僕の幸せ

朝比奈和花

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リュカさんからその名で呼んでくれと言われたが理由を聞いて恐る恐るもう一度問う。


「僕たちがそんな特別な名前を呼んでしまっていいんですか?」

「私は貴方だからこそ、このリュカという名前を呼んでほしいんです。

あ、陽さん、そういえばプレゼントしたリュックサック、使ってくれたんですね。

とても嬉しいです。」


バックミラー越しに微笑みが送られる。

貴方だから呼んでほしいんです、という言葉の意味を聞こうとしたのに話を逸らされた気がする。

「……デザインと使い心地がよかったんです。」

リュカさんからもらったリュックはたくさん収納できてとても便利だった。


「ふふ、そうですか。

そういえば陽さん、今回国内の旅行を選んでいましたが、海外に行こうとは思わなかったんですか?」

「……リュカさんはどこか抜けてますよね。」

「……?」


本音が漏れた。


「……初めての旅行で海外はリスクが大きいでしょう?
……Ωの僕にとって。」

Ωひとり、子連れで海外旅行は何かあったら、と考えたとき恐怖しか感じない。

それに、海外に行って発情期が来てしまったら、りぃくんを安全にシェルターまで連れて行けるのか、自分の見てくれる病院があるのかを事前に把握しておかなければならない。

憧れで留めておくくらいでちょうどいい。


「じゃあ行ってみたい国はありますか?」

「そうですね……スケールの大きい話で想像がつきませんね。

そうだ、リュカさんはどこ出身なんですか?」

「私はフランス出身です。
育ちはほぼイギリスですけどね。

でもこの身体に流れる血は日本の他にも、ドイツ、フランス、イタリアと多国籍ですから、もはやミックスですね。」

「なんだかすごい国際的。」

「まぁ政略結婚も昔はしていたみたいですからね。」

「じゃあリュカさんは日本語や英語、フランス語と3か国語話せるんですか?」

「いえ?英語、フランス語、日本語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語、中国語なら話せますよ。

アラビア語、ロシア語などは日常会話程度しか嗜んでないですが…。」

僕は間抜け面を晒していたと思う。

もうリュカさんハイスペックすぎて、本当に26歳なのか確かめてしまった僕は悪くない。




「さぁ着きましたよ。」

車から覗いた看板にはここから京都と書かれていた。

「きょう…と?」

「はい、ここがりぃくんの望んだところですよ。」

「僕、京都に行ってみたいって言ったから…?」

りぃくんはとても優しい子だ。
以前ちらりと言った言葉に合わせてくれたのかな…。

「京都には水族館や動物に触れ合える施設があります。

それに歴史的で国宝になっている寺社はりぃくんの知的好奇心を刺激しますし、少し足を伸ばせばテーマパークもあります。

りぃくんはそれを知って自らここを選んだんだと思いますよ。


……あ、りぃくん、起きましたか?」

「う……ん、おはよ~う……。
もう、着く?」

「いえ、もう京都には着いていますよ。
車と荷物を置きに今は宿泊先に向かっています。」

京都は公共機関や歩いて散策した方がいいらしい。
僕はまた自己嫌悪しそうになったけれどリュカさんの言葉に少し救われた。






「「うわぁ……。」」






リュカさんが旅館の方に車を預け木造の門を空けるとそこは別世界だった。

萌ゆる緑の林にところどころ苔の生えた敷石。

遠くには小さな小川と池が見え、ししおどしのカコン、という音に情緒が感じられた。


空気もとても澄んでいるように感じる。



「我が旅館にようこそおいでくださいました。」


浅葱色の着物を着た物腰の柔らかい女将が僕たちを出迎えてくれた。
京都独特のイントネーションがとても上品で素敵だ。


「さっそく離れのほうにご案内いたします。」

「ええ、よろしくお願いします。」

「よ、よろしくお願いします。」

「お願いします!」

「ふふ、綺麗な方とかわいらしいお子様ですね。

こちらこそよろしくお願いいたします。」


リュカさんが慣れた様子で挨拶するので僕も遅れて挨拶する。


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