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綺麗になるという事
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しおりを挟む「そして私は。。」
美菜は呟いた。
いつの間にか辺りには夕暮れが迫っていた。
寒くなってきた為、店員に店の中の席に移る事を提案されたが、美菜と摩耶はそのままテラスにいる事にした。
「私はその後、意地になってミスコンに参加し続けた。メイクや審査員ウケする立ち振る舞いも勉強した。考えられる事は全てやったつもりだった。
なのに。。どれも入賞どころか、予選通過が精一杯という結果だった。」
「翌年のミスキャンパスにも出場されたんですよね?」
摩耶に訊ねられ、美菜は苦笑いしながら頷いた。
「就職活動の合間を縫ってね。でも、翌年も予選落ち。。上位はやっぱり高等部の独占だった。」
「結局、私は〝綺麗になるという事〝がどういう事なのか、分かっていなかったのね。。」
美菜は上着を羽織ってから、改めて姿勢を正した。
「卑屈さの滲み出た、あの頃の私はさぞ醜かったでしょうね。
いや。。
あの頃なんて表現は間違っているわね。正しくは、〝去年までの私〝、〝ナミが現れるまでの私〝かな。。
結局、自分と真摯に向き合う事のできなかった私は、人間的にも成長しないまま社会人になってしまった。
もちろん、私も本当は分かっていたと思うの。もっとみんなに受け入れられる様な人間になりたい、内面から魅力が染み出る様な、本当の綺麗さを手に入れたいと。。
でも、凝り固まってしまったプライドがそれを邪魔し続けた。」
麻耶は頷いた。
「ナミさんも言ってました。美菜さんの強いプライドが、表に出ようとしていた〝裏の性〝を抑え込んでいたと。。
美菜さんの本能は、美菜さん自身を苦境から救うには、〝裏の性〝を解放するしかないと分かっていたんですね。
なのに、美菜さんはそんな本能の訴えを無意識のうちに拒否し続けた。
そして、困り果てた美菜さんの本能は、ついに苦肉の策を編み出した。
それが。。」
「私自身に意識させる事なく、〝裏の性〝を表に出す事だったのね。
その為に、私の中にナミという人格が出現した。」
美菜の中で今、ようやく全ての事実が1本の線で繋がりつつあった。
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