4 / 49
第1章 前世の婚約者ってなんですか
4.R.Mountainと父の工場と結婚相手
しおりを挟む
今日は泊まっていったらいいと言われ、昔の自分の部屋に布団を引く。
「じゃあおやすみ」
「おやすみ」
私が二階の部屋へ上がると同時に一階の電気が消える。
おやすみと言いながら自分の部屋には行かずに隣の、温人の部屋のドアを叩いた。
「ちょっといい?」
「なんだよ、姉ちゃん」
面倒くさそうに言いながらも、温人は部屋へ入れてくれた。
自転車部品の試作品で埋め尽くされた部屋は足の踏み場しかなく、仕方なくベッドに腰掛ける。
「あのさ。
最近、なんかあった?
たとえば父さん、この間の健康診断の結果が悪かったとか」
余命幾ばくもない、なんて想像もしたくもないが、でもそれなら父があんなに焦っていた意味がわかる。
「そんなことあるわけないじゃん。
今日、なに見てたんだよ」
「そ、そうだね……」
焼き肉屋で父はもりもり食べもりもり飲んでいた。
あれでどこか悪いなんて思えない。
「じゃあ、他には……?」
「んー?
しいていえば相変わらず経営が苦しいことくらいじゃない?」
喋りながら温人は部品の試作作業を再開している。
昔から研究熱心で、父は有望な跡取りだと大喜びしていた。
「オレにも跡を継ごうなんて考えずに自由にしていいんだぞ、なんて言ってるくらいだし」
「……そうなんだ」
この不況で、うちみたいにハンドメイドで自転車を作っている零細企業が大変なのは知っている。
昨今はブームで多少売り上げが伸びても。
「でもさ、最近、大口の契約が取れたんだ。
オリジナルの自転車作ってる会社で、そこの自転車を専属で作ってほしいって。
ちゃんとうちの価値をわかってくれる、いい会社だったよ。
ええっと……『R.Mountain』とかいう会社」
「ふーん」
自転車工場の娘の割に、自転車に疎い私にわかるわけがない。
「これでうちの工場も安泰じゃないかな。
今日の焼き肉、その祝いの意味もあったんじゃない?」
「ん、工場の不安材料がなくなったのはよかった!
……私の結婚はよくないけど」
「諦めるしかねーんじゃね?
ああなったら親父、てこでも動かねーし」
「そうだね」
苦笑いの温人に私も苦笑いで返す。
もう婚姻届は提出してしまった。
腹を括るしかないのだ。
自分の部屋で布団に潜る。
ふと思いついたことがあって携帯を手に取った。
「R.Mountain……だっけ?」
検索窓に打ち込み、虫眼鏡のボタンをタップする。
「……え?」
出てきたホームページの、会社概要のところには【代表取締役社長 雨山清人】の文字。
これってただの偶然なんだろうか……?
「じゃあおやすみ」
「おやすみ」
私が二階の部屋へ上がると同時に一階の電気が消える。
おやすみと言いながら自分の部屋には行かずに隣の、温人の部屋のドアを叩いた。
「ちょっといい?」
「なんだよ、姉ちゃん」
面倒くさそうに言いながらも、温人は部屋へ入れてくれた。
自転車部品の試作品で埋め尽くされた部屋は足の踏み場しかなく、仕方なくベッドに腰掛ける。
「あのさ。
最近、なんかあった?
たとえば父さん、この間の健康診断の結果が悪かったとか」
余命幾ばくもない、なんて想像もしたくもないが、でもそれなら父があんなに焦っていた意味がわかる。
「そんなことあるわけないじゃん。
今日、なに見てたんだよ」
「そ、そうだね……」
焼き肉屋で父はもりもり食べもりもり飲んでいた。
あれでどこか悪いなんて思えない。
「じゃあ、他には……?」
「んー?
しいていえば相変わらず経営が苦しいことくらいじゃない?」
喋りながら温人は部品の試作作業を再開している。
昔から研究熱心で、父は有望な跡取りだと大喜びしていた。
「オレにも跡を継ごうなんて考えずに自由にしていいんだぞ、なんて言ってるくらいだし」
「……そうなんだ」
この不況で、うちみたいにハンドメイドで自転車を作っている零細企業が大変なのは知っている。
昨今はブームで多少売り上げが伸びても。
「でもさ、最近、大口の契約が取れたんだ。
オリジナルの自転車作ってる会社で、そこの自転車を専属で作ってほしいって。
ちゃんとうちの価値をわかってくれる、いい会社だったよ。
ええっと……『R.Mountain』とかいう会社」
「ふーん」
自転車工場の娘の割に、自転車に疎い私にわかるわけがない。
「これでうちの工場も安泰じゃないかな。
今日の焼き肉、その祝いの意味もあったんじゃない?」
「ん、工場の不安材料がなくなったのはよかった!
