諦めてください!

なーな

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仲間集め!

嫌と言ったら嫌なんです!

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「おはようございます、神子様。
本日は皇太子殿下がいらっしゃいます。
起きて早々申し訳ございませんが、早速ご準備を」

そう告げるのは、お世話してもらっている、侍女のリンだ。

「う、うん」

雰囲気に押され、返事をするが、少したった後思った。
(えぇーー。 皇太子殿下ってあのとき居た人だよね。 あの、超絶美形で、いかにも国の次期トップってかんじなのに、もっんのすごく軽そうな人 なんかいやな予感しかしないんですけど)

「あの、それって決定事項かな?キャンセルできない?」

多分、無理だろうなーと思いながらもダメ元で聞いた。

「俺じゃ不満か?」

返ってきた言葉はリンが発したものではなかった。

ばっと振り向くと、壁に寄りかかっている超かっこいい人(←皇太子殿下)がいるじゃないか!?

「まさか!皇太子殿下とお話しできるなんて、嬉しい限りです!ですが、私は作法など全く知りません。お気を悪くされるかもしれませんので、日を改め方がよろしいのではないでしょうか?」

偉い人だから、ちゃんと敬語でしゃべったが、要はこう言いたかったのだ。
(なんかめんどくさそうだから、別の日にして!)

私の心の声まで読みとったのだろう。

「作法なんて気にしないから。ちょっと話にきただけだから、面倒な話なんてないよ」

いやいや、その『ちょっとした話』が面倒なんだよ!
が、私の気持ちなど気にもせず、話は進む。

「あのさぁ、皇太子殿下って言うのやめてくれない?俺の事はライアンとよんでくれ。 あと、その変な敬語じゃなくて、普通に話してくれ」

む、『変な』とはなんだ。『変な』とは!
皇太子相手にタメなんて無理無理!しかも、名前で呼べ?!無理に決まってんでしょうが!
私の苦い顔を見てか、彼は言った。

「皇太子命令、だ。余の言うことは絶対だ」

はぁ?なんか変なところで権力使ってません?
しかも、こういうときだけ、『余』なんて言って…ついさっきまで、俺だったような…
あぁもうなんでもいいや。この人の言うこと聞いとこう。
反抗する事は無謀だと理解した杏里は素直に受け入れる事にした。

「では、ライアン様、質問させてください。
なぜ、私がこの国に来なければならなかったんですか。」

いくらなんでも、敬語だけは止めない。ライアンもそれが分かったらしく、敬語にはふれなかった。

「知らん。俺が分かるのは一つだけ。
お前が、この国に伝わる
『伝説の存在 神子』
ということだけだ。
その神子は、強大な力を持ち国が危機に陥ったとき、必ず現れる。
その者たちは、黒目黒髪。
この国の女神のウィクトーアと同じであることから、天地人と呼ばれ、女神の使いとされる。
それだから、民は神子が現れたと聞いてお祭り状態だ。だから、この国を救ってほしいんだ。民のためにも。
もちろん危険な事は一切無い。それに君自身が行く必要は無い。勇者にまじないを教えればいいんだ。後はそれぞれがやってくれる。
それができるのは、女神の使いである神子、つまり杏里だけなんだ」

つまり、この国の勝手な都合で連れてこられたって訳か。国民が崇める気持ちも分からなくはないけど、こっちの身にもなってもらいたいよ。急に違う世界に連れてこられて、その上国を救え?!無茶にも程があるでしょ!?普通ながらも、平和で楽しい生活を突然壊されたのに、それがあたりまえの事のようにいわれ、私は腹が立った。

「だから何!?私に何をしろって言うの?こんな所に連れてこられたあげく、国の為に働けって?そんな事できる訳ないじゃない!!」

敬語も忘れて、怒鳴り散らす。ライアンに謝ってほしかった。しかし、ライアンは謝るどころか、こう言った。

「そうだ。お前には神子としての使命を果たしてもらわなければいけない。それに、呼び出したのはこっちじゃない。そっちから、来たんだ。」

冷静に返された言葉に絶句する。
杏里は言い返しようがなく、押し黙った。

「使命と言っても、簡単な事だ。
女神ウィクトーアに浄化の呪文というものを聞いてくるだけだ」

「嫌と言ったら、嫌!
私は何もしないし、元の世界に戻るから!」

しかし、杏里は元の世界に戻る方法など知らないのだ。意地で言っただけだ。

「まぁいい。別に今日決めて貰わなくてもいい。たが、ここでじっとしてても、元の世界に戻れる事はないぞ。
しっかり考えろ、杏里」

そう言って、ライアンは去って行った。
残された杏里は、ベッドに座り込んだまま、放心状態だった。

「今日はこのまま、お部屋でおくつろぎください」

リンの言葉で我に帰った。

「うん。そうする」

「明日は、上位貴族の方々がご挨拶にいらっしゃいます。明日は忙しくなります。どうぞ、ゆっくりとお休みください」

リンに明日の予定を聞かされ、「はぁ」とため息をつく。だが、どうせ決定しているのだろう。それなら、今日は寝ていよう。

「明日は忙しそうね。じゃあ、今日は早く寝ることにするわ」

「かしこまりました。ご用がお有りの時には、どうぞお呼びください。隣室に控えておりますので」

礼をして下がったリンが、完全に扉を閉めると、ベッドにダイブした。ふっかふかのベッドに埋もれていると、自然の眠気が襲ってくる。
杏奈は、神子の使命の事など忘れて寝てしまった。





    
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