極秘蜜愛結婚~俺様御曹司のトップシークレットは私!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第3章 嫌じゃ、ない

6.いまはこれでいい

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翌朝は早く起きて私が朝食を作るつもりだったのに、目を開けたときにはベッドに蔭木課長はいなかった。

「おはよ。
顔、洗ってこい」

今朝のエプロンは私の持っていない、シンプルな黒になっている。
やはりピンクのフリフリは嫌だったようだ。

「うー」

ちょっと情けなくて泣きそう。
また今日から四日間ほど台湾に出張、って聞いたから、今朝は私のごはんを食べさせてあげようと思ったのに。

「できたぞー」

見計らったかのように、私が洗顔を済ませるのと同時に朝食が並ぶ。

「いただきます」

今日は私の買わない、鮭がついていた。
冷蔵庫の中を確認したわけじゃないが、なんだか部屋と一緒でものが増えていそうだ。

「……今日は私が作るつもりだったのに」

お味噌汁を啜りながらジト目で睨んだけれど、全く効いていない。

「俺は翠に朝食を作りたいの。
俺の作ったメシを食って、翠が一日頑張ってる、って思ったら……」

むにむにと嬉しそうに蔭木課長の唇が動く。
それのどこにそんな感情を抱けるのかわからない。

「……わ、私だって、今日から出張なら最後のごはんくらい私の……」

そこまで言って気がついた。
これはまるで、さっきの蔭木課長と一緒だ。
しばらく離れるなら、最後に食べた私のごはんを覚えていてほしい。
なんで、そんなこと?
ぐるぐると考えていたら、いきなり。

「翠は可愛いな!」

大きな声が頭上から振ってきた。

「もうそんな可愛いこと言ってくれたから、めちゃめちゃ出張、頑張れそうだ!」

顔を上げたら、蔭木課長の背後にパタパタと勢いよく振られる尻尾が見えた。
この人はたった、こんなことで喜んでくれる。
それは私の胸の中も温かくしてくれる。

「い、いってらっしゃい」

身支度を済ませ、ソファーで携帯を見ている蔭木課長が立ち上がるよりも早く、自分から唇を重ねた。

「翠からキスしてくれた!」

一気に、彼の顔が輝く。
朝食は失敗に終わったが、これは成功?

「でも、足りない。
もっと翠を充電させてくれ」

手を引っ張って引き寄せられた。
頬に彼の手が触れ、唇が重なる。
そっと親指があごを押し、口を開かせた。
すぐにぬるりと肉厚なそれが滑り込んでくる。
まるで歯の一本、一本の形まで記憶するかのように、丁寧になぞられた。
彼の熱が、私の中へと溜まっていく。

「……はぁ……」

角度を変えたタイミングで落ちた吐息は、朝だとは思えないほど淫靡な熱を孕んでいた。

「……翠」

唇が離れ、艶を含んだ蔭木課長の瞳が、レンズの向こうから私を見ている。

「……続きは帰ってから、いいか」

耳もとで囁き、口付けを落として彼が離れる。

「あ、えっと。
……その」

目をあわせられなくて落とした視線の先、私の手は真っ赤になっていた。

「冗談だ」

ちゅっ、ともう一度、唇を触れさせて彼が立ち上がる。

――帰ってきたら。

そのときは……。

一緒にマンションを出て駅で別れる。

「気をつけて行ってきてください。
か、蔭木……さん」

「翠!」

出勤時間で人が多いのに、蔭木……さんに抱きつかれた。

「あー、もう、出張、行きたくないな!
でも、そういうわけにはいかないからな、仕方ない」

人目も憚らず、彼が私に口付けしてくる。
おかげで朝から、変な汗を掻いた。
でも、それが嫌じゃない。

「いってらっしゃい」

「翠も気をつけてな」

蔭木さんに見送られて地下に降りる。
それも、嫌じゃない。
これからはLINE攻撃に、もう少しだけマメに返事をしようと思っていた。
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