上 下
381 / 424
手編みの蛇?

3

しおりを挟む
「あああぁぁ~っ、い、痛いっ。。」

美波は思わず悲鳴を上げ、背中を仰け反らせた。

鋭く切られる様な痛みと、硬い物で殴られる様な痛みが同居する表現しがたい独特の苦痛。それを不意打ち気味に食らってしまったのでは堪らない。悔しいが、アキラの期待通りの反応を示してしまった。

そして、たった一発で既に気持ちが負けてしまいつつある美波に対し、辛い゛もどき゛の連打が始まった。

゛ピシャーン!゛

゛ピシャーン!゛

゛ピシャーン!゛


アキラはリズミカルに巧みに手首を返しながら、美波の背中を打ち続けた。
シャワー室内に、鞭が肉を打つ音と美波の呻き声が交互に響きわたる。

美波は、懸命に痛みに耐え続けた。

痛い。。
本当に痛い。。

アキラを悦ばせるのは悔しいが、呻き声を出し続ける自分の口を黙らせる事は出来なかった。身悶える体を抑える事は出来なかった。

辛い。。
本当に辛い。。

でも。。

美波はアキラに責められる度にいつも思うのだった。

独りぼっちで過ごす夜の寂しさ、辛さ、寒さに比べれば、例え苦痛を味わっても、体が熱くなれる方がずっと幸せだと。生きているという実感が感じられると。

どんな形であれ、自分を必要としている誰かがいると感じられる事が、自分にとって生きる希望になるのだと。。


正面の壁にはタイルの上に小さな鏡が貼られており、苦痛に顔を歪めた美波自身の姿が映っていた。

苦痛は辛い、痛みは決して好きではない。しかし、苦痛を味わっている自分の顔が、最近なぜか一番綺麗に見える。
それは美波の心が、アキラに責められる事に悦びを感じ始めている事に他ならなかった。


しおりを挟む

処理中です...