上 下
399 / 424
ミスキャンパス

1

しおりを挟む
○月○日○曜日 
東京都港区 恵愛女子大三田キャンパス講堂

「エントリーナンバー13番 蓮見理恵さん!」

理恵の名前が読み上げられると、会場内にどよめきと歓声が上がった。
観客は一斉に立ち上がり、今年度のミス惠愛に選ばれた彼女に、惜しみない拍手を贈っている。

自分がミス惠愛だなんて。。。

3ヶ月前、いや今日まで、一体誰が予想しただろうか。
それどころか、エントリー受付が始まった9月初旬以前、ほとんどの学生は理恵の存在すら知らなかった筈だ。

理恵は、それ程地味な女だった。

だが。。。

自分の人生は、これから大きく変わろうとしている。

目映い程のスポットライトを浴びながら、理恵は人生最良の時に酔いしれていた。

やがて、表彰式が終わり、理恵が控え室に戻ってくると、1人の女が彼女に話しかけてきた。

「蓮見さん、優勝おめでとうございます。」

理恵が振り返ると、そこには雑誌のモデルの様な、ミニスカート姿の女が立っていた。

1年生の葉山優だった。大学内でも評判の美人で、当然今回のミスコンにも出場していた。下馬評では、優勝候補の筆頭に上げられていた。

結果的には理恵が優勝したが、優も準ミスに選ばれており、前評判通りの実力を示した形となった。


理恵は、優の様な美しい女にミスコンで勝てた事が、自分でも信じられなかった。それほど、優は全身から女としての魅力を漂わせていた。

さっきまでの気持ちの高揚は消え失せ、急速に自信が失われていく。。

「あ、ありがとう。葉山さん。貴女も準ミスおめでとう。」

理恵は素直に優を祝福したつもりだったが、優のプライドを刺激してしまったらしい。

彼女は、急に顔を険しくして、理恵を睨んだ。

「ふん、審査員の目も節穴ね。こんな女をミスに選ぶなんて!」

優は、理恵が先輩である事も忘れて、理恵に悪態を付いた。

「あなたがそんなレベルじゃない事は、あなた自身がよく分かってる筈よね。全く、ヘタクソなバイオリンで審査員の同情を引いちゃってさ。
・・まあいいわ。私はこんなちっぼけな名誉なんて興味ないの。私は雑誌モデルをもう3誌も掛け持ちしてるし、とっくに全国区なんだから。」

優は、自分が言いたい事だけ言うと、足早に更衣室を出ていった。

しおりを挟む

処理中です...