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神の手

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2人は、店内の奥に入っていった。゛STAFF ONLY゛と書かれたドアを開けると、下りの階段が現れた。地下に降りていくと、そこには意外な光景が広がっていた。

そこは、廃墟になった古いゲームセンターの様な場所だった。
ゲーム機のガラスは割れ、至る所に蜘蛛の巣が張り、奥にはレーンに穴の空いた
小さなボウリングコーナーがあった。

二階堂に肩を押され、薄暗いフロアの中を進んだ美咲は、中央のソファに座っている人影に気づいた。

そこには、美咲が財布を盗った赤いコートの女と、連れの男が座っていた。

「連れてきました。」

二階堂は赤いコートの女、美羅に頭を下げた。

「ご苦労であった。」

隣に座っている男が応えた。美羅と一緒にマークトゥエイン号に乗っていた男だ。

美羅は、二階堂の方を向かずにじっと美咲を見つめていたが、やがて立ち上がると、ゆっくりと美咲の方に近寄っていった。

 美羅は美咲の目の前まで来ると、美咲を品定めするかの様に、じっと見つめながら言った。

「噂通り綺麗な子ね。でも。。」

美羅は、美咲の後方に視線を送りながら軽く頷いた。

「薄汚い泥棒猫には、たっぷりお仕置きしなきゃね。」

次の瞬間、美咲は背後から強い力で両腕を掴まれた。黒スーツ姿の屈強そうな男2人だった。2人は美咲を床に腹ばいにさせて、強い力で押さえつけた。

上から見下ろす美羅。
その手には、木刀が握られていた。

「命まではとらないから安心しなさい。ただし、スリは二度と出来ない体になってもらうわ。」

黒スーツの2人は、美咲を押さえつけたまま彼女の両腕を前方に伸ばさせた。
そして、更にその両腕を、別の男2人が現れ、両サイドから肘のあたりを強く踏みつけて動かせなくした。

「ま、待ってお願い!」

美咲は美羅の見上げて叫んだ。
しかし、美羅はそれを無視すると、木刀を振り上げた。

「両手を砕いてやるわ!」

美羅はそう言い放つと、美咲の右手に向かって、木刀を勢い良く打ち下ろした。

゛バキッ!゛

フロア内に大きな音が響き、木刀は、美咲の右手の甲を直撃した。

「きゃああああああぁぁぁぁぁ~っ!痛いいいいいぃぃぃ~っ!」

美咲は、激しい痛みに絶叫を上げた。

美羅は、美咲の苦痛に歪む顔を見ながら、残酷な笑みを浮かべた。

「私の財布を盗んでただで済むと思ったら大間違いだよ。殺さないのは、簡単に殺しちゃつまらないからだよ。さあ、もっともっと地獄を味わうがいいわ。」

美羅は、木刀を再び振りかざすと、美咲の両手を滅多打ちにし始めた。
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