔として恥ずかしくないよう町の人々に笑顔を振りまいた。しかし、沢山の目が突き刺さりなんだか落ち着かない。
「何か気になる物があれば気にせず手に取って見てみると良い」
「はい、ありがとうございます」
隣を歩いているリアム国王が話しかけてきたが、自分から店に赴き手に取るのは勇気のいることだった。
「陛下、あの黄色い食べ物は何でしょうか。とても珍しいですね!」
そんなエリー王女の様子を読み取ったレイは、エリー王女を挟んだ隣にいるリアム国王へ代わりに質問をする。
普通であれば国王と隣に並んで歩くことなど有り得ないのだが、リアム国王と話しやすいようにハルからすぐ傍にいるようお願いされていたのだった。
「あぁ、あれは自国で採れるポックラルという果実だ。日持ちがしないため他国への輸出は難しい。ああ、そういえばセインもこのポックラルをよく食べていたな……。ハル」
後ろにいるハルを呼び、三人分購入させ店主に食べやすいように切り分けてもらった。果実は玉のように丸く、瑞々しく太陽の光を浴びて黄金のように輝いていた。切った瞬間甘い香りが漂う。
「美味しい!」
三人は笑顔を交わし合い、リアム国王はその様子を優しい笑みを浮かべ眺めていた。
そんな様子を町の人々は珍しそうに見ている。厳しい表情で視察をしている姿は何度も見ていたが、笑っているようなことは一度もなかったからだ。
――――リアム国王はアトラス王国のエリー王女との婚姻を考えているのでは?
そんな噂話がすぐに飛びかわされた。
アランの耳にもその声は届いており、目の前を歩く三人を注意深く観察する。
一方的に話をしまくるレイにリアム国王もエリー王女も楽しそうに答えていた。そう、リアム国王が楽しそうに見えるのだ。
「陛下があのような顔をされるのを初めて見ました」
ぽつりとアランが呟くと、隣を歩くハルが反応した。
「確かに、珍しいと思います。レイさんを見て、もしかしたらセイン様を思い出しているのかもしれません。陛下にとってセイン様は全てなのです。病気になられたこの数年間、ずっと寂しい思いをされてきたんだと思います」
「レイはそんなに似ているんですか?」
ハルは懐かしむように細い目を更に細める。
「……そうですね。もし元気なお姿でいたのであればあのような感じかもしれません。セイン様もとても明るいお方ですので、似た雰囲気をお持ちです。また、レイさんはセイン様と同じように魔法も剣術も優れておりますので、そういったところも重ねているのではないでしょうか」
ハルは前を歩くリアム国王とレイを優しく見つめ、答えた。
その言葉にアランは納得する。確かに、リアム国王を見ているとエリー王女よりレイの方に興味があるように見えた。
エリー王女には気遣いを見せるものの、レイと話をしていることが多いということ。そして何より、レイと話している時が一番嬉しそうにしているのだ。
町の人々がいうように、エリー王女に惚れているというのは考えにくいのかもしれない。
何にせよ、同盟国の国王がとても好意的であることは間違いなさそうだ。
そしてエリー王女も、いつもより楽しそうにしている。
今はそれだけで十分だ。
アランはそのままエリー王女を見守ることにした。
「私だと分かっていて襲ってくる者などいない。むしろこの方が都合が良い」
その堂々とした態度をレイは素直にかっこいいと思った。
ただ、この五人での外出はかなり目立つ。城下の人々は遠くから様子を窺っており、まさに注目の的であった。
エリー王女はアトラス王国とは違った雰囲気の町並みと売り出されている数々の品物を眺めながらも、アトラス王国の顔として恥ずかしくないよう町の人々に笑顔を振りまいた。しかし、沢山の目が突き刺さりなんだか落ち着かない。
「何か気になる物があれば気にせず手に取って見てみると良い」
「はい、ありがとうございます」
隣を歩いているリアム国王が話しかけてきたが、自分から店に赴き手に取るのは勇気のいることだった。
「陛下、あの黄色い食べ物は何でしょうか。とても珍しいですね!」
そんなエリー王女の様子を読み取ったレイは、エリー王女を挟んだ隣にいるリアム国王へ代わりに質問をする。
普通であれば国王と隣に並んで歩くことなど有り得ないのだが、リアム国王と話しやすいようにハルからすぐ傍にいるようお願いされていたのだった。
「あぁ、あれは自国で採れるポックラルという果実だ。日持ちがしないため他国への輸出は難しい。ああ、そういえばセインもこのポックラルをよく食べていたな……。ハル」
後ろにいるハルを呼び、三人分購入させ店主に食べやすいように切り分けてもらった。果実は玉のように丸く、瑞々しく太陽の光を浴びて黄金のように輝いていた。切った瞬間甘い香りが漂う。
「美味しい!」
三人は笑顔を交わし合い、リアム国王はその様子を優しい笑みを浮かべ眺めていた。
そんな様子を町の人々は珍しそうに見ている。厳しい表情で視察をしている姿は何度も見ていたが、笑っているようなことは一度もなかったからだ。
――――リアム国王はアトラス王国のエリー王女との婚姻を考えているのでは?
そんな噂話がすぐに飛びかわされた。
アランの耳にもその声は届いており、目の前を歩く三人を注意深く観察する。
一方的に話をしまくるレイにリアム国王もエリー王女も楽しそうに答えていた。そう、リアム国王が楽しそうに見えるのだ。
「陛下があのような顔をされるのを初めて見ました」
ぽつりとアランが呟くと、隣を歩くハルが反応した。
「確かに、珍しいと思います。レイさんを見て、もしかしたらセイン様を思い出しているのかもしれません。陛下にとってセイン様は全てなのです。病気になられたこの数年間、ずっと寂しい思いをされてきたんだと思います」
「レイはそんなに似ているんですか?」
ハルは懐かしむように細い目を更に細める。
「……そうですね。もし元気なお姿でいたのであればあのような感じかもしれません。セイン様もとても明るいお方ですので、似た雰囲気をお持ちです。また、レイさんはセイン様と同じように魔法も剣術も優れておりますので、そういったところも重ねているのではないでしょうか」
ハルは前を歩くリアム国王とレイを優しく見つめ、答えた。
その言葉にアランは納得する。確かに、リアム国王を見ているとエリー王女よりレイの方に興味があるように見えた。
エリー王女には気遣いを見せるものの、レイと話をしていることが多いということ。そして何より、レイと話している時が一番嬉しそうにしているのだ。
町の人々がいうように、エリー王女に惚れているというのは考えにくいのかもしれない。
何にせよ、同盟国の国王がとても好意的であることは間違いなさそうだ。
そしてエリー王女も、いつもより楽しそうにしている。
今はそれだけで十分だ。
アランはそのままエリー王女を見守ることにした。
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