前世の婚約者ってなんですか?~溺愛御曹司と甘い現世生活~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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最終章 現世では幸せに暮らしました

3.あきらかになっていく真実

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散々悩んで、連絡先を交換しただけで一度も使ったことのない、LINEで流人さんにメッセージを送る。

【え?
そんなことになってんの?
俺は全然知らないんだけど】

帰ってきたメッセージにがっかりした。
けれどすぐにまた、メッセージが上がってくる。

【なんか最近、本部がごたごたしてるって話は聞いてたなー。
また柴山のおっさんがなにかしてるんだろって気にしてなかったけど】

【あと、兄貴、海外出張行ってるはずだけど?
帰ってこないのはだからじゃない?】

……はい?
海外出張とはなんぞや?
全然聞いていないんですけど!

【ちょっと待ってて。
俺から連絡取ってみるし】

了解とスタンプを返し、そのまま待つ。
少ししてチロリロリンと再び流人さんからメッセージがきた。

【ダメだ、俺もLINEも電話も繋がらない】

【高村に訊いてみたけど、高村ですら連絡取れないらしい】

【海外でも携帯使えるはずなのにおかしいよな。
ちょっと親父、捕まえるわ。
また連絡する】

【それと、俺は涼鳴さんの味方だから。
頑張って、お姉ちゃん】

最後は応援するうさぎのスタンプが貼られてきた。
お姉ちゃん、ってなにか、くすぐったい。

「帰ってこない理由はわかったとして。
連絡がつかないのがなー」

流人さんや高村さんですら連絡がつかないとなれば異常事態だ。
もしかして海外でなにか事故や事件に巻き込まれた……とかだけはないと願いたい。

布団に入って無理矢理にでも寝る。
寝て、ごはんを食べて、いつ何時なにがあってもちゃんとできるようにしとかないと。

とはいえ、今日は中途半端な時間に眠ったから、眠気は少しもやってこない。

「清人、今頃どうしてるんだろう」

出張に行っているということはもしかしたら、この一件を知らないのかもしれない。
愛子さんが勝手にやっているだけ、とか。
それだと、いろいろ合点がいく。
……どうして私と清人が一度もいたしたことがないのか知っているのか、どうして愛子さんがあの指環を持っているのか謎だけど。

「私はなにをしたらいいんだろう。
私はなにができるんだろう」

考えても考えてもわからない。
できるのは――清人を、信じること。
いくら不安になっていたからといって、一度は揺らいでしまった自分が嫌になる。

「……清人に、会いたい」

顔をうずめた枕からは、薄く清人の匂いがした。
本来なら花村さんが来る日だが、この状態ならもう、来ないのかもしれない。



「おはようございます」

「おう、……おはよう」

出社してきた私を見て、光志さんは意外そうな顔をした。

「その、大丈夫なのか?」

「はい、私にいまできるのは、しっかりいつもどおり過ごすことですから」

私が動揺していれば、敵は喜ぶだろう。
ならば微塵も動揺しちゃダメだ。

「わかった」

私の方へ光志さんは手を伸ばしかけたが、じっとその手を見つめてやめた。

「俺も涼鳴を吹っ切らないとな」

光志さんは困ったように笑っていて、私も笑うしかできなかった。

一日、残業までこなして家に帰る。
迎えのハイヤーも当然来ない。
これからどうなるのかわからなくてタクシーを使う気にもなれず、電車で帰る。
疲れているときの駅から徒歩十五分は遠く、いままでどれだけ楽をさせてもらっていたか痛感した。

「ただいま……」

誰もいない家はしん、と静まりかえっている。
買ってきたコンビニ弁当を温め、リビングのテーブルで食べた。

「……」

以前はそれが普通だったのに、全然美味しくない。
清人のごはんが……ううん、コンビニ弁当でもいいから、清人と一緒に食べたい。

――チロリロリン!

唐突に携帯が鳴り、箸を放り出して飛びつく。

【親父と連絡取れた】

こんばんは、とかのスタンプのあとに出てくるメッセージ。
流人さんからだ。

【まず、安心するお知らせから。
兄貴、事故や事件に巻き込まれたとかいうことはないから】

それを見てほっとした。
一番心配していたことだから。

【秘書の氷見からの定期連絡は入っている。
というか、兄貴からの連絡も氷見の携帯かららしい】

「……はい?」

それって、どういうことなんだろう?
清人さんは携帯を持っているのに。

【どうも兄貴、出発直前に携帯をおシャカにしたみたいなんだ。
それで、俺たちとの連絡が取れない】

と、いうことはこの件も知らない……?

【愛子の言ってることはほとんど嘘だと思うよ。
大丈夫だって、前世から愛してるんだー、とか阿呆なこというほど涼鳴さんを愛してるんだからさ。
絶対、兄貴に限って離婚なんて、ない】

ついつい、くすりと笑いが漏れる。
流人さんもやっぱり、阿呆なこととか思っていたんだ。

【あ、あと。
花村?だっけ?
兄貴のとこのハウスキーパー。
あの人、柴山に弱み握られて、情報を漏らしていたらしい。
といってもたいしたことは掴めなかったらしいけど】

んー?
これで私と清人がまだ、いたしていないってわかったってこと?
でも、なんでわかるんだろう……?

【いろいろありがとうございます。
あの、清人さんの帰国の日はわかりますか?】

【今度の土曜。
時間は……わかったらまた、連絡する】

【よろしくお願いします】

やはり最後に、流人さんは応援するうさぎのスタンプを貼り付けてくれた。
とても頼りになる弟で、嬉しい。
この件が片付いたら、ちゃんとお礼を言おう。

でもこれではっきりした。
流人さんの話だと、帰ってこなかった初日に清人は日本を発っている。
なら、愛子さんが清人が抱いてくれたとか言っていたのは嘘だ。
人を疑うのは嫌だが、婚約指環も花村さんが持ちだしたのかもしれない。
引き出しに鍵なんかかけていなかったし。

私が信じてしまった馬鹿なことの事実が次々にあきらかになっていく。
いくらパニックになっていたからとはいえ、こんな簡単な嘘に引っかかった自分が嫌になる。

「ごめんね、清人」

帰ってきたらいっぱい清人にあやまろう。
きっとそんなに信用できなかったの、って怒るだろうから、許してもらえるまで何度でもあやまって、なんでもしよう。
それこそ、清人が許してくれるまでキスだって。

翌日、流人さんが帰国予定の飛行機を教えてくれた。
家で待っていても、もしかしたら帰ってこないかもしれない。
だから空港まで押しかけようと決めた。


金曜の夜はよく眠れなかった。
寝なきゃ、寝なきゃと思うほど、目が冴えてくる。

「水、飲んでこよう……」

キッチンで水を飲んで帰ってきて、清人の枕を抱き締める。
一週間たってほとんど匂いは消えているが、それでも落ち着けた。

「明日、どんな顔するんだろう……?」

もし、愛子さんの言うことが本当だったら?
ううん、そんなこと考えない。
流人さんだってありえないって言ってくれた。

「待っててね……」

少しずつ、眠くなっていく。

――明日。
清人の気持ちが聞ける。
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