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after story 3
3*
side 縞
熱い……。
目を覚ましたときから身体の中心がとろ火で燻られているような感覚があった。
それがなんだか懐かしいようでいてなんとなく怖くて隣で眠る京弥くんに縋りつく。
「ん……縞さん……どうかした?」
まだ瞼が上がりきっていない彼を見て
「あ…ご、ごめんね、起こしちゃったね。
なんでもないよ。」
些細なことで起こしてしまったと縋りついた身体を離す。
縞さんからくっついてくれるなんて嬉しいなぁと言って俺を引き戻す。
京弥くんの目の下にはうっすら隈があった。
たまに大学に行くがほぼ家にいる京弥くん。
でも家にいても俺が入っちゃいけない部屋にたまに籠ったときにはものすごい速さのタイピング音が長時間聞こえることがあるから忙しいんだと思う。
何の仕事をしているのかは知らない。
聞いても調べるお仕事と言葉を濁していたから俺が知らなくていいことなのだろう。
それが分かればそれ以上は聞かない。
そんな彼は今日大学に行く日だったらしく、心配そうに眉を下げてすぐ帰ってくるからと出ていってしまった。
サイドテーブルに置いていかれたごはんに手をつけるけれど甘味や苦味がわからずこの馬鹿になった舌は酸味しか感じないしそれよりも身体をじわじわと燻る熱が気になってしまって数口食べて手を止めた。
心なしか視界もぼんやりしている気がする。
殴られ続けた後遺症で片目の視力が落ちて遠近感もわからなくなっているし視界はぼんやりしているんだけれどなんか今は視界が白んでいる感じなのだ。
思考も見えない"なにか"に冒されていく。
……なにが起こっているんだ。
……怖い、怖い、怖い怖い怖い。
恐怖に呑まれそうで
手元にあったタオルケットを握りしめると
フワリ
蠱惑的な香りが鼻腔を擽った。
あ、京弥くんの匂い……。
タオルケットで身を包んでベッドから足を下ろし壁を伝いながら歩く。
京弥くんの服の入っているクローゼットをそっと開けた。
「……ない……ない、ない、ない!
……なんで……?」
白い扉の向こうは京弥くんが普段あまりつけないアクセサリーとかしかない。
これじゃあ京弥くんの匂いが染みついてないから意味がない。
お風呂やトイレのとき以外めったに出ないこの部屋をふらふらと出る。
今日に限って少ない京弥くんの匂いがするものを少しずつ集めていく。
ソファに掛かったままの黒いカーディガン。
洗濯籠に入っていた白いシャツ。
自分が着ていたものを脱いでそれらを身につければ京弥くんに抱きしめてもらっている気分になれた。
部屋を一周しただけでポンコツな足が限界を迎えてなんとか部屋に戻ってベッドに沈む。
……でもこれで京弥くんの匂いでいっぱいだ。
小物などもシーツの周りに散らして上から京弥くんの匂いがするタオルケットで自らを覆う。
これでいい。
あとはひたすらその中で京弥くんの僕を呼ぶ声や表現を思い浮かべて主張を続けるペニスを慰める。
わけもわからず涙がはらはらと落ちてきてただただ気持ちいい。
「あ、あ、ふっ……きょ……やくんっ
きもち、きもちい……っあ、ん、んっ」
熱い息を零しながら浅く吸って、吐いて全神経を勃ち上がるものに注ぐ。
だから俺は気づかなかった。
開けっ放しにしていた部屋の戸口に京弥くんが立っていて血湧き肉躍るような目でこちらを見ていたことに__。
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