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第5章 お仕事、はじめます
6.ふたりでだらだら
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次の日は案の定、遅く起きることになってしまったのもあって、ひたすら部屋でふたり、だらだらした。
「あーや。
あーん」
差し出されるマカロンをパクッと口に入れる。
もぐもぐと食べる私を玲は目を細めてうっとりと見ていた。
「僕はテレビゲームってしたことがないんだが、そんなに面白いのか?」
「そう、です、ね……」
ここのところ、ゲームはほとんどやっていない。
まだ仕事に慣れなくて帰ってきたらぐったりしているのもあるし、もうそれに逃げ込む必要がないから。
「やって、みます、か?」
「いいのか!?」
みるみる玲の顔が輝いていく。
例のごとく、幻の犬尻尾はぶんぶん振られているし。
「ちょっと待ってて、ください、ね……」
自分の部屋からテレビでもできるゲームを取って戻る。
私がセッティングしている間、玲はそわそわしっぱなしでおかしかった。
「えっと……」
マリカーなら玲も楽しめるかな?
ゲームを選び、簡単に操作方法を説明する。
「じゃあ、はじめます、ね」
テレビの中でカウントがはじまり、スタートが切られた、……が。
「玲!?」
「なかなか難しいな」
玲の車はよたよたと蛇行を繰り返している。
さらに。
「ぎゃ、逆走ですよ、それは!」
「道理であーやに追いつけないわけだ」
もう追いつくとかそんな次元じゃない気がする。
次になにをするのかとヒヤヒヤしていたら、とうとうコースアウトして姿を消した。
「難しいな、これは!」
その割に、玲は楽しそうに笑っている。
「その。
嫌になったり、しないんです、か」
「なんでだ?
僕はあーやが好きなことを一緒にできるってだけで、楽しくて仕方ないが」
「玲……」
ぎゅーっと抱きついた私を、玲はきょとんと見ている。
こんな考え方ができるなんて、私はつくづくいい人を好きになったんだな。
「もう一回やろう」
「そうですね。
今度は玲の車、コースアウトしない設定にしてあげます」
「それは助かる」
初めて、ゲームが楽しいと思った。
きっと、玲と一緒にするからなんだろうな。
今日の夕食はグループ本部である、Bridge&Hawkでいただく。
玲が総支配人をしているホテルは全部、系列だから○○と基本、土地名がついているけれど、本部は無印だ。
同じ都内にあっても、あちらの方がずっと格が上。
「緊張しているのか」
「えっ、あっ、……はい」
玲の手が、そっと私の手を握ってくれる。
「あーやの両親と変わらない、普通の親だ」
「……はい」
今日、初めて玲の親に挨拶をする。
最近は比較的ましになったとはいえ、それでもやはりこんな人間は認められないと言われたらどうしようと、不安だった。
案内されたプレミアムスイートではすでに、玲の両親が待っていた。
「は、初めまして。
音尾彩梅、でちゅ」
初っぱなの挨拶で、噛んだ。
みるみる身体中が熱を持っていく。
「あのときのお嬢さんですね。
大きくなられた」
どこか懐かしそうに私を見る玲の父親は、彼と同じでプラチナブロンドの髪に水色の瞳をしていた。
その顔は玲が年を取るとああなるのだと想像させ、この先が楽しみになってくる。
「その、私は全然覚えていないん、です」
できるだけ落ち着いて、はっきり喋るように頑張った。
少しでもダメ出しされる点を潰したい。
「聞いています。
その後のことも」
「……はい」
ひきこもりのゲーヲタダメ人間だったのを知られている気がした。
ますます、玲との結婚を反対されるのではないかと不安になる。
「食事にしましょう。
今日は彩梅さんのために和食にしました」
和やかに父親が笑い、ダイニングへ移動した。
玲と並んで座り、その前に彼の両親が並んで座る。
和服の母親は物静かで、やはり美しい女性だった。
玲は両親のいいところを引き継いで生まれたのかもしれない。
すぐに料理が出てきはじめる。
「お式はどうするの、玲さん」
ころころと笑いながら、お義母さんが訊いてきた。
なんだかいろいろすっ飛ばしている気がしないでもない。
「もちろん、ここで挙げるんだろ?
今後のためにもいい経験になる」
うんうん、とすでに決定事項課のようにお義父さんは頷いている。
それにしても自分の結婚式も仕事のうち、ってなんだか大変そうだ。
「そうですね。
オフシーズンの一月か二月か、それくらいに」
そうか、ホテル関係者がお客が多いオンシーズンに日にちを確保するとかあっちゃいけないもんね。
なんだかまるで、仕事の予定でも決めるかのように話が進んでいく。
「結納は再来週の水曜にしたいと思うのですが、父さんと母さんの都合はどうですか」
もうすでに私の両親の都合は確認済みだと昨日、玲さんが話してくれた。
結婚のことについては基本、玲のご両親は放任主義なのらしい。
跡取りが……とか常に悩んでいた父とは大違いだ。
「そんなことを言いながらもすでに、青山にスケジュールの確認をしているのだろ」
お義父さんの言葉に同意するように、お義母さんがころころと笑った。
「……ええ、まあ」
ばつが悪そうに玲が俯く。
あとで訊いたら、青山というのは鷹橋家の執事らしい。
ちなみに、私の実家に執事はいない。
それだけ鷹橋家の方が格上だということだ。
「わかった。
そのつもりにしておく」
「よろしくお願いします」
あたまを下げる玲にあわせて私もあたまを下げた。
具体的な結納なんてことばがでてきて、いよいよ私は玲と結婚するのだという実感が出ていくる。
しかし、いまだに彼の両親からは結婚を許可する、みたいな言葉は出てきていないのが不安になるけど。
「あーや。
あーん」
差し出されるマカロンをパクッと口に入れる。
もぐもぐと食べる私を玲は目を細めてうっとりと見ていた。
「僕はテレビゲームってしたことがないんだが、そんなに面白いのか?」
「そう、です、ね……」
ここのところ、ゲームはほとんどやっていない。
まだ仕事に慣れなくて帰ってきたらぐったりしているのもあるし、もうそれに逃げ込む必要がないから。
「やって、みます、か?」
「いいのか!?」
みるみる玲の顔が輝いていく。
例のごとく、幻の犬尻尾はぶんぶん振られているし。
「ちょっと待ってて、ください、ね……」
自分の部屋からテレビでもできるゲームを取って戻る。
私がセッティングしている間、玲はそわそわしっぱなしでおかしかった。
「えっと……」
マリカーなら玲も楽しめるかな?
ゲームを選び、簡単に操作方法を説明する。
「じゃあ、はじめます、ね」
テレビの中でカウントがはじまり、スタートが切られた、……が。
「玲!?」
「なかなか難しいな」
玲の車はよたよたと蛇行を繰り返している。
さらに。
「ぎゃ、逆走ですよ、それは!」
「道理であーやに追いつけないわけだ」
もう追いつくとかそんな次元じゃない気がする。
次になにをするのかとヒヤヒヤしていたら、とうとうコースアウトして姿を消した。
「難しいな、これは!」
その割に、玲は楽しそうに笑っている。
「その。
嫌になったり、しないんです、か」
「なんでだ?
僕はあーやが好きなことを一緒にできるってだけで、楽しくて仕方ないが」
「玲……」
ぎゅーっと抱きついた私を、玲はきょとんと見ている。
こんな考え方ができるなんて、私はつくづくいい人を好きになったんだな。
「もう一回やろう」
「そうですね。
今度は玲の車、コースアウトしない設定にしてあげます」
「それは助かる」
初めて、ゲームが楽しいと思った。
きっと、玲と一緒にするからなんだろうな。
今日の夕食はグループ本部である、Bridge&Hawkでいただく。
玲が総支配人をしているホテルは全部、系列だから○○と基本、土地名がついているけれど、本部は無印だ。
同じ都内にあっても、あちらの方がずっと格が上。
「緊張しているのか」
「えっ、あっ、……はい」
玲の手が、そっと私の手を握ってくれる。
「あーやの両親と変わらない、普通の親だ」
「……はい」
今日、初めて玲の親に挨拶をする。
最近は比較的ましになったとはいえ、それでもやはりこんな人間は認められないと言われたらどうしようと、不安だった。
案内されたプレミアムスイートではすでに、玲の両親が待っていた。
「は、初めまして。
音尾彩梅、でちゅ」
初っぱなの挨拶で、噛んだ。
みるみる身体中が熱を持っていく。
「あのときのお嬢さんですね。
大きくなられた」
どこか懐かしそうに私を見る玲の父親は、彼と同じでプラチナブロンドの髪に水色の瞳をしていた。
その顔は玲が年を取るとああなるのだと想像させ、この先が楽しみになってくる。
「その、私は全然覚えていないん、です」
できるだけ落ち着いて、はっきり喋るように頑張った。
少しでもダメ出しされる点を潰したい。
「聞いています。
その後のことも」
「……はい」
ひきこもりのゲーヲタダメ人間だったのを知られている気がした。
ますます、玲との結婚を反対されるのではないかと不安になる。
「食事にしましょう。
今日は彩梅さんのために和食にしました」
和やかに父親が笑い、ダイニングへ移動した。
玲と並んで座り、その前に彼の両親が並んで座る。
和服の母親は物静かで、やはり美しい女性だった。
玲は両親のいいところを引き継いで生まれたのかもしれない。
すぐに料理が出てきはじめる。
「お式はどうするの、玲さん」
ころころと笑いながら、お義母さんが訊いてきた。
なんだかいろいろすっ飛ばしている気がしないでもない。
「もちろん、ここで挙げるんだろ?
今後のためにもいい経験になる」
うんうん、とすでに決定事項課のようにお義父さんは頷いている。
それにしても自分の結婚式も仕事のうち、ってなんだか大変そうだ。
「そうですね。
オフシーズンの一月か二月か、それくらいに」
そうか、ホテル関係者がお客が多いオンシーズンに日にちを確保するとかあっちゃいけないもんね。
なんだかまるで、仕事の予定でも決めるかのように話が進んでいく。
「結納は再来週の水曜にしたいと思うのですが、父さんと母さんの都合はどうですか」
もうすでに私の両親の都合は確認済みだと昨日、玲さんが話してくれた。
結婚のことについては基本、玲のご両親は放任主義なのらしい。
跡取りが……とか常に悩んでいた父とは大違いだ。
「そんなことを言いながらもすでに、青山にスケジュールの確認をしているのだろ」
お義父さんの言葉に同意するように、お義母さんがころころと笑った。
「……ええ、まあ」
ばつが悪そうに玲が俯く。
あとで訊いたら、青山というのは鷹橋家の執事らしい。
ちなみに、私の実家に執事はいない。
それだけ鷹橋家の方が格上だということだ。
「わかった。
そのつもりにしておく」
「よろしくお願いします」
あたまを下げる玲にあわせて私もあたまを下げた。
具体的な結納なんてことばがでてきて、いよいよ私は玲と結婚するのだという実感が出ていくる。
しかし、いまだに彼の両親からは結婚を許可する、みたいな言葉は出てきていないのが不安になるけど。
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