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第6章 初めてのデート。しかもお泊まり
3.丸見え?
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再びぶらぶらと道を歩く。
そのうち、モダンな建物の前に出た。
「泊まるのはここだ」
「ここ、ですか?」
気後れしている間に、蔭木さんは私を連れてエントランスに入っていく。
「蔭木です」
「ようこそお越しいただきました」
たったそれだけで、部屋へと案内された。
部屋でチェックインを済ませたあとは、ウエルカムドリンクだとシャンパンが出てくる。
「あのー、蔭木、さん?
ここって凄く、お高いんじゃ……」
このシャンパンもだし、お部屋だって凄く広くて綺麗。
しかも、リビングと寝室が分かれている、スイートタイプだし。
さらには専用の庭園露天風呂が付いているとなれば、絶対高いに決まっている。
「翠はそんなこと、気にするんだ?」
「だって……」
私ごときのために、そんな大金を使わせるわけにはいかない。
いくら、彼がお金持ちでも。
「やっぱり翠は可愛いな!」
いつものように、蔭木さんが私に抱きついてくる。
「俺たちは夫婦なんだから、遠慮することはないんだぞ?
まあ、そういう翠が可愛いんだが」
「えっ!?」
顔中にキスの雨を降らされた。
遠慮するなって言われても、少しくらいならまだしも、あきらかに高級なのは気になっちゃうんだもん……。
「もしかして台湾や北海道を遠慮したのは、そういう理由か?」
「……はい」
「可愛いな、翠は!」
ぎゅーっと力一杯抱き締められたうえに、マーキングするみたいにぐりぐりとあごをあたまに擦りつけられた。
「これくらいで遠慮するなんて、もっと翠を贅沢させたいな。
やっぱり、台湾くらい連れていくべきだった。
よし、次、まとまった休みが取れたら、台湾に行くぞ!」
蔭木さんは大興奮だけど、それって決定事項なのかな……?
「けっこう歩いたから疲れただろ?
風呂、入ってきたらいい」
勧めてくれるのは嬉しいが、着替えもなにも持ってきていないわけで。
「浴衣だろ、丹前だろ、あと下着と、アメニティは洗面所に揃っているはずだ」
次々とクローゼットの中から出され、腕の上にのせられていく。
浴衣と丹前はわかるけど、この可愛い巾着に入れられた下着はどうしたんだろう。
「ほら、入ってこい」
強引に肩を押し、蔭木さんは私を洗面所へと追いやった。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「ゆっくりしていいからな!」
パタンとドアが閉まり、苦笑いで服を脱ぐ。
どうしてあの人は私を可愛がるのにここまで全力なんだろう。
露天の浴室に出てはた、と気付いた。
これは、寝室から丸見えなのでは……?
そーっと見た寝室では、蔭木さんがベッドに寝転び、肘枕でこちらを見ていた。
私に気付き、にやりと笑う。
「……!
……!」
声にならない怒りを発していたら、消えた彼がひょっこり、リビング側にあるドアから顔を出した。
「どうした?」
「どうしたじゃないですよ!
丸見えじゃないですか!」
「それがどうした?」
すっとぼける彼になにかがキレて、手近にあった桶を投げつけた。
「あぶねっ」
けれどそれは、危なげなく彼にキャッチされてしまう。
「わかった、わかった。
カーテン閉めるし、リビングからも覗かない。
それでいいか?」
「……よくないけど妥協します」
「うん」
彼が部屋に引っ込み、寝室のカーテンが閉められる。
厚地のカーテンとはいえ、隔てるものはガラスと布一枚。
気配とか音とかわかりそうで、落ち着かない。
「さっさと入ってあがろう……」
幸いなのは、シャワーが完全に寝室から死角になっている点だ。
手早く髪と身体を洗ってしまう。
「それで。
浸かるか浸からないか……」
せっかく温泉に来ているのに、お湯に浸からないのはもったいない気がする。
でも、あのカーテンの向こうに蔭木さんがいるのだと思うと……。
「カーテンあるんだから見えない!」
覚悟を決めてそろりとお湯に浸かる。
「ふわぁーっ」
お湯は最高にとろとろで、美容液にでも浸かっているかのようで気持ちいい。
つい、あのガラスの向こうには蔭木さんがいるのだということを忘れていた。
「最高……」
遠くには色づく山々が見える。
「こんな贅沢、いいのかな……」
あまりにいい気持ちで、うとうとしそうになっていた。
溺れないうちにあがろう。
着替えに、下着だと渡された巾着を開ける。
「蔭木さんの趣味……?」
ブラはほぼ白のレースでできていて、半分透けていた。
下着にいたっては揃いのチーキーだし。
「うっ、こんなの恥ずかしすぎる……」
なんて言っても、汚れた下着かこれしかないわけで。
……仕方ない。
そのうち、モダンな建物の前に出た。
「泊まるのはここだ」
「ここ、ですか?」
気後れしている間に、蔭木さんは私を連れてエントランスに入っていく。
「蔭木です」
「ようこそお越しいただきました」
たったそれだけで、部屋へと案内された。
部屋でチェックインを済ませたあとは、ウエルカムドリンクだとシャンパンが出てくる。
「あのー、蔭木、さん?
