気まぐれ店主ののんびり？生活

第2章

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「「ユーリ終わったー！」」

「じゃ、2人でゆで卵の殻剥いて、水につけておいて。
卵の臭みがなくなるから。」

「「うん。」」

「ユーリさん終わりました。」

「その大根を芯が残るくらいで下茹でしてください。
あとキャロもよろしくお願いします。」

「わかりました。」

おでんを美味しく作るにはごった煮にしないでその材料ごとにベストな状態で準備すること。

「ま、こんなものかな。」

「「完成？」」

「ここから魔法の調味料をかけまーす！」

「「魔法！？」」

キラキラした目を向けられるところ悪いけれど。

「そう、それは……時間と寒さでーす！

美味しく食べられるのは今日の夜かな。」

おでんは冷ましているときにぐ、と味が染みるのだ。

「「えー！」」

「まぁまぁ、ユーリさんの言うことに間違いはないでしょう？

それに楽しみに待つのも醍醐味な料理なのでしょう。」

さすがエルヴィスさん、わかってる。





やることがなくなったからと今日の雪かきでさらに高くなった雪山に双子はそりを持ってまた出て行った。
元気だねぇ。


「それにしても、おでん、楽しみです。」

自分で作ったからか、手間暇がかかるからか、エルヴィスさんがわくわくしているのがわかる。

「お酒のあてにもなりますよ。」

「ますます楽しみです。」

何気にエルヴィスさんはお酒好きだ。
そして枠。



「ユーリさんのごはんはお酒も美味しくなりますよね。」

「それは嬉しいですね。
そういえばエルヴィスさんは実家に帰ったりしなくてよかったんですか？」

「…………故郷に帰るよりユーリさんのそばの方が居心地がいいものですから。」

気になる人から言われたらドキドキしちゃうじゃないか。


……俺、別にゲイじゃなかったんだけれどなぁ。
日本で暮らしていたときは付き合った人は数人いたけれど、いつも

「悠理くんって何か違うんだよね。
それに自分より料理が得意ってなんかやだ。」

「悠理くんって顔はいいんだけれど、付き合っていても面白くないんだよねぇ。」

そんなこと言って数ヶ月で別れる、ていうのが常だった。
それに付き合ってくれたのはみんな女の子。




俺も誰と付き合っても虚しかった。




その点、エルヴィスさんも双子もいつも俺の料理を食べて幸せ～って顔をしてくれる。
エルヴィスさんと過ごす、たまに開かれる夜のお茶会はいつも楽しくて、穏やかな時間で、これから先もこんな時間を過ごしていきたいと思える人だった。

元々同性の恋愛に偏見がない上に、身近にチェルロさんとラディカがいることもあって、エルヴィスさんに対しての気持ちもするりと受け止めることができた。

でも、告白してだめだったときこの時間が崩れ去ってしまうのが怖い。


最近はそんなことを考えてもやもやしたりしなかったり。