気まぐれ店主ののんびり?生活

朝比奈和花

文字の大きさ
1 / 120
第1章

1




王都の王城下の貴族街と市民街の間、一流店や大きな商会の大店が立ち並ぶその通りの後ろ。
少し入り組んだ道の行き止まり。
よほどの用がない限り人は入ってこないだろうその中に一軒の店があった。

扉のところには小さな看板が掲げられているが、いまいち目立たない。



「今日もぼちぼちやりますかねぇ。」



藤花とうか悠理ゆうり、異世界に飛ばされるという不運な男の営む店だ。

















働いて働いて働いて、働きまくって貯めた資金を元に夢だったカフェをオープンさせるところまできた。
いよいよ明日オープンで、最終確認のために仕込みや準備をしていたところ、バキバキとした嫌な音が聞こえ、天井を見上げたら天井に穴が開いていたところまでは覚えている。





目が覚めたとき、俺は床に寝っ転がっていて、天井は特に穴なんて開いていなかった。
白昼夢でも見ていたのかと思い、買い忘れていたものを買いに行こうと店の扉を開ければ、そこには見慣れない景色が広がっていた。


元々は道路に面した目立つところに店舗を構えていたのだ。
なのに今目の前に広がっているのは一本の小道とその先に見える四角い光だけ。

恐る恐るその道の先を覗きに行けば、大きな通りとその通路に面して並ぶ店たち。
でも明らかに日本の景色じゃなくて、車もなければコンクリートの道でもない。
外国にしては来ている服はどこか古めかしく感じる。


いや、夢の中なのだろうと頬を叩いたり、腕をつねってみたら痛くて、現実なんだと認識した。


やっと、やっと、夢だったカフェを開こうとしたところにこれかと男泣きした。
ひとしきり泣いて、これから先どうしようかととりあえずコーヒーでも飲もうかとキッチンに行けば、見慣れない木箱が置いてあった。





なんだこれ?と箱を開ければ、手紙と鍵の束と革の鞄が入っていた。

手紙は俺をここに送り込んだ人かららしく、この世界のこと、勝手に改良された家のこと、鍵の説明……諸々とあとはメンゴ!ガンバ!って締めくくりだけ。

思わず手紙を握り潰してしまった俺は悪くない。

手紙を読んだせいで、神の悪戯で異世界に飛ばされて、もう日本に戻れないこともわかってしまってある意味もう割り切ってしまった。

「まぁ、これは良かったかな。」

家電製品は軒並み見た目は変わっていたけれど、機能は変わっていなかった。
中には地球にいた頃より機能が上がっているものまであった。
この世界は電力はなく、魔力や魔法で動いているのに使うことができたのは少し理解が追いつかなかったが、異世界だからって理由でとりあえず納得することにした。


驚いたといえばこの革の鞄。
この中身はどんなものでも保管できるうえに入れたものはそのときから劣化せず、鞄を落としたり、無くしたりしても自分のところに帰って来るし、自分以外は物を取り出すことはできないらしい。

そのせいかカフェにあったはずの食糧庫はなくなり、その分事務室が広くなって事務室に食品棚がふたつ置かれているだけになっていた。




2階の居住スペースはバスルームにトイレ、寝室と書斎。
余っている部屋が2つ。
日本で購入したときより、一回り全てが広くなっている。

それにバスタブが猫足バスタブになっていたり、冷蔵庫が木製になっていたりと、この世界に馴染むようなデザインに変更されていた。








その日は何が売っているのか、近所にはどんな店があるのか、何が必要になるのか、など市場調査で全てが終わったのだった。






感想 48

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。