26 / 49
第5章 好きって凄い
1.世界がキラキラ輝いて見えるのはなんでだろ
しおりを挟む
――清人さんが好きだと、自覚した翌朝。
「んー……」
寝返りを打って目を開ける。
「……!!!!」
途端に視界に入ってきたのは、清人さんの、顔。
「おはよう、涼鳴」
ゆるく笑った清人さんの手が、私の額に落ちかかる髪を払う。
そうだった、昨晩は心配だし一緒に寝ていい? って訊かれて、そうしたんだった……。
「お、おは、おはよう、ござい……ます」
朝から顔はこれでもかっ! ってくらい熱いし、心臓だって全力疾走したみたいにドキドキと速く鼓動していた。
「朝食作ってくるから、まだ寝てていいよ」
ちゅっと私に軽く口付けし、清人さんがベッドを出ていく。
「あの、それだと遅刻しちゃうので……」
「なに言ってんの?
怪我してるんだよ、そんな状態で仕事できないでしょ。
当然、今日はお休み。
僕も特になにも入ってなかったから、休むし」
「えっと……」
清人さんは真剣だけど。
右手を捻挫しただけなのだ。
これくらいで休むわけにはいかない。
「それともなに?
涼鳴の会社は怪我や病気で休めないほど、ブラック企業なの?
そんなところで涼鳴を働かせるわけにはいかないな」
すーっと清人さんの目が細くなり、仕事モードになる。
「や、休むから!」
「ん、じゃあ朝食作ってくるね」
清人さんが寝室を出ていき、はぁーっとため息が落ちる。
あの顔になった清人さんは、本気で実行しかねない。
ちゃんとした理由があれば考え直してくれるけど、曖昧な説明じゃダメのだ。
「それにしても……」
清人さんが私の隣に入ってきたときは、緊張してなかなか眠れそうになかった。
でも、ぎゅっと抱き締められているとなんだか安心して、そのうち夢も見ないほど朝までぐっすり眠っていた。
「好きって凄い」
自覚しただけで、なんだか世界が輝いて見える。
いまなら私を馬鹿にしてくれたあの男を見返せるデザインができそうだが、肝心の手が思うように動かせないのが惜しい。
「うー、仕事したいー。
左手でマウス動かせないかな……」
せめて怪我をしたのが左手だったら、なんて考えてもしょうがないことを考えてしまった。
「涼鳴、できたよー」
てっきり呼びに来るものとばかり思っていたら、しばらくして昨晩と同じくワゴンを押した清人さんが部屋に入ってきた。
「涼鳴、あーん」
そしてやっぱり昨晩と同じく、清人さんが食べさせてくる。
「えっと。
ひとりで食べられるので……」
「ダーメ。
三日間は安静だって言われただろ。
その間は僕がぜーんぶお世話してあげるからねー。
はい、あーん」
「あ、あーん」
私が開けた口に嬉しくて仕方ないって顔で清人さんがオムレツを入れてくる。
もしかしてこれから三日間、たかが捻挫でつきっきりの看病なんだろうか。
明日明後日が土日で休みなので仕事に関しては大丈夫だろうけど。
朝食が終わればちょうどよさそうな時間だったので光志さんに連絡を入れる。
『会社にも出てこられないほどの怪我って大丈夫なのか』
光志さんは酷く心配しているけど、それはそうだよね。
「ちょっと右手首、捻っただけなので。
今日と週末休めば大丈夫だと思います」
『ほんとに大丈夫か?
利き手だろ?
なんか困ってることとかないか』
「えっと……あっ!」
「お電話代わりました、涼鳴の夫の、清人です」
私から携帯を奪った清人さんがことさら、〝夫〟と強調する。
「涼鳴は怪我が完治するまで休ませていただきます。
その間のお世話も私がつきっきりでやりますのでご心配なく。
では」
勝手に通話を終えたうえに清人さんは携帯の電源まで切ってしまった。
「携帯は僕が預かっておくよ。
そうしないと涼鳴、仕事をしはじめかねないからね」
「そんなー」
携帯無しでどうやって時間を潰せというんだろう?