……私の結婚はよくないけど」
「諦めるしかねーんじゃね?
ああなったら親父、てこでも動かねーし」
「そうだね」
苦笑いの温人に私も苦笑いで返す。
もう婚姻届は提出してしまった。
腹を括るしかないのだ。
自分の部屋で布団に潜る。
ふと思いついたことがあって携帯を手に取った。
「R.Mountain……だっけ?」
検索窓に打ち込み、虫眼鏡のボタンをタップする。
「……え?」
出てきたホームページの、会社概要のところには【代表取締役社長 雨山清人】の文字。
これってただの偶然なんだろうか……?
0
あなたにおすすめの小説
とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
けいこ
恋愛
「絶対に後悔させない。今夜だけは俺に全てを委ねて」
燃えるような一夜に、私は、身も心も蕩けてしまった。
だけど、大学を卒業した記念に『最後の思い出』を作ろうなんて、あなたにとって、相手は誰でも良かったんだよね?
私には、大好きな人との最初で最後の一夜だったのに…
そして、あなたは海の向こうへと旅立った。
それから3年の時が過ぎ、私は再びあなたに出会う。
忘れたくても忘れられなかった人と。
持ちかけられた契約結婚に戸惑いながらも、私はあなたにどんどん甘やかされてゆく…
姉や友人とぶつかりながらも、本当の愛がどこにあるのかを見つけたいと願う。
自分に全く自信の無いこんな私にも、幸せは待っていてくれますか?
ホテル リベルテ 鳳条グループ 御曹司
鳳条 龍聖 25歳
×
外車販売「AYAI」受付
桜木 琴音 25歳
花咲くように 微笑んで 【書籍化】
葉月 まい
恋愛
初恋の先輩、春樹の結婚式に
出席した菜乃花は
ひょんなことから颯真と知り合う
胸に抱えた挫折と失恋
仕事への葛藤
互いの悩みを打ち明け
心を通わせていくが
二人の関係は平行線のまま
ある日菜乃花は別のドクターと出かけることになり、そこで思わぬ事態となる…
✼•• ┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈••✼
鈴原 菜乃花(24歳)…図書館司書
宮瀬 颯真(28歳)…救急科専攻医
副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
有明波音
恋愛
ホテル・ザ・クラウンの客室課に勤務する倉田澪は、母親から勧められたお見合いをやむなく受けるかと重い腰をあげた矢先、副社長の七瀬飛鳥から「偽装婚約」を提案される。
「この婚約に愛は無い」と思っていたのに、飛鳥の言動や甘々な雰囲気に、つい翻弄されてしまう澪。
様々な横やり、陰謀に巻き込まれながらも
2人の関係が向かう先はーーー?
<登場人物>
・倉田 澪(くらた・みお)
ホテル・ザ・クラウン 客室課勤務
・七瀬 飛鳥(ななせ・あすか)
七瀬ホールディグス 副社長
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事などとは一切関係ありません。
※本作品は、他サイトにも掲載しています。
※Rシーンなど直接的な表現が出てくる場合は、タイトル横に※マークなど入れるようにしています。
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
思い出のチョコレートエッグ
ライヒェル
恋愛
失恋傷心旅行に出た花音は、思い出の地、オランダでの出会いをきっかけに、ワーキングホリデー制度を利用し、ドイツの首都、ベルリンに1年限定で住むことを決意する。
慣れない海外生活に戸惑い、異国ならではの苦労もするが、やがて、日々の生活がリズムに乗り始めたころ、とてつもなく魅力的な男性と出会う。
秘密の多い彼との恋愛、彼を取り巻く複雑な人間関係、初めて経験するセレブの世界。
主人公、花音の人生パズルが、紆余曲折を経て、ついに最後のピースがぴったりはまり完成するまでを追う、胸キュン&溺愛系ラブストーリーです。
* ドイツ在住の作者がお届けする、ヨーロッパを舞台にした、喜怒哀楽満載のラブストーリー。
* 外国での生活や、外国人との恋愛の様子をリアルに感じて、主人公の日々を間近に見ているような気分になれる内容となっています。
* 実在する場所と人物を一部モデルにした、リアリティ感の溢れる長編小説です。
初恋は溺愛で。〈一夜だけのはずが、遊び人を卒業して平凡な私と恋をするそうです〉
濘-NEI-
恋愛
友人の授かり婚により、ルームシェアを続けられなくなった香澄は、独りぼっちの寂しさを誤魔化すように一人で食事に行った店で、イケオジと出会って甘い一夜を過ごす。
一晩限りのオトナの夜が忘れならない中、従姉妹のツテで決まった引越し先に、再会するはずもない彼が居て、奇妙な同居が始まる予感!
◆Rシーンには※印
ヒーロー視点には⭐︎印をつけておきます
◎この作品はエブリスタさん、pixivさんでも公開しています
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる