極秘蜜愛結婚~俺様御曹司のトップシークレットは私!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
2 / 61
第1章 襲った償いは秘密の結婚でした!?

1.気ままなひとり暮らし――ただし、監視付き

しおりを挟む
「オレさー、翠ちゃんみたいなおしとやかな女性、大好き」

「……そう、ですか」

笑みを貼り付け、適当に相槌を打つ。
会って一時間もたっていないのにどうしてそんなことがわかるのだろう。
どうせ合コンだっていうのに白ブラウスにパステルのフレアスカート、それにカーディガンなんておとなしいスタイルで判断しているんだろうけど。

「うん。
最近の自己主張の激しい女性、苦手なんだよねー。
やっぱり女性は控えめでなきゃ」

「は、はぁ……」

「あー、それって女性蔑視ー」

突然、それまで別の男と話していた女性が話に入ってくる。

「いや、別にそういうわけじゃ……」

歯切れ悪く言いながら、男性は挽回に必死になっていた。

……話し合わせるの、難しい。

心の中でため息をつき、テーブルの上のカプレーゼを口に運ぶ。
頼み込んで連れてきてもらった合コンだけれど、この人なら、って人はいない。
それ以前に、話を続けるのが難しかった。
気に入ってくださるのは嬉しいが、勝手に向こうの理想を押しつけられる。
いくら誰でもよくてもそれはきつい。
いや、選り好みをしている場合でないのはわかっている。

美月みつきさんって実はお嬢様?
なんかそんな感じがする」

今度は違う男性がにっこりと私に笑いかけてきた。

「あ、いえ。
ごくごく普通の、家です……」

ただ、男性避けに中高大と女子校だったけれど。
決して、お嬢様などではない。
……いや、就職するまでは箱入り娘だっただけに、完全否定はできないが。

「ふーん。
じゃあ……」

「翠!」

突然、息を切らした同年代の男が登場し、その場が水を打ったかのように静まりかえる。

「帰るぞ!」

「えっ、は、離して!
お兄ちゃん!」

男――兄は私の腕を掴み、無理矢理立たせようとした。

「美月さん、それ、誰……?」

おそるおそる、私をここへ連れてきてくれた西村にしむらさんが声をかけてくる。

「あ、兄なの」

「ああ、例の……」

私の答えに彼女は曖昧に笑った。

「帰るぞ、翠!」

「わかったから、離して!」

なおも腕を引っ張る兄の手を、振り払う。

「ごめんなさい、今日は帰ります。
お騒がせしてすみませんでした」

あたまを下げて、苛ついて待っている兄と共に店を出た。

「なんでお兄ちゃんがこんなところにいるのよ!」

私の腕を掴んだまま、兄は街の中を歩いていく。

「なんでって翠が合コンなんて行くからだろ」

「だからなんで知ってんの!?」

「翠のことならなんでもわかるに決まってんだろ」

なんでもって?
そうですね、私のことで知らないことなんてなにもない。
もう何度、こうやって合コンを阻止されただろう。
だからみんな、頼んでもなかなか私を連れていってくれないのだ。

「盗聴器はどこ?
それとも、GPS?」

ぴたっと足を止め、兄がくるりと振り返った。

「言うわけないだろ、バカか!」

「さいっ、てい!」

私たちの兄妹喧嘩を、道行く人は何事かと見ている。
きっと、痴話喧嘩かなにかと思っているに違いない。

「離して!
ひとりで帰るから!」

けれど兄の手は離れない。
通りかかったタクシーを停めて、その中に私を押し込んだ。

「お前、そんなに見合いが嫌か」

はぁーっ、と兄の口からため息が落ちる。

「……嫌」

嫌だから、自分で結婚相手を探したくて、苦手な合コンに参加している。
もっとも、毎回こうやって兄に邪魔されるけれど。

「合コンで適当な相手と付き合ったりするより、親父が厳選した相手と見合いして結婚する方がよっぽど幸せになれると思うけどな」

「……」

兄の言うことは正しい。
わかっている、しかし私は、恋愛くらい自分の好きにしたいのだ。

タクシーは私の住んでいるマンションの前で停まった。

「日曜、実家だからな。
十時に迎えにくる」

「……」

「忘れるなよ」

黙っていたら兄は念押しし、そのままタクシーで帰っていった。
オートロックを解除し、エレベーターで七階へ上がる。
四戸並んだ一番奥の角部屋が私の部屋だ。

「もう嫌になる……」

靴を乱雑に脱ぎ捨て、寝室のベッドへバタンと倒れ込む。
都営地下鉄の駅まで徒歩三分、都心にある職場最寄り駅まで乗り換え無しで二十分。
そんな恵まれた立地でさらに、オートロック、監視カメラ完備の1LDKのマンションは、百貨店総務部勤務のしがない一事務員の私には分不相応だ。
なのにどうしてこんなところに住んでいるのかって、兄のマンションからほど近く、父と兄の条件にあうのがここだったから。
当然、私には出せない家賃だから、半分は父が負担している。

「早く完全独立したい……」

しばらく寝転んでいたら気持ちも持ち直してきたので、ごそごそと部屋を漁る。
兄が私の部屋に盗聴器を仕掛けるなんて日常茶飯事、なので家でも気が抜けない。

「あった、やっぱり……」

今回はこの間もらったバッグの底が二重になっており、そこに仕掛けてあった。
プレゼントの類いは特に警戒しなきゃいけないのに、迂闊だった自分に腹が立つ。
しかもずっと欲しかったバッグだったので、このところ持ち歩いていただけに。

「ほんと、いい加減にしてほしい……」

でもこれは、兄と父の愛なのだ。
生まれて二十六年、積み重ねられた重い重い愛に私は潰れそうだとそろそろ気付いてほしい。

「さて。
少しでも進めておこう」

お風呂に入って気分も共にさっぱりし、パソコンの前に座る。
私はいわゆる、Web作家、という奴だ。
ちまちまと恋愛小説を書いては、サイトに投稿していた。
いつか、自分の本が出せたらいいと夢見ながら。
残念ながら出すコンテスト、出すコンテスト、全戦全敗だけど。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―

七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。 彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』 実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。 ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。 口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。 「また来る」 そう言い残して去った彼。 しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。 「俺専属の嬢になって欲しい」 ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。 突然の取引提案に戸惑う優美。 しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。 恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。 立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。

それは、ホントに不可抗力で。

樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。 「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」 その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。 恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。 まさにいま、開始のゴングが鳴った。 まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

先輩、お久しぶりです

吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社 秘書課 × 藤井昂良 大手不動産会社 経営企画本部 『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。 もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』 大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。 誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。 もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。 ――それも同じ会社で働いていた!? 音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。 打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

処理中です...