ゲームもできないし、ネット小説も読めない。
「今日はいっぱい、僕と話をしようね」
眼鏡の下で目を細め、本当に嬉しそうに清人さんが笑う。
その顔になにか言えるはずもない。
「んー……」
寝返りを打って目を開ける。
「……!!!!」
途端に視界に入ってきたのは、清人さんの、顔。
「おはよう、涼鳴」
ゆるく笑った清人さんの手が、私の額に落ちかかる髪を払う。
そうだった、昨晩は心配だし一緒に寝ていい? って訊かれて、そうしたんだった……。
「お、おは、おはよう、ござい……ます」
朝から顔はこれでもかっ! ってくらい熱いし、心臓だって全力疾走したみたいにドキドキと速く鼓動していた。
「朝食作ってくるから、まだ寝てていいよ」
ちゅっと私に軽く口付けし、清人さんがベッドを出ていく。
「あの、それだと遅刻しちゃうので……」
「なに言ってんの?
怪我してるんだよ、そんな状態で仕事できないでしょ。
当然、今日はお休み。
僕も特になにも入ってなかったから、休むし」
「えっと……」
清人さんは真剣だけど。
右手を捻挫しただけなのだ。
これくらいで休むわけにはいかない。
「それともなに?
涼鳴の会社は怪我や病気で休めないほど、ブラック企業なの?
そんなところで涼鳴を働かせるわけにはいかないな」
すーっと清人さんの目が細くなり、仕事モードになる。
「や、休むから!」
「ん、じゃあ朝食作ってくるね」
清人さんが寝室を出ていき、はぁーっとため息が落ちる。
あの顔になった清人さんは、本気で実行しかねない。
ちゃんとした理由があれば考え直してくれるけど、曖昧な説明じゃダメのだ。
「それにしても……」
清人さんが私の隣に入ってきたときは、緊張してなかなか眠れそうになかった。
でも、ぎゅっと抱き締められているとなんだか安心して、そのうち夢も見ないほど朝までぐっすり眠っていた。
「好きって凄い」
自覚しただけで、なんだか世界が輝いて見える。
いまなら私を馬鹿にしてくれたあの男を見返せるデザインができそうだが、肝心の手が思うように動かせないのが惜しい。
「うー、仕事したいー。
左手でマウス動かせないかな……」
せめて怪我をしたのが左手だったら、なんて考えてもしょうがないことを考えてしまった。
「涼鳴、できたよー」
てっきり呼びに来るものとばかり思っていたら、しばらくして昨晩と同じくワゴンを押した清人さんが部屋に入ってきた。
「涼鳴、あーん」
そしてやっぱり昨晩と同じく、清人さんが食べさせてくる。
「えっと。
ひとりで食べられるので……」
「ダーメ。
三日間は安静だって言われただろ。
その間は僕がぜーんぶお世話してあげるからねー。
はい、あーん」
「あ、あーん」
私が開けた口に嬉しくて仕方ないって顔で清人さんがオムレツを入れてくる。
もしかしてこれから三日間、たかが捻挫でつきっきりの看病なんだろうか。
明日明後日が土日で休みなので仕事に関しては大丈夫だろうけど。
朝食が終わればちょうどよさそうな時間だったので光志さんに連絡を入れる。
『会社にも出てこられないほどの怪我って大丈夫なのか』
光志さんは酷く心配しているけど、それはそうだよね。
「ちょっと右手首、捻っただけなので。
今日と週末休めば大丈夫だと思います」
『ほんとに大丈夫か?
利き手だろ?
なんか困ってることとかないか』
「えっと……あっ!」
「お電話代わりました、涼鳴の夫の、清人です」
私から携帯を奪った清人さんがことさら、〝夫〟と強調する。
「涼鳴は怪我が完治するまで休ませていただきます。
その間のお世話も私がつきっきりでやりますのでご心配なく。
では」
勝手に通話を終えたうえに清人さんは携帯の電源まで切ってしまった。
「携帯は僕が預かっておくよ。
そうしないと涼鳴、仕事をしはじめかねないからね」
「そんなー」
携帯無しでどうやって時間を潰せというんだろう?
ゲームもできないし、ネット小説も読めない。
「今日はいっぱい、僕と話をしようね」
眼鏡の下で目を細め、本当に嬉しそうに清人さんが笑う。
その顔になにか言えるはずもない。
0
あなたにおすすめの小説
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。
全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。
そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。
人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。
1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。
異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります!
【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる