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第六章 デートはホテルで

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目が覚めたら零士さんはもういないどころか、お昼を過ぎていた。

「今日、お稽古なのに!」

慌てて起き、お義母さまに遅れる旨の連絡を入れようと携帯を手に取る。

「零士さんからメッセ……?」

通知をタップして内容を確認した。

【おはよう。
母には清華は体調が悪いので、休むと連絡してある。
今日はゆっくり休むといい】

「……はぁーっ」

口から大きなため息が漏れる。
昨晩は零士さんを酷く心配させ、しかもこんなに気を遣わせて情けない。

「今日は夕食、私が作ろう」

それが償いになるのかわからないが、せめて彼が喜ぶことをしたい。

お義母さまにも休んで申し訳ないとメッセージを入れ、遅い昼食を取る。
思わぬ時間ができたので、ドレスの試作に当てた。

「だいぶ形になってきたかな……?」

部屋にはトルソーが四台、並んでいる。
しかも全部特注だ。
私と、零士さんの体型にあわせて作ってある。

「そろそろ零士さんに試着してもらってもいいかな……?」

実際に着てもらって、調整をしたい。
それに似合うかどうか不安もある。

「……あ」

零士さんは私がやればいいが、私の衣装は誰が仮縫いドレスの様子を見てくれるのだろう?
メイドさんに頼むという手もあるが、できればプロの目も欲しい。

「誰かに頼む?」

でも、誰に?
思い浮かんだのは古手川さんだったが、零士さん、許してくれるかな……?

今日中に仮縫いを済ませてしまおうと作業に集中していたが、携帯が通知音を立てて途切れる。
零士さんか、時間的にお義母さまかもしれない。
しかし画面には古手川さんからだと出ていた。

「なんだろう……?」

通知をタップしてメッセージを表示する。

【昨日は旦那に怒られなかったか?
新妻に朝帰りさせるとかダメだよな、気づかなくて悪かった。
話は変わるけど、よかったら店を手伝ってくれないか?
詳しい話は会ってしたい】

朝帰りはないとか、早く気づいてほしい。
いや、私が飲み過ぎて寝落ちたのが悪いんだけれど。
でもちょっと不思議なんだよね。
昨日飲んだ量を考えるが、あれくらいで寝落ちたことはない。
あれかな、はしゃぎすぎたからかな。

しかし、店を手伝ってほしいというのは魅力的だ。
尊敬していた元上司のお願いだ、聞きたいというのもある。
それに私は、古手川さんが作る服が好きなのだ。
けれど、零士さんが許可してくれる気がしない。
誤解は解けた……と思うが、それでも難しそうだ。

そのあと、お義母さまからもメッセージが来た。
大丈夫か心配するもので、心苦しい。
少しドレス作りを頑張りすぎて寝不足だったの零士さんが大袈裟に心配しただけで、なんともないと返しておいた。
お義母さまも私のドレスを楽しみにしてくれている。
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