瞳の奥の漁火～女をいたぶる狂気の女～

テクニック

1

 女は、黒いパーティドレスを着て、床に膝をついていた。褐色の肌が野生的な、美しい女だ。
細く長い手が、艶やかで何とも魅力的だ。

女は、全身を震わせながら背後に立っている女に怯えていた。

背後の女。。デモンストレータの卵は、黒いスーツ姿で彼女に近づいた。よく見れば、責める側の女はみな黒いスーツだった。

やがて、黒スーツの女は、目の前でひざまづく女の背後から、彼女の右腕を掴みゆっくりと背中側に持っていった。

そして次の瞬間、黒スーツは一気に彼女の腕を大きく捻った。

気はボキッ！〝

ドレスの女の小枝の様に細い腕は、肘の付近から呆気ないほど簡単に折れてしまった。


「ぎやあああぁぁぁ～っ！痛いいぃぃぃ～っ！」

黒いドレスの女は、絶叫を上げると、そのままうつ伏せに床に倒れ込み、右腕を押さえて動かなくなった。

本当は、転げ回りたい程の激痛に違いないが、腕を動かすことが出来ない為、必死で耐えているのだった。

「何をやってるの！」

その時いきなり罵声が飛んだ。
摩耶がそちらを見ると、黒スーツが別の年輩の女に怒られている。
どうやらインストラクターらしい。

「さっき説明したわよね。一気に折ってしまったら、この女の苦痛も恐怖も十分に引き出せないで終わってしまうじゃないの。こういう場合は、まず数カ所にひびを入れてから、ゆっくりゆっくり、負荷をかけて折っていくの。ミシミシという音が聞こえる状態をできるだけ長くキープするイメージよ。
こうすれば苦痛を最大限に引き延ばす事が出来るわ。
さあ、分かったらこの子の左腕を使ってもう一度！」

「はい！」

黒スーツは、目の前でうずくまっている女の左腕を無理矢理掴んで手元に引き寄せた。

再び強引に膝をついた体制にさせられたドレスの女は、右腕の激痛に泣き叫んでいた。

左腕で支えたいのだが、黒スーツにガッチリと二の腕を掴まれていてどうする事もできない。そして、間もなくその左腕も使えなくなるのだ。

摩耶は、目の前で行われている過激なパフォーマンスにすっかり見入っていた。