ドS王子の意外な真相!?

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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2.ドS王子

……その日私は。

見てしまったんです。
あの課長のあり得ない姿を。

 


うちの課長は社内でも有名なドSだ。

ちなみにあだ名は「ドS王子」。

……そのまんま、といえばそのまんま。

茶色がかった天パの髪にちょっと下がった目。
実際よりも若く見えるその顔は、確かに見た目は優しげな王子っぽい。

……あくまで黙っていれば、だ。


「田中!」

「は、はいっ!」
 
私の真ん前の田中くんが、課長の声に弾かれたように立ち上がる。
そのままあたふたとデスクの前に行くと、冷たい声があたりに響いた。

「……なあ、田中。
おまえって天才だな」
 
……きたよ、きたきた。

みんな、次になにが飛び出すのか、無関心なふりをしながら耳を澄ませてる。

「俺には電卓があって、さらにはパソコン使ってるのに計算間違いとかそんな芸当、真似できないな」
 
ふっ。

薄く笑った課長に課内が凍り付いた。

「す、すみません!
すぐにやり直します!」

「……幼稚園からやり直してこい」

「はいぃっ!」
 
書類を引っ掴んで戻ってた田中くんは真っ青になってる。

……いつもいつも、こんな感じ。

かといって嫌われているかといえばそういうこともなく。

……だって指示は的確だし、仕事も早いし。

そして嫌みたっぷりの言葉は、聞かされてる当人からしてみれば堪ったもんじゃないが、外野としては面白い。

そういう訳でいつもみんな、自分に被害が及ばないことを願いつつ、遠目で課長のことを見てる。



その日は何故か。
課長と二人で出張だった。

課長と二人……二人っきりってことですよね?

他に、被害を受ける人、いないんですよね?

……はぁっ。


「遅い!
五分遅刻!」
 
待ち合わせの駅に着いたとき、課長は腕組みして、つま先をダンダンいわせながら立っていた。

……苛々してるの、丸わかり。

「すみません!
この駅滅多に来ないので、迷ってました!」

「言い訳する時間があるならさっさと歩く!
もう時間がない!」

「はいっ、すみません!」
 
駆けるように歩く課長のあとを、はぐれないように必死で追う。
ホームに着いたとき、ちょうど新幹線が入ってくるところだった。


「……おまえ、上司待たせるとかいい度胸してるよな」

「……すみません」
 
シートに座ってほっとしたのも束の間、すぐに課長の冷たい声。

「普通こういう場合、一度きてみるとか、最低でも余裕を持って出てくるとかじゃないのか」

「……はい」

「それともなにか?
最近運動不足の俺を気遣って、走らせようとしてくれたとか?」

「……いえ」

「まあおかげで?
気候もいいし、軽く汗かくほど運動できたがな?」
 
ふっ。

酷薄な笑みに、さっき汗をかいたのが嘘のように体が冷える。

「……すみません」

「罰として今日の昼飯、おまえの奢りな」

「……はい」
 
……あーあ。
とんだ出費だ。
出張先名古屋だから……ひつまぶし、かな。
課長、鰻好きだし。
結構飛ぶな……。
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