35 / 47
after story 3
1
side 京弥
「縞さん、お風呂に入りましょうか。」
ベッドに横たわる縞さんを抱き上げて浴室へ向かう。
彼が僕を選んでくれてから、1ヶ月。
もう季節はふたつ越え、みっつめにさし掛かろうとしている。
縞さんは精神的なストレスが減ったからか、起きている時間は圧倒的に長くなった。
ただ、半年治療してやっとぎこちなく手を動かせる状態になったところで、僕の髪を力いっぱい引っ張って無理やり動かしてしまったためまた痛めてしまいうまく手は使えない。
耳は聞こえるようになったものの視力と味覚はあまり回復しておらずまだまだぼろぼろの状態だった。
今の縞さんはとても不安定だ。
まるで天秤でゆらゆらと遊ぶのを楽しんでいるかのように。
起きたとき僕が近くにいないと筋力が落ちて壁伝いでやっと歩けるくらいなのに僕を探し続ける。
縞さんの視界の中に常に僕がいないと不安に駆られてしまうのだ。
なのに
「縞さん、気持ちいいですか?
痒いところとか無いですか?」
「うん、極楽だよ。
手さえきちんと動かせれば自分でやれるのに……。
わざわざごめんね。」
「治っても僕にやらせてください!
縞さん、すべすべで気持ちいいから……。」
「京弥くんに比べたら肌の張りもないしなんか複雑なんだけど……。
あ、そうだ、家事で俺ができるのとかある?」
縞さんは甘えるのがとても下手だ。
できること、できそうなことは自らやってしまおうとする。
もっともっと頼ってほしいんだけどな。
俺がいないとだめになるほどに。
一緒にお風呂に入って、一緒にご飯を食べて、一緒に寝る。
こんなありふれたことがとても幸せ。
大学で単位を取り終えたとはいえ、どうしても行かなきゃいけないときは縞さんが起きたその瞬間に僕に電話をさせた。
調子はどうか。
サイドテーブルに用意した料理のうち何をどれだけ食べたか。
枕元に置いてある本で何を読むか。
帰ったら何かしたいことがあるか。
欲しいものはあるか。
細かく聞きながら画面越しの縞さんの様子を眺めた。
あたりまえのように僕の質問に答える縞さんを見て改めて思う。
この人をすきになったのはもちろん最初に出逢ったときの穏やかさや憂愁さの混ざった雰囲気に惹かれたのもあったのだろうけど無意識に、直感的に、縞さんの内側に秘められた僕と似通った部分を感じ取ったから、というのもあったのだと今になってわかる。
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
世界一大好きな番との幸せな日常(と思っているのは)
かんだ
BL
現代物、オメガバース。とある理由から専業主夫だったΩだけど、いつまでも番のαに頼り切りはダメだと働くことを決めたが……。
ド腹黒い攻めαと何も知らず幸せな檻の中にいるΩの話。
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。