神祇地祇~穢れ、祓います!~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
10 / 36
第二章 勝利だけど大失敗

2-3

しおりを挟む
お告げが下ったので大急ぎで穢れを祓う準備が整えられる。
出現想定日前日から該当地域の人間はすべて避難。
私たちはその地区にある中学校校庭に設置されて仮設司令所に詰める。

「緊張する……」

巫女服姿で弓を抱き、パイプ椅子に座って私はガッチガチになっていた。

「そんなに緊張する必要ないだろ。
私も控えているんだし」

「あいたっ!」

背中を思いっきり叩いた祖母を恨みがましく見上げる。

……控えているって、よっぽどヤバい状態にならない限り出てこないって言ったじゃない。

小さくため息をつき、威宗が淹れてくれたお茶を飲んで少しでも落ち着かないか試みる。
そんな私とは反対に伶龍は。

「早く来い、早く来い、早く来い……!」

私の隣で同じくパイプ椅子に座り、待ちきれないかのように激しく足踏みをしていた。
なにをそんなに興奮しているのか私には理解できない。
一歩間違えば――死ぬ、のに。

母は私が小学校に上がる前、穢れと相討ちになって死んだ。
私はそれを、目の前で見ていた。
だって母は、私を庇って死んだのだ。

あの光景は今でも今日のように思い出せる。

私の無事を確認して微笑んだ直後、真っ赤な血を吐き出す母。
母の胸から突き出た、穢れの赤黒い足。
この世のものとは思えない悲痛な蒼龍の叫び声のあと、私の泣き声をかき消す土砂降りの赤い雨。

忘れたくても忘れさせてくれない。
今回は小さな穢れだから大丈夫だと祖母は言っていたが、それでも恐怖は拭えなかった。

予想の刻限が近づいてきて、祖母と威宗、伶龍と最終確認をする。

「えっと。
矢を打って核を覆う蟲を蹴散らす」

「それから?」

「核が露出したら封じの御符を矢で刺す」

「うん」

祖母があっていると頷く。
伶龍はずっとそわそわしっぱなしで、話が耳に入っているのか怪しかった。

「そのあいだ、伶龍は?」

予感的中だったらしく、祖母の問いに彼からの返事はない。

「伶龍!」

「うっ」

祖母に強い声を出され、伶龍はようやくそろりと祖母へと視線を向けた。

「初陣で気が逸るのはわかるが、落ち着きな」

「お、おう」

仕方ないといった感じではあるが、伶龍は祖母の言うことを聞いている。
よっぽど祖母が、怖いらしい。

「翠が核に御符を刺すまでは、伶龍は翠の援護だよ。
わかったかい?」

「お、おう」

祖母に軽く睨まれ、伶龍が怯え気味に返事をする。
けれど本当にわかっているのかは疑わしい。

「最後は……」

「俺が核を叩き切る!」

自信満々に伶龍が宣言する。

「そうさ、簡単だろ?」

祖母の言い草はまるで初めてのお使いの説明でもしたかのようだが、相手は穢れ。
そんなに簡単にいくものでもない。

「ううっ。
上手くできるかな……」

練習はもちろん、日々している。
それでも練習と本番は違うわけで。
しかも。

「なあ、まだ?
まだなのか?」

今にも詰め所を飛び出ていきそうな伶龍をちらりと見る。

「ねえ。
今の段取り、ちゃんと理解した?」

「あ?
俺が核に刀ぶっ刺してトドメ刺せばいいだけだろ」

不機嫌そうに彼が私を睨む。
そうなんだけれど!
そうなんだけれど、そのためには手順を踏まなければ小さな穢れでも大惨事なんだってば!

「大丈夫ですよ、私からも何度も説明してありますし」

苦笑いで威宗がフォローしてくれるが、本当に大丈夫なんだろうか……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...