ここって凄く、お高いんじゃ……」
このシャンパンもだし、お部屋だって凄く広くて綺麗。
しかも、リビングと寝室が分かれている、スイートタイプだし。
さらには専用の庭園露天風呂が付いているとなれば、絶対高いに決まっている。
「翠はそんなこと、気にするんだ?」
「だって……」
私ごときのために、そんな大金を使わせるわけにはいかない。
いくら、彼がお金持ちでも。
「やっぱり翠は可愛いな!」
いつものように、蔭木さんが私に抱きついてくる。
「俺たちは夫婦なんだから、遠慮することはないんだぞ?
まあ、そういう翠が可愛いんだが」
「えっ!?」
顔中にキスの雨を降らされた。
遠慮するなって言われても、少しくらいならまだしも、あきらかに高級なのは気になっちゃうんだもん……。
「もしかして台湾や北海道を遠慮したのは、そういう理由か?」
「……はい」
「可愛いな、翠は!」
ぎゅーっと力一杯抱き締められたうえに、マーキングするみたいにぐりぐりとあごをあたまに擦りつけられた。
「これくらいで遠慮するなんて、もっと翠を贅沢させたいな。
やっぱり、台湾くらい連れていくべきだった。
よし、次、まとまった休みが取れたら、台湾に行くぞ!」
蔭木さんは大興奮だけど、それって決定事項なのかな……?
「けっこう歩いたから疲れただろ?
風呂、入ってきたらいい」
勧めてくれるのは嬉しいが、着替えもなにも持ってきていないわけで。
「浴衣だろ、丹前だろ、あと下着と、アメニティは洗面所に揃っているはずだ」
次々とクローゼットの中から出され、腕の上にのせられていく。
浴衣と丹前はわかるけど、この可愛い巾着に入れられた下着はどうしたんだろう。
「ほら、入ってこい」
強引に肩を押し、蔭木さんは私を洗面所へと追いやった。
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「ゆっくりしていいからな!」
パタンとドアが閉まり、苦笑いで服を脱ぐ。
どうしてあの人は私を可愛がるのにここまで全力なんだろう。
露天の浴室に出てはた、と気付いた。
これは、寝室から丸見えなのでは……?
そーっと見た寝室では、蔭木さんがベッドに寝転び、肘枕でこちらを見ていた。
私に気付き、にやりと笑う。
「……!
……!」
声にならない怒りを発していたら、消えた彼がひょっこり、リビング側にあるドアから顔を出した。
「どうした?」
「どうしたじゃないですよ!
丸見えじゃないですか!」
「それがどうした?」
すっとぼける彼になにかがキレて、手近にあった桶を投げつけた。
「あぶねっ」
けれどそれは、危なげなく彼にキャッチされてしまう。
「わかった、わかった。
カーテン閉めるし、リビングからも覗かない。
それでいいか?」
「……よくないけど妥協します」
「うん」
彼が部屋に引っ込み、寝室のカーテンが閉められる。
厚地のカーテンとはいえ、隔てるものはガラスと布一枚。
気配とか音とかわかりそうで、落ち着かない。
「さっさと入ってあがろう……」
幸いなのは、シャワーが完全に寝室から死角になっている点だ。
手早く髪と身体を洗ってしまう。
「それで。
浸かるか浸からないか……」
せっかく温泉に来ているのに、お湯に浸からないのはもったいない気がする。
でも、あのカーテンの向こうに蔭木さんがいるのだと思うと……。
「カーテンあるんだから見えない!」
覚悟を決めてそろりとお湯に浸かる。
「ふわぁーっ」
お湯は最高にとろとろで、美容液にでも浸かっているかのようで気持ちいい。
つい、あのガラスの向こうには蔭木さんがいるのだということを忘れていた。
「最高……」
遠くには色づく山々が見える。
「こんな贅沢、いいのかな……」
あまりにいい気持ちで、うとうとしそうになっていた。
溺れないうちにあがろう。
着替えに、下着だと渡された巾着を開ける。
「蔭木さんの趣味……?」
ブラはほぼ白のレースでできていて、半分透けていた。
下着にいたっては揃いのチーキーだし。
「うっ、こんなの恥ずかしすぎる……」
なんて言っても、汚れた下着かこれしかないわけで。
……仕方ない。
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