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向こう側の光へ

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「あうっ、い、痛いっ!」

まだそんなに強い力で締め付けられている訳ではなかったが、ナオに特殊警棒で滅多打ちされたダメージの残る右足は、それだけでも強烈な痛みを発した。

だが、こんなものはまだほんの序の口の筈だ。じきに比べ物にならない位の痛みがやってくる。この程度で根を上げる訳にはいかなかった。

奈緒美は歯を食いしばって痛みに耐えた。

「どう、痛い?」

摩耶は奈緒美の股を締め付けながら話しかけてきた。

「は、はい・・す、凄く痛。。。
・・あっ!あっ!んああああああぁぁぁぁぁ~っ!痛いいいいぃぃぃぃ~っ!」

だが、奈緒美が答え終わらないうちに、右足を凄まじい痛みが襲った。



摩耶が奈緒美の足を締め付ける力を急激に強くしたからだった。

摩耶は苦痛に歪む奈緒美の顔に自分の顔を近づけて、じっと見つめた。

「痛いですって? 痛いってのはこういう事をいうのよ。分かった?」

穏やかだが厳しく冷酷な口調だ。

「あうう~っ! わ、分かりました。。ご、ごめんなさい。。はあ、はあ、はあ、あああぁぁぁぁ~っ、い、い、痛いっ。。。はうううぅぅぅ~っ!」

奈緒美は右足の痛みに耐えながら必死に悲鳴を上げるのを我慢した。しかし、どうしても声を出さずにはいられなかった


「声を上げるのを我慢しろとは言っていない。相当な痛みだから。ただ、あなたがこんな初期の段階で弱音を吐くのが気に入らなかっただけよ。今のうちだけでも意思の強さが感じられればそれでいいの。
どうせ次の段階になれば、あなたは挫ける。それはやむを得ない事よ。あなたが向こうの光を見る為には、限界を超えた苦痛を味わわなければなければならないのだから。」

摩耶は、すぐ目の前で苦しむ奈緒美に、哲学でも教えるかの様に、静かに語ると、道具を押さえたまま腰を上げた。
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