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償い

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美菜は、慎重に摩耶に訊ねた。

「ナミは。。ナミは、あの後もあなたのところに?」

美菜は、あえて〝ナミは〝という表現を使った。
あの日、摩耶を虐待したのは、美菜自身だった事は分かっている。
だが、別の人格が美菜に宿っていた事は事実であり、どうしても自分がやったという
実感がないのだ。その事を、当事者の摩耶なら分かってくれる、あの時の異常な状況を理解してくれるだろうと考えた。それに、美菜の予想通りなら、ナミは今も摩耶のところに現れている筈だ。

だは、摩耶は慌てたように首を振り即座に否定した。

「いっ、いえ!ナミさんとはあれ以来会っていません。本当です。」

ナミに口止めされているのかもしれない。

美菜は、摩耶の慌てぶりに疑惑を持ったが、これ以上追求しても彼女が認めるとは思えなかったので、話題を変える事にした。

「ねえ、摩耶ちゃん。あの時、ナミはあなたに、あれは罰だと言ってたわよね。
あなたが綺麗になるために犠牲にしてきた女の人だちへの償いだと。。

あれは一体どういう事なの? 〝裏の性〝ってなんなの?

美菜は、摩耶に問いかけた。
すると、摩耶はあの日の事を思い出すように外の景色を見ながら、ゆっくりと語り始めた。
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