上 下
368 / 424
ラストイリュージョン

2

しおりを挟む
「いよいよですね。」

和葉 の背後から、1人の女が近づいてきた。

和葉は軽く振り返って微笑みかけた。

女は、世界各国を渡り歩いてきた和葉でさえ過去に出会った事がない程の
美しさを誇っていた。

類い稀などという様な、思いつくどんな表現でさえ陳腐に思えた。
だが、だからといって、仮に彼女がハリウッド大作映画の主役を演じていたとしても、
それですんなり納得がいく話でもなかった。

その美しさが、余りにも人間離れしている為、どの様なシチュエーションを想定
しても現実味がないのだ。

しかも、彼女は女優などとは正反対の存在。非合法組織の幹部なのだ。
全てが闇に包まれた存在の女。だが、今は和葉の人生を掌握しているのだ。

「不思議ね。確実に失敗すると分かっているのに、妙に落ち着いた気分なの。」

和葉は、マシーンに視線を移した。

「和葉様、もしマシーンが正常な状態で、本気で脱出にトライしたら、成功する自信は
ありますか?」

「ふふ。。私を誰だと思っているのかしら?  摩耶さん。」

「これは、大変失礼致しました。」

摩耶と呼ばれた女は、深々と頭を下げた。





しおりを挟む

処理中です...