16 / 36
episode 2
9
しおりを挟む「本当にごめんなさいね。
急に来てしまって……。
陽さんのおめでたの知らせを受けて、いてもたってもいられなくて来てしまったの。」
頬に手を添えて申し訳なさそうに言ってくるミシェルさんだが、どこか口調はふんわりしている。
そういえば、妊娠したって報告をしたときリュカさんの周りの人たちすごかったなぁ……。
病院では冷静だった伊南さんは妊娠発覚の数日後には、いつでも来てもらえるように、と3階の伊南さんの家の大部屋ひとつをおもちゃ部屋に変えてしまった。
ただでさえ伊南さんはしょっちゅうりぃくんを遊びに誘ってくれて、伊南さんの部屋にはりぃくんのすきなヒーローハンバーグ!のビデオがたくさんあったのにもかかわらずだ。
双子のためのガラガラやぬいぐるみのついたくるくるまわるオルゴールのおもちゃなどもたくさん用意されていた。
そんな元々りぃくんのために色々あった部屋には新たにトランポリンなど明らかに双子には早くてりぃくん向けのものや、ショッピングモールのこどもが遊ぶところにあるエアー遊具まであった。
「これで陽くんがりぃくんを外に遊びに連れて行くのが難しいとき、いつでもりぃくんがのびのび遊ぶことができるし、いっくんだいすきって言ってくれるだろ!」
そう言いながらりぃくんに合い鍵まで渡そうとしていて慌てて止めたものだ。
クロエさんと伊鶴さんは身体にいいと言われる食品や飲み物、妊娠線や肉割れが起きないようにするクリームなどを大量にくれた。
それはもうリュカさんの額に青筋が浮かぶほどに。
「ふふふ、生まれたらぜひ抱っこさせてちょうだいね。」
と、ふたつの美しい笑顔に圧倒されて僕はお礼しか言えなかった。
それに比べてみれば、アランさんたちが来てくれたことは急だったというだけで大したことじゃ……
「私たちしばらくこちらに住むことにしたんだ。
ひ孫が増えてますます楽しいことがたくさん起きそうだしな!
屋敷はここから車で10分くらいのところにあるから、今日はその挨拶も兼ねて来たよ。」
大したこと…だった…。
「陽!大丈夫ですか!?」
「おや、リュカのそんな焦った顔が見れるとは思わなかった。
お邪魔しているよ。」
話を飲み込めないところにちょうどリュカさんが帰ってきてくれた。
連絡をすぐ見てくれたんだろう。
良かった……。
かくかくしかじか……ことの顛末を話す。
「はぁ……。
ふざけた冗談を言っているなと思って放っておいた私が馬鹿でした。
……ルグゼンブルクはどうするんです。」
「レイに当主の座を譲った。
待ち望んだモノが手に入るんだ。
本人は嬉しくて嬉しくて仕方ないだろうな。」
「あの自分の利益しか考えていない重役たちをどうにかできるでしょうか?」
「そこは当主になった者の責任だろう。
私は本来ルフェーブルに入っているからルフェーブル家の者だしな。
地盤はしっかり固めてきた。
後はレイの力量次第だ。
それにルフェーブルの事業は長らくミシェルに任せっきりにしてしまていたからな。
今度は私が頑張らなければ。」
「はぁ……、そうですか……。
それでなんでこの時期なんです。」
「それは決まっているじゃない。
陽さんはこれから大変でしょう。
少しでもお手伝いできればと思ったのよ。
それにりぃくん、もう数ヶ月後には小学生でしょう?
こんな大事な行事を見逃すわけにはいかないわ。」
床に広げていたパズルでりぃくんと遊んでくれていたミシェルさんがアランさんの言葉を引き継ぐように説明してくれた。
こうして突如こちらに引っ越してきたふたりが日常に混ざりどんどん慌ただしくなっていくのだった。
episode 2 END.
554
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる