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第一章 〝さいきょう〟の刀
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儀式が終わり、奥へと下がる。
伶龍は威宗に連れられて着替えに行ったようだ。
「……なんなの、アイツ」
私も巫女服から着物に着替えながら、つい愚痴がこぼれる。
「威勢のいい刀だったね」
一緒に着替えている祖母は愉快そうに大笑いしているが、あれは威勢がいいどころではない。
「威宗のときもああだったの?」
目覚めていきなり大勢の人に囲まれ、挨拶しろだなんて言われても困るのはわかる。
しかし、他の刀もああなのだろうか。
「いや?
最初はぼーっとしてたが、周りを見て理解して、きちんと挨拶したよ。
蒼龍も同じだった」
「だったらあれは、なんなのよ……」
いきなり国のお偉いさんたちに喧嘩売ってさ。
ありえない。
「自分の気持ちに素直なんじゃないかい?」
祖母は思い出しているのかおかしそうに笑っているが、こっちは笑い事じゃないのだ。
「まあ、頑張って仲良くしな」
着替え終わった祖母が慰めるように私の肩を叩く。
しかし私の心はどんよりと重くなっただけだった。
儀式のあとは宴の席が設けられる。
黙って料理を口に運びながら、隣に座る男、伶龍に視線を向ける。
黒スーツを着るとますます彼はヤクザに見えた。
「あ?」
私の視線に気づいたのか、彼が睨みつけてくる。
「……なんでもない」
そろりとまた、自分の前のお膳へ視線を戻す。
ちょっと見ていたくらいであんなに睨まなくたっていいと思う。
これからパートナーとしてやっていくわけだし。
「ああ、くそっ。
苛々する!」
伶龍が悪態をつき、会場内が一瞬静まりかえった。
けれど彼はかまうことなくネクタイを緩め、シャツのボタンを外した。
「なんでこんな格好しなきゃいけねーんだよ」
さらに立て膝にして足を崩す。
いくら無礼講の席でも、これはない。
「ちょっ、伶龍」
小声で彼の脇腹をつつき、もう少し行儀よくするように注意する。
というかそもそも、威宗からさっきいろいろ聞かされているはずなのだ。
なのにこれって。
「あ?
俺はこういう、かたっくるしいのが苦手なんだよ」
彼は証明するかのようにガシガシ頭をかいているが、そういう問題ではない。
「それにいつまで、これに付き合わなきゃいけないわけ?
もー、我慢の限界」
「うっ」
伶龍の気持ちはわかるだけに、なにも言えなかった。
宴が始まってから誰も彼もが私たちを見てひそひそ話していた。
――史上最低の刀。
――ハズレ。
――この先が思い遣られる。
私だってそれには同意見だが、人に言われるのは腹が立つ。
それに伶龍を選んだのは私だ。
まるで私が無能と言われているようで落ち込みもした。
「おい、おまえら」
伶龍が宴席中を睨み渡す。
「俺は最強の刀だ。
あとで俺を貶したこと、後悔させてやるからな!」
右頬を歪めて伶龍が不敵に笑い、誰もが息を呑む。
けれど私はこのあと、さいきょうは〝最強〟ではなく〝最凶〟だったと知る。
伶龍は威宗に連れられて着替えに行ったようだ。
「……なんなの、アイツ」
私も巫女服から着物に着替えながら、つい愚痴がこぼれる。
「威勢のいい刀だったね」
一緒に着替えている祖母は愉快そうに大笑いしているが、あれは威勢がいいどころではない。
「威宗のときもああだったの?」
目覚めていきなり大勢の人に囲まれ、挨拶しろだなんて言われても困るのはわかる。
しかし、他の刀もああなのだろうか。
「いや?
最初はぼーっとしてたが、周りを見て理解して、きちんと挨拶したよ。
蒼龍も同じだった」
「だったらあれは、なんなのよ……」
いきなり国のお偉いさんたちに喧嘩売ってさ。
ありえない。
「自分の気持ちに素直なんじゃないかい?」
祖母は思い出しているのかおかしそうに笑っているが、こっちは笑い事じゃないのだ。
「まあ、頑張って仲良くしな」
着替え終わった祖母が慰めるように私の肩を叩く。
しかし私の心はどんよりと重くなっただけだった。
儀式のあとは宴の席が設けられる。
黙って料理を口に運びながら、隣に座る男、伶龍に視線を向ける。
黒スーツを着るとますます彼はヤクザに見えた。
「あ?」
私の視線に気づいたのか、彼が睨みつけてくる。
「……なんでもない」
そろりとまた、自分の前のお膳へ視線を戻す。
ちょっと見ていたくらいであんなに睨まなくたっていいと思う。
これからパートナーとしてやっていくわけだし。
「ああ、くそっ。
苛々する!」
伶龍が悪態をつき、会場内が一瞬静まりかえった。
けれど彼はかまうことなくネクタイを緩め、シャツのボタンを外した。
「なんでこんな格好しなきゃいけねーんだよ」
さらに立て膝にして足を崩す。
いくら無礼講の席でも、これはない。
「ちょっ、伶龍」
小声で彼の脇腹をつつき、もう少し行儀よくするように注意する。
というかそもそも、威宗からさっきいろいろ聞かされているはずなのだ。
なのにこれって。
「あ?
俺はこういう、かたっくるしいのが苦手なんだよ」
彼は証明するかのようにガシガシ頭をかいているが、そういう問題ではない。
「それにいつまで、これに付き合わなきゃいけないわけ?
もー、我慢の限界」
「うっ」
伶龍の気持ちはわかるだけに、なにも言えなかった。
宴が始まってから誰も彼もが私たちを見てひそひそ話していた。
――史上最低の刀。
――ハズレ。
――この先が思い遣られる。
私だってそれには同意見だが、人に言われるのは腹が立つ。
それに伶龍を選んだのは私だ。
まるで私が無能と言われているようで落ち込みもした。
「おい、おまえら」
伶龍が宴席中を睨み渡す。
「俺は最強の刀だ。
あとで俺を貶したこと、後悔させてやるからな!」
右頬を歪めて伶龍が不敵に笑い、誰もが息を呑む。
けれど私はこのあと、さいきょうは〝最強〟ではなく〝最凶〟だったと知る。
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