私の愛する悪い男【R18】

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
14 / 23
第3章 箱入り娘

2.孤独

しおりを挟む
手早くシャワーを浴びて浴室を出ると、時任はすでにモバイル端末を片付けていた。

視線は携帯に向いているが、傍らのテーブルの上には買ってきたサンドイッチやコーヒーの残骸が転がっていてくすりと笑いが漏れる。

「時任」

「ん」

ベッドの座って声をかけると、短く返事をした時任がすぐにやってくる。
ネクタイを抜き取り、サイドテーブルの引き出しを開けて避妊具の箱を手に取った。

「残りが少ない」

「わかった。
買っとく」

「ああ」

まるでトイレットペーパーでも買うように言葉を交わす。
いや、時任にとって避妊具はトイレットペーパーと同じくらいの感覚なのかもしれないが。

避妊しないでヤったのは結婚式のあの一回きりだった。
ないときは絶対に時任は朝香を抱かない。
妻帯者のケジメなのかなんなのか。
なら、あの一回はなんだったのかとも思う。
眼鏡を外し時任は避妊具と並べてサイドテーブルの上に置いた。

「家でヤるとさ」

「なに?」

唇の感触を楽しむかのように、時任は短い口付けを繰り返しながら朝香をベッドに押し倒していく。

「声とか気にしなくていいのは楽だけど、眼鏡の時任とヤれないのがちょっと惜しい」

「変な奴」

がっつりと食われた唇に、朝香も貪るように時任を求める。
すぐに狭い部屋の中に熱を帯びた吐息の音が満ちていく。

「相変わらずやらしい下着だな」

バスローブを脱がせた、時任の右の口端が持ち上がる。
赤の地レースに黒のレースをあしらった下着は朝香の白い肌によく栄えていた。

「だって、時任に喜んでもらいたいから……ぁん」

耳朶を甘噛みされて声が漏れた。

そのまま軽い口付けを繰り返しながら時任の顔が少しずつ下へと降りてくる。

「おまえがこんなにやらしい女だなんて知らなかった」

「それは時任、ん、がっ、……あっ」

やわやわと胸のふくらみを揉まれ、その尖りをレース越しに舌でねぶられるとぞくぞくとした感覚が背筋を駆け回った。

「俺のせいじゃないだろ」

朝香の胸の先端を唇と舌、ときには歯で弄びながら、時任の手は下へ下へと降りていく。

するりと内ももを撫でられ、迎え入れるように自然と朝香は足を開いていた。

「こんなに簡単に足開いて」

「んんーっ」

下着の上から敏感な花芽を押し潰され、びりびりと脳天まで電流が走る。

時任はかまわずにぐりぐりと押し潰し続けた。

「もうぐしょぐしょ」

真顔の時任に朝香の花弁からはとろとろと蜜が流れ落ち続ける。

紐をほどいて下着を取り去り、時任は朝香の足の間に顔を近づけた。

「シャワー浴びたばかりなのにもう、やらしい匂いがしてる」

「あん」

濡れたあわいにぬるりと舌を這わされた。

からかうように舌先で存在を主張しはじめた花芽をつつかれ、思わず腰が引ける。

が、時任から逃がさないかのように引き寄せられた。

「んっ、あっ、んんっ」

わざとらしくぴちゃぴちゃと音を立てて舐められるそこに自然と手は時任の後ろあたまに回り、ねだるように押しつける。

「やっ、イく、イっちゃうから……!」

「イけばいいだろ」

「あっ……!」

ぐいっと指を一気に差し込まれ、背中が軽く仰け反る。

けれど時任はかまわずに朝香の媚壁を擦りあげ続けた。

「ん、やっ、ダメ、ダメ、だか、ら……っ」

あたまを振って懇願するが、時任は指の動きをやめない。

「ダメって言う割に俺の指をぎゅうぎゅう締め付けてるのは誰だ?」

「やぁっ……!」

増やされた指に身体ががくがくと震える。

身体は勝手に快楽の階段を駆け上り、その先の世界へダイブする。

「ああっ……!」

朝香の白い喉が仰け反り、口からは短く悲鳴が漏れた。

朝香が荒い呼吸を整えているあいだに、時任は服を脱いでサイドテーブルの避妊具を手に取った。

「時任」

「なに?」

ビリビリとパッケージを破られるそれに、なぜか心臓がきりきりと痛む。

「なんでもない」

結局、今日もつけないでという言葉は飲み込んだ。

膝裏に手を添えて足を開かせ、みしりと時任が入ってくる。

朝香の蜜壷は時任専用のように形がしっかり馴染んでいて、挿れられるだけで達しそうになった。

「んっ、あっ、ああっ、んっ」

がつがつと奥まで突き上げられ、身体が揺れる。

身体を揺らされながら下から時任の顔を見るのが好きだ。

ほんの僅かに難しそうに寄る眉。
乱れて額に落ちてきた前髪。
吐き出される熱を帯びた息。

それらすべてが、自分の身体で時任が気持ちよくなっているんだと朝香を嬉しくさせる。

「とき、とう。
んっ、愛して、るっ」

こんなときに出る言葉は欲望から出た嘘だと理解していた。
それでも、嘘でかまわないから言って欲しい。

――けれど。

「愛してる、時任、愛して……!」

朝香の言葉を封じるように唇が重なる。
まるで忘れさせるかのように舌を絡められ、思惑通り思考は消し飛んでいく。

唇が離れると時任は朝香の足を肩に担ぎ上げた。

そのままもっとも深いところまで一気に焼けた楔を打ち込む。

「やぁっ……!」

「奥が好きだもんな、おまえ」

容赦なく打ち込まれる楔に見開いた目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ち続けた。

身体は強引に最終ステージへと引きずりあげられる。

「あぁっ、イく、……ああぁっ!」

びく、びくと震える朝香の身体にあわせて、どく、どくと時任がゴムの中に欲を吐き出す。

朝香の震えが止まり、ずるりと時任は出ていった。

カチリとライターのつく小さな音に焦点の合いはじめた目を向けると、時任が煙草に火をつけたところだった。
ヤったあとだけ煙草を吸うのが習慣なのだという。

「ねえ。
奥さんと寝たあとも煙草吸うの?」

背中にそっと頬をつけると、灰皿で煙草を消した時任が立ち上がった。
それはまるで拒否されたみたいで淋しい。

「いや。
あいつは煙草の臭い、嫌がるから」

――あいつは。

さりげない言葉に時任は人のものだという現実を突きつけられる。

浴室に消えていく時任を黙って見ていた。
浴室から出てきて時任がネクタイを結びはじめても、膝を抱えてベッドの上に座っていた。

「またくる」

戻ってきた時任が、ちゅっと軽く唇をふれさせる。
顔を見上げ、縋りそうになった手をぎゅっと硬く握って耐えた。

「……うん」

時任が出ていってばたんとドアが閉まると、つーっと涙が滑り落ちていった。

「……あ。
まただ」

時任がいなくなってひとりになったとたん、淋しさが押し寄せてくる。

中途半端な情けをかけられると特に。

何度同じことを繰り返しても、この感覚だけは慣れない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

19時、駅前~俺様上司の振り回しラブ!?~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
【19時、駅前。片桐】 その日、机の上に貼られていた付箋に戸惑った。 片桐っていうのは隣の課の俺様課長、片桐課長のことでいいんだと思う。 でも私と片桐課長には、同じ営業部にいるってこと以外、なにも接点がない。 なのに、この呼び出しは一体、なんですか……? 笹岡花重 24歳、食品卸会社営業部勤務。 真面目で頑張り屋さん。 嫌と言えない性格。 あとは平凡な女子。 × 片桐樹馬 29歳、食品卸会社勤務。 3課課長兼部長代理 高身長・高学歴・高収入と昔の三高を満たす男。 もちろん、仕事できる。 ただし、俺様。 俺様片桐課長に振り回され、私はどうなっちゃうの……!?

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

求婚されても困ります!~One Night Mistake~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「責任は取る。僕と結婚しよう」 隣にイケメンが引っ越してきたと思ったら、新しく赴任してきた課長だった。 歓迎会で女性陣にお酒を飲まされ、彼は撃沈。 お隣さんの私が送っていくことになったんだけど。 鍵を出してくれないもんだから仕方なく家にあげたらば。 ……唇を奪われた。 さらにその先も彼は迫ろうとしたものの、あえなく寝落ち。 翌朝、大混乱の課長は誤解していると気づいたものの、昨晩、あれだけ迷惑かけられたのでちょーっとからかってやろうと思ったのが間違いだった。 あろうことか課長は、私に求婚してきたのだ! 香坂麻里恵(26) 内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部営業 サバサバした性格で、若干の世話焼き。 女性らしく、が超苦手。 女子社員のグループよりもおじさん社員の方が話があう。 恋愛?しなくていいんじゃない?の、人。 グッズ収集癖ははない、オタク。 × 楠木侑(28) 内装業SUNH(株)福岡支社第一営業部課長 イケメン、エリート。 あからさまにアプローチをかける女性には塩対応。 仕事に厳しくてあまり笑わない。 実は酔うとキス魔? web小説を読み、アニメ化作品をチェックする、ライトオタク。 人の話をまったく聞かない課長に、いつになったら真実を告げられるのか!?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

処理中です...