僕の幸せ

朝比奈和花

文字の大きさ
45 / 101

44

しおりを挟む



さすがにいつもと違うし、りぃくんのお誕生日っていう最も大切な日だから綺麗な服を着た。

白のロングTシャツに綺麗な薄青のオープンカラーシャツを合わせ、たくさん歩くだろうから黒のスキニーパンツにキャンバスシューズを選んだ。

りぃくんも僕とお揃いの薄青のTシャツに白のサロペットと黒のキャンバスシューズ。

白に薄青のリボンのついたカンカン帽をかぶって、玄関のドアの前でそわそわと待つりぃくんにまた僕は携帯のカメラを起動した。


インターネットとかメールとかまだよくわからないけれど、カメラを起動することと、りぃくんがよりかわいく写るカメラアプリの操作だけはお手の物だと思う。


ピンポン


玄関のチャイムにりぃくんが来た!とぴょこん、と立った。
今日のりぃくんは増してかわいいぞ。
持つかな、僕の心臓。

僕の中のりぃくんニュースではかわいい警報が発令中だ。

携帯の写真フォルダの容量が不安になってきた。




「リュカ、おはよう!」

「おはようございます、りぃくん。

5歳のお誕生日おめでとうございます。」

リュカさんは荷物ごと軽々とりぃくんを抱き上げる。

……仲がいいな、相変わらず。
ちょっとモチが焼けそうだ。


リュカさんはいつものスーツで前髪をあげている姿とは異なり、前髪を軽く横に流し白のコットンTシャツに薄紺のセットアップという爽やかな格好だった。

彫りの深い顔立ちだから大人っぽく見えて、今年で二十五歳になり、僕と五歳しか変わらないと知ったときは、目が飛び出るくらい驚いたけれど、この装いなら少し幼く見える。

といっても、26歳には見えないけれど。


「陽さんもおはようございます。
2日間よろしくお願いしますね。」

「おはようございます。
こちらこそよろしくお願いします。

……それに、旅行に付き添ってくれるのはその、心強いです。
……ありがとうございます。」

あのときできなかった謝罪を言おうとしたが、これから始まる旅に水を差してしまうかと思ったから、感謝に変えたが、なんだか、思ったより恥ずかしかった。

「……いいえ、楽しい2日間にしましょう。」



外は晴天でまさに旅行日和。
さぁりぃくんのお誕生日旅行の始まりだ!


玄関の外にはパールホワイトのsuvというらしい、そういう形の車が止まっていた。

仕事では車高が低い車を使うらしいが、今回は車高が高いほうがりぃくんが外の景色を楽しめるだろうと配慮してくれた。

本当にこういう細やかな気遣いができる人なのだ。


車の中は程よい涼しさだった。
りぃくんは景色が見たい!と助手席に行ってしまった。

高級そうなこの車にチャイルドシートがあるのが違和感しかない……。

「陽さん、そこの籠にブランケットが入っているので寒かったら使ってくださいね。」

「あ、ありがとうございます。」

「さぁりぃくん、行きますよ。」

「はぁい!しゅぱつしんこーう!」

りぃくんの元気いっぱいの声にリュカさんは微笑みながら車を出した。


途中でコンビニで飲みものや軽食を買って車は進んでいく。




「……陽さん、りぃくん寝ちゃったのでそこの薄手の毛布をかけてあげてください。」

りぃくんに毛布をかけながらリュカさんに質問する。

「あとどれくらいなんですか?」

「そうですねぇ、あと1時間ちょっとですかね。」

「そうですか。

そういえばなんでリュカさんて僕にリュカって呼ばせたんですか?

前に近所の人達には西園寺って紹介していましたよね?
あれは偽名だったんですか?」

あのときからずっと気になっていたけど聞けていなかった。

「大学のとき、フラヴィオ=ルグゼンブルクという名で活動していたので世間ではその名のほうが浸透しているのですが、日本では母が日本人なので西園寺さいおんじ伊織いおりと名乗っていた方が都合がいいことが多いんです。

もちろん正式名は最初に紹介した通りリュカ=フラヴィオ=イオリ=ルグゼンブルクですよ。

そしてリュカと陽さんに呼んでほしいのはこのファーストネームは、家族や特別な人にしか呼ぶことを許していないからです。」

なんかとてつもない事実を知ってしまった気が。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

あの日、北京の街角で

ゆまは なお
BL
5年前、一度だけ体を交わした彼が、通訳として出張に同行するーーー。 元留学生×駐在員。年下攻め。再会もの。 北京に留学していた上野孝弘は駐在員の高橋祐樹と街中で出会い、突然のアクシデントにより、その場で通訳を頼まれる。その後も友人としてつき合いが続くうちに、孝弘は祐樹に惹かれていくが、半年間の研修で来ていた祐樹の帰国予定が近づいてくる。 孝弘の告白は断られ、祐樹は逃げるように連絡を絶ってしまう。 その5年後、祐樹は中国出張に同行するコーディネーターとして孝弘と再会する。 3週間の出張に同行すると聞き、気持ちが波立つ祐樹に、大人になった孝弘が迫ってきて……? 2016年に発表した作品の改訂版。他サイトにも掲載しています。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

処理中です...