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第三章 A級
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――伶龍と喧嘩して一週間。
「穢れが、来るよ」
朝のお勤め、私たちを振り向いた祖母が重々しく告げる。
「えっ、早くない!?」
まだ伶龍と仲直りできていない。
なのにこんなに早く穢れが来るなんて。
「新年度はいつもこんなもんだろ」
「うっ」
ばっさりと祖母に切り捨てられ、なにも言えなくなった。
そうだった、春は新しい学校や職場への不満や不安、さらに使えない新入社員への怒りなどが渦巻いて、頻発するんだった。
「今回はばあちゃんに譲るとか……」
ちらっ、ちらっと隣に座る伶龍をうかがう。
私を避けている癖に彼は、朝のお勤めだけは欠かさず出てきた。
ひとことも私とは口をきいてくれないけれど。
それに穢れが来るとなるといつも大喜びなのに、今日は黙っていて不気味だ。
「なに言ってんだい。
今回は翠が祓ってきた中で一番大きな穢れだからね。
しっかり経験積んできな」
祖母は事もなげに言うが、この状況を把握しているんだろうか。
今まで小さな穢れでも上手く祓えたためしがない。
しかも今は伶龍と喧嘩中だ。
こんな状態で任務が上手くいくとは思えない。
本気で祖母は言っているんだろうか。
「大きいといってもA級だ。
今回は私らも控えるし、大丈夫だ」
「A級って特別警報レベルじゃない!」
穢れのクラスを聞いて思わず祖母に食ってかかっていた。
穢れはC級から始まり、B、Aと上がっていく。
A級は特別警報レベルで、多数の市町村に避難命令が出る。
いうなれば超大型台風みたいなものだ。
今まで私が祓ってきたのは全部、Cクラスだった。
なのにBをすっ飛ばしてAだなんて。
「〝ただの〟Aだ」
じっと祖母が私を見据える。
「……はい」
おかげでそれ以上、なにも言えなくなった。
穢れにはA級以上が存在する。
AA級、AAA級だ。
特にAA級以上を〝大穢れ〟と称する。
母はAA級相手に命を落としたが、あとであれはAAA級だったんじゃないかという話が出た。
「A級なんてちーっと大きいだけのただの穢れだよ。
臆する必要なんてない」
「……はい」
祖母は過去にAA級と数度、戦っている。
そんな実戦経験者に私が意見なんてできるはずがない。
「今から準備にはいんな。
話は以上だ」
「わかった」
短く返事をして頷き、伶龍はさっさと拝殿を出ていく。
その背中を私は黙って見送るしかできなかった。
「穢れが、来るよ」
朝のお勤め、私たちを振り向いた祖母が重々しく告げる。
「えっ、早くない!?」
まだ伶龍と仲直りできていない。
なのにこんなに早く穢れが来るなんて。
「新年度はいつもこんなもんだろ」
「うっ」
ばっさりと祖母に切り捨てられ、なにも言えなくなった。
そうだった、春は新しい学校や職場への不満や不安、さらに使えない新入社員への怒りなどが渦巻いて、頻発するんだった。
「今回はばあちゃんに譲るとか……」
ちらっ、ちらっと隣に座る伶龍をうかがう。
私を避けている癖に彼は、朝のお勤めだけは欠かさず出てきた。
ひとことも私とは口をきいてくれないけれど。
それに穢れが来るとなるといつも大喜びなのに、今日は黙っていて不気味だ。
「なに言ってんだい。
今回は翠が祓ってきた中で一番大きな穢れだからね。
しっかり経験積んできな」
祖母は事もなげに言うが、この状況を把握しているんだろうか。
今まで小さな穢れでも上手く祓えたためしがない。
しかも今は伶龍と喧嘩中だ。
こんな状態で任務が上手くいくとは思えない。
本気で祖母は言っているんだろうか。
「大きいといってもA級だ。
今回は私らも控えるし、大丈夫だ」
「A級って特別警報レベルじゃない!」
穢れのクラスを聞いて思わず祖母に食ってかかっていた。
穢れはC級から始まり、B、Aと上がっていく。
A級は特別警報レベルで、多数の市町村に避難命令が出る。
いうなれば超大型台風みたいなものだ。
今まで私が祓ってきたのは全部、Cクラスだった。
なのにBをすっ飛ばしてAだなんて。
「〝ただの〟Aだ」
じっと祖母が私を見据える。
「……はい」
おかげでそれ以上、なにも言えなくなった。
穢れにはA級以上が存在する。
AA級、AAA級だ。
特にAA級以上を〝大穢れ〟と称する。
母はAA級相手に命を落としたが、あとであれはAAA級だったんじゃないかという話が出た。
「A級なんてちーっと大きいだけのただの穢れだよ。
臆する必要なんてない」
「……はい」
祖母は過去にAA級と数度、戦っている。
そんな実戦経験者に私が意見なんてできるはずがない。
「今から準備にはいんな。
話は以上だ」
「わかった」
短く返事をして頷き、伶龍はさっさと拝殿を出ていく。
その背中を私は黙って見送るしかできなかった。
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