上 下
13 / 42
第2章 味方ができれば頑張れる

7.お前が可愛いから……

しおりを挟む
「気がついたか」

私の汗で貼り付く髪を剥がし、滝島さんが軽く唇を重ねてくる。

「ここでやめるか。
無理、させたし」

確かにまだ、あたまがくらくらしてはっきりしない。
……けれど。

「それじゃ滝島さん、つらいんじゃ……」

「あ?
俺は別にいいんだよ」

少し、照れたように彼が笑う。
滝島さんのボクサーパンツは、はち切れんばかりに膨れていた。

「あの。
……じゃあ」

「あっ、やめろって!」

そっと、彼の下着に手をかける。
ずるりと下ろせば反り返った立派なそれが出てきた。

「えっと……」

「茉理乃が可愛いから興奮してこうなってんの。
お前の元彼、おかしいんじゃないか?
こんなに可愛い茉理乃に興奮しないとか」

気がつけばまた、ベッドに押し倒されていた。

「その……」

「そっちのレッスンもそのうちするけど、今日はいい。
あとは普通に、気持ちよくしてやるから……」

まだ濡れそぼる蜜口に滝島さんの指が触れ、そのままなんの抵抗もなくつるんと入ってきた。

「すぐにでも突っ込みたいくらいだけど、よくほぐしておかないと痛いからな……」

「……んっ、……あっ……」

くちゅくちゅと音を立てながら、執拗に滝島さんは指で私の隘路をほぐしていった。

「た、滝島、さ、ん……」

「ん?」

指を動かしながら、うっとりと彼が私の顔を見る。

「き、気持ちいい、から」

「ん、でもよくほぐしておかなきゃていっただろ」

今度は寸止めされなかったが、何度イッタかわからない。
ゼリー飲料のようにあたまがぐちゃぐちゃになっていく。
ほぐすってこんなにするものだっけ?
英人は形ばかりにちょっとして、突っ込んでいたのに。

「はぁはぁはぁはぁ」

「そろそろいいか」

滝島さんが手際よく避妊具をつけていく。

……ちゃんとつけてくれるんだ。

そんな小さなことですら、感動してしまうのっておかしいのかな。
だって英人は何度言っても面倒くさいってつけてくれなかった。
その割に、子供ができたら面倒っていうのが口癖だったけど。

滝島さんを求めてひくつく入り口に、雄槍が押し当てられる。
ぬるぬると蜜をまとうかのように擦りつけられたあと、ゆっくりと入ってきた。

「あっ、んっ」

すっかり蕩けた媚壁を擦られ、身体を歓喜が駆け回る。
ずっ、と入っていたそれは最奥でコツンと止まった。

「茉理乃の中、熱い」

はぁっ、と滝島さんが熱い息を小さく吐く。
それだけで身体の奥がぎゅっと締まった。

「締めんなっ、て」

はぁっ、とまた、少し苦しげに滝島さんが息を吐く。
途端にビクンと私の中の彼が一回り大きくなった。

「やっ、大きくなんない、でっ」

「仕方ないだろ、それだけ興奮してるんだか、らっ!」

「ああっ!」

コツンとさらに奥への扉を突き上げられ、小さく悲鳴が漏れる。
ズルッと硬い張りで擦られた蜜壁がうねり、彼の情欲に絡みつく。

コツコツと私の身体をさらに開こうとノックを繰り返される。
堪らなくてぎゅっと枕を掴んでいた、が。

「馬鹿。
枕じゃなくて俺に抱きつけ」

その手をほどき、滝島さんが自分に掴まらせる。

「で、もっ!」

一度、英人の背中に爪を立てて酷く怒られた。
それからずっと、枕だったのに。

「気にしなくていいんだ。
ただ、感じてろ」

「あっ!」

仕上げ、とばかりに抽送が速くなる。
振り落とされそうで、きつくその背中に指を立てた。
身体の中に快楽の熱風船が膨れあがっていく。
耐えきれなくて破裂する、瞬間。

「うっ、茉理乃!」

「あ、あああっ!」

私の胎内なかで大きく膨らんだ彼の張りがビクンと劣情を吐き出す。
薄い膜越しにそれを感じ、私の意識も弾けた。

「お疲れ」

軽く唇を重ね、滝島さんの手が私の目を閉じさせる。
心地いい眠りに落ちていきながら、そういえばあの日、彼がなにか言っていた気がしていた。



翌朝、滝島さんは……コンビニで私の下着を買ってきてくれた。

「だって、汚れてる下着で帰るの嫌だろ」

確かに、そうなんですが。
でもよく平気で買いに行けるなー。

「じゃ、じゃあこれで」

昨晩のことを思いだすと気恥ずかしく、作ってくれた朝食を食べてそそくさと帰ろうとしたものの。

「送っていく」

なぜか滝島さんも一緒に玄関で靴を履いた。

「いえ、送ってもらわなくても大丈夫なので」

まだ午前中なのに、なんの危険があるのかわからない。

「馬鹿。
重いだろうが」

「あ……」

片手に提げた紙袋を見て苦笑い。
確かに十冊の本は、ずっしりと肩にきている。

「じゃ、じゃあ、お願いします」

「うん」

滝島さんが本の入った紙袋を持ち、駅に向かう。
電車では私を空いた席に座らせ、彼はその前に立った。
ちらちらと同じ車内の、女性の視線が向かう。
それだけ、彼がイケメンだから。
改めて思う、こんな人がなんで私をお持ち帰りし、さらに恋と仕事の手ほどきをしているのか。

「どうかしたのか」

他の人の視線は無視なのに、私の視線には気づいて僅かに首を傾ける。

「……いえ」

本当、どうしてなんだろ。

駅からマンションまでの道すがら、なぜか滝島さんはあちこちチェックしていた。

「この公園は夜になると死角になって危ないな」

住宅街のど真ん中の公園、そんな危険を感じたことは一度もない。

「コンビニはいいが、まさか夜中にひとりで買いに来ていたりしないだろうな」

いえ、夜中に小腹が空いてしょっちゅう来ていますが。
まあそれでこの体型だけど。

マンションに着いてもいろいろチェックされた。

「駅から徒歩十五分は遠いな」

遠いな、ってお家賃的にこの距離じゃないと無理なんですが。

「二階か。
ベランダから簡単に侵入できるな」

まさか、しようなんて思っていないですよね?

「馬鹿、女のひとり暮らしはスコープを塞いどくもんだろ!?」

そうなんですかね……。

なんだか散々チェックされ、最終、でっかいため息をつかれた。

「お前、よくこれでいままで無事でこられたな……。
まあ、あれか。
彼氏がしょっちゅう出入りしていたおかげか……」

そう、なんですかね……?

結局、ドアスコープを塞がれ、洗濯物を外の干さないように約束させられ、夜中のコンビニも禁止された。

「あと、防犯ブザーを買うこと。
……あ、いや、買ってやる。
んで、この間みたいに遅くなるときは連絡しろ。
迎えに行くから」

「はぁ……」

なんでこの人は、彼氏でもないのに私をそんなに気遣うんですかね。
わけわかんないですよ。

「約束破ったらお仕置きな」

きゅるん、と悪戯っぽく眼鏡の下で目が光る。

「お仕置きってなにを……」

「それはな……」

耳もとでぼそぼそと囁かれ、ボン!
とあたまが爆発する。

……そのお仕置きは、避けたい。

「じゃあ、わかったなー!」

手を振りながら滝島さんは帰っていったけど、本当、なんだったんだろう……?
しおりを挟む

処理中です...