帝華大学物語

風城国子智

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春のお弁当

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 小鍋の中の煮物の冷め具合を確かめてから、炊きたての御飯に合わせ酢を振り入れて切るように混ぜる。作った寿司飯の半分には細かく刻んで甘辛く煮た根野菜を混ぜ込み、同じく甘辛く煮つけた油揚げの中に押し込んで稲荷寿司に、もう半分は、巻き簀に乗せた海苔の上に乗せ、卵焼きと干瓢、胡瓜と紅生姜を具材にした巻き寿司に。小ぶりの重箱に隙間無く詰め込めば、お花見弁当のできあがり。
「彩りが、少ないな」
 目を細める怜子さとこの脇をすり抜けた、料理人の父の声に、頷く。しかし、今回の弁当は見た目よりも内容。肉と魚を断固拒否する香花きょうかさんも食べることができるものでなければならない。だから。微笑む父を見上げ、怜子も少しだけ、微笑んだ。
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