前世の婚約者ってなんですか?~溺愛御曹司と甘い現世生活~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第5章 好きって凄い

2.ハジメテのいたずら

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その後も。

――清人さんは私に、べったりと貼り付いていた。

「涼鳴、どこ行くの?」

ベッドを出ようとした瞬間、清人さんが声をかけてくる。

「えーっと。
お手洗い、です」

「いってらっしゃーい」

トイレに入り苦笑い。
さすがにここまでは着いてくるとは言わないが、なにかしようとするたびに僕がやってあげるからと止められて。
あの超過保護ぶりには笑うしかできない。

「おかえり、涼鳴。
手、大丈夫だった?」

戻ってくれば抱き寄せてちゅっ。
さらには心配そうに右手をさすってくれる。

「大丈夫ですよ」

捻った手首は一晩たってもじんじんと鈍く痛んでいた。
でも言えば清人さんが大騒ぎしそうだから内緒だ。

「でも酷いよね、無灯火でそのうえ違法なブレーキ無しの自転車なんてさ。
あんな人間に乗ってほしくないよ」

清人さんの怒りは今日になってもまだ、収まりそうにない。
私を跳ねただけでも相当なのに、その自転車が違法な自社製品だったとなれば。

「うーんと重い処罰にしてもらうし、彼には二度と、R.Mountainブランドの自転車……ううん、AAの車にすら乗せない」

昨晩、あのこわーい清人さんから散々言われてそれでさらにこれは気の毒な気もするけど。
しかしこれは自業自得なのだ、仕方ない。

「でも涼鳴ってよく、自転車に轢かれてるよね」

「……はい?」

おかしそうに清人さんは笑っているけれど……。
よく、ってなんなんだろう?
清人さんと結婚してから自転車に轢かれたのなんて、これが初めてなんだけど。

「前もさ、……って、前世の話なんだけど。
自転車に轢かれそうになった涼鳴を助けてあげて」

「はぁ」

って、どうでもいいがこの前世設定はいったい、いつの時代の話なんだろうか?
父はジパング渡来の、とか言っていたけど、自転車が出始めるのはほんの二百年ほど前の話だ。

「といっても自転車に轢かれそうになったお婆ちゃんを庇った涼鳴に気づいたけど間に合わなくて、介抱してあげただけなんだけど。
あれが、僕が涼鳴を好きになったきっかけだったな」

「は……ぁ」

ん?
ちょっと待って。
前世は知らないけど、前にそんなことがあった気がする。
相変わらずテンパって、記憶なんてほとんど飛んでいるからあれが清人さんかっていわれると、全くもって自信がないけど。

「もしかして、結婚する前に会ってますか……?」

「だから。
前世で会ってるよ」

にっこりと笑って清人さんは誤魔化してきたけれど、なにか知られるとマズいことでもあるのかな……?

「ねー、涼鳴。
そろそろ敬語、やめない?」

「えっと……」

「涼鳴から清人さん、って呼ばれるのも可愛くていいんだけど。
僕は清人って呼んでほしいなー」

きゅるんと悪戯っぽく瞳を輝かせ、眼鏡の向こうから清人さんが私を見ている。
そんなに可愛くお願いされたら、叶えてあげたいんだけど。

「き、清人…………さん」

呼んだ途端にぼっと顔が火を噴く。
結局、耐えられなくなってさんを付けた。

「えー、ダメだよ。
清人」

「き、き、きき、きよ、きよ、……きよ、と」

「可愛い、涼鳴!」

いきなり、きよ……とから抱きつかれる。
ドキドキと速い心臓の音ばかり聞こえているけど……これってもしかして、私のだけじゃない?

「もう一回、呼んで?」

落ちる髪を私の耳にかけ、見つめる清人の瞳はどこか、艶を帯びている。

「き、清人」

「うん、もっと」

「清人」

「可愛い、涼鳴。
愛してる……」

清人の顔が近づいてきて私も目を閉じる。
ちゅっと一回だけ触れて離れれば、なぜか淋しかった。

「もっと触れてほしい?」

自然とあたまが、こくりと頷く。

「じゃあ、眼鏡、外してくれる?」

意味がわからないままも、まるで操られているかのように清人の顔から眼鏡を抜き取る。
そっと清人の両手が私の顔を挟み、再び重なったそれはさっきとは比べものにならないほど、深い。

「……んっ……はぁ……」

いつの間にか後頭部に回った清人の手が、私の髪をぐちゃぐちゃにかき乱していく。
もっと、もっと清人が欲しくてぎこちないまでも彼に応えた。

「……」

唇が離れてじっと清人を見つめる。
欲に濡れた瞳で彼は私を見ているが、私も彼と同じ瞳で見ているのだろう。

「そんな顔しないの。
もっとしたくなっちゃうでしょ」

ちゅっと軽く唇を触れさせ、清人が困ったように笑う。

「……もっと、して」

清人の服を掴み、ぽそっと呟いた。
自分の大胆な言葉に顔は上げられない。

「んー、だから。
涼鳴の怪我に障るから。
いまは、ダメ。
それに……きっと、止まらなくなっちゃうからね」

耳もとで囁いて清人が離れる。
おそるおそる見上げたら、彼が目を細めてにっこりと笑った。
途端にボン!とあたまから煙を噴き、へなへなと崩れ落ちる。

「涼鳴!?」

清人は慌てているけれど、ひさしぶりの容量オーバーでなにも言えなかった……。

夕食もやっぱり食べさせてくれて、お風呂も恥ずかしかったけど入れてくれた……けど。
今日の清人は眼鏡あり。

「き、きよ、……と?」

「だって、可愛い涼鳴をよく見たいし?」

そんなことを言いつつ、昨日はスポンジだったのに今日は素手を私の肌に滑らせてくる。

「えっ、だって」

清人の手が私の肌を滑るたび、くすぐったいような変な気持ちになった。

「きれいだよ、涼鳴の身体」

「えっ、あっ、……ん」

胸の頂を手のひらでくるくると滑らされ、鼻から甘い吐息が抜けていく。

「ヤ、ヤダ……」

「ヤダって、きれいに洗わないとだよね」

清人の指先が赤く熟れきった果実を摘まみ、こりこりと捏ねる。
そのたびに背中へ、じん、じんと、鈍い電流が流れていった。

「今日はここも、きれいに洗おうね」

ようやく清人の手が離れ、ほっと息をついたのも束の間。
するりと滑った手が私の足の間に差し込まれる。

「じ、自分でするから!」

昨日は、ここは自分でしてね、って言われて自分で洗った。
なのに今日は。

「ヌルヌルでいっぱい汚れてるよ?」

耳もとで囁かれ、顔が火を噴く。
止めようと手を掴むものの、清人は止めてくれない。

「ダ、ダメ」

「ダメってなんで?
洗っても洗っても涼鳴のここ、ヌルヌルなのに」

「……!」

滑らされた手が、まだ硬い花芽を掠っていく。
ビリッ、と感じた知らない感覚。
でも清人はそこを擦るのを止めてくれない。

「イヤ、イヤ……」

清人が濡れるなんてかまわずに、その肩に顔を押し付けて首を振る。
ようやく、清人は手を止めてくれた。

「んー、一回、流そうか」

困ったように笑い、シャワーで私の泡を流してくれる。
足も開かされ、そこも念入りに。

「涼鳴がイヤならもうしないけど……。
でも」

〝モットシテホシインデショ〟

淫靡な響きを持ったそれが耳に入ってきた途端、身体がさらに熱を持つ。
口では嫌と言いながらも身体は熱を持ち、いまだに治まらない。
黙ってこくんと、ひとつ頷いた。
そっとまた、清人の手が足の間に入ってくる。

「中途半端は返ってつらいからね」

「……んっ」

漏れそうになった声は唇を噛んで閉じ込めた。
けれど清人の空いた手が、私の口を開かせる。

「声、我慢しなくていいよ。
可愛い涼鳴の声、僕に聞かせて」

「ああっ」

主張をはじめた尖りを摘ままれ、声が漏れる。
くすりと耳に届いた小さな笑い声が、さらに身体の熱を上げた。

「可愛い、涼鳴」

口を開けた清人が、胸の朱い果実を食べる。
指先で花芽を、舌で果実をころころと転がされ、あたまは気が狂いそうだった。

「ダメ、ダメ……!」

襲いくる未知の快楽から逃れたくて、清人の腕をきつく掴む。
けれど彼は動きを止めてくれない。

「いいよ、イって」

「あっ、ああーっ!」

果実を強く吸い上げられ、花芽を摘まみげられた瞬間、なにかが弾けた。
身体ががくがくと震え、目の前がチカチカする。

「涼鳴、可愛かったよ」

ぐったりと寄りかかる私に、清人がちゅっと口付けを落としてくれる。
はぁはぁと息をしながら、彼に身体を預けた。

「きれいにしてあがろうね」

全身をシャワーで流し、バスタオルでくるんで清人は私を抱き上げた。
されるがままに身体を拭かれ、パジャマに着替えさせてもらう。
ベッドまで抱き抱えて連れていき、水を飲ませてくれた。
おかげでようやく、落ち着いてくる。

「今日も一緒に寝ていい?」

わざわざ、訊いてくるあたりが清人らしい。

「あのね。
今日も、……明日も、明後日も、いいですよ」

「ほんとに!?」

目をキラキラさせている清人に、こくこくと頷く。

「その、あの、えっと」

――これからはずっと、一緒のベッドで寝たいです。

って言いたいんだけど。
ぐるぐる回ってばかりで全然口から出てこない。

「じゃあ、明明後日もその次もそのまた次も、……ずーっと、涼鳴と一緒に寝ていい?」

さっきよりさらに勢いよく、こくこくと頷く。

「ありがとー」

ぎゅーっと、清人から抱き締められた。
それだけで、滅茶苦茶幸せなのってなんでだろう?

土日ももちろん、清人からお世話されて過ごした。
だって、ベッドから一歩でも出たら怒られるんだもん。
そんな過保護も、愛おしくてたまらない。